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カリグラファーの美文字異世界生活   〜コレクションと文字魔法で日常生活無双?〜  作者: 磯風
第二章 慣れてくるといろいろあるものです
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第67話 新しい儲け話?

 衛兵隊詰め所で銃の始末をしてから、九日ほど経った。

 水源への毒物混入の件はどうなったのか気にはなったが、誰の口にも上らないだろう。

 箝口令は、堅く守られているようだ。


 ビィクティアムさん達は、わざわざ俺に事の顛末など教えてくれはしないだろう。

 一般人だしね。

 俺は。

 まぁ、誰も被害が出ていないならいいんだよ。



「最近、身体の調子が良いんだよ」

「へぇ? 咳が出るって言っていたのが良くなったのかい?」

「ああ、全くなくなったんだ」


「近頃肌が綺麗になってきたみたいなの」

「私もよ。手荒れで困っていたのに、ほら」



 うちに来るお客さん達がそんな会話をしている。

 これは浄化水の効果が出始めたかな?

『体内毒素消去』とか『体表面洗浄浄化』とか付けちゃったからね。


 飲めば身体の中のデトックスになるし、身体に掛けるだけでばい菌も取り除ける。

 勿論、身体だけでなく、水洗いだけで道具や食品の表面に付いている菌などもなくなるのだ。


 二段構えで付与しているから、町中の水道で毒物を入れたとしても余程大量でない限り、水に触れれば浄化しちゃうくらい強力になっている。

 そしてこの水、汲み置きして二時間くらい効果が持続する。

 二時間で効果がなくなるのは、魔法付与している文字と切り離されるからかもしれない。

 それでもここまでもつのは、なかなか良い成績だと思う。


 あとは、あの付与した文字がどれくらい保つか……と言うことだ。

 この付与魔法は常に働いているから、文字に最初に込めた魔力を消費し続けているはず。


 魔力のストックが無くなれば、魔法自体が発動しなくなるのでまた魔力を供給するか書き直さなくてはならない。

 ライリクスさんから聞いた『魔力の状態』ってのが俺にも見えれば、文字の魔力が弱くなったのを確認できるかと思ったんだが……


「魔眼じゃないもんなぁ、俺は」

 うちの井戸に同じ文字を付与したのも、水源に付与した日と一緒だ。

 この文字の効力が切れれば、水源と中央噴水の文字も魔力を失っていると考えて良いだろう。

 俺の付与魔法が、どれくらいもつものなのかの目安にも使える。




 そんな事を考えながら洗い物をしている時、母さんに呼ばれた。

「タクト、ちょっと」

「ん? また混んできた?」

「違うよ、おまえに話を聞きたいって人が、来ているんだけど……」


 誰だ?

 俺は食堂内に目を向けると、ニコニコした小太りなおじさんが立っていた。

 ……全然知らない人だ。


「ああ! 君がタクトくんですね! 私はコデルロと申します」

 コデルロ……あ!

 銃を大量に持ち込んだ商会の……会長さん?


「タセリームくんに君を紹介されてね。ちょっと話をしても構わないかね?」

「タセリームさんのお知り合いの方ですか……じゃあ、工房の方で」

 父さんはさっき、鍛冶師組合に出かけて留守だ。

 工房側なら消音の道具があるから、食堂側に会話は漏れないだろう。



 工房の受付カウンターには、ひとつだけだが椅子があるのでかけてもらった。

 俺は裏から工房へと入り、カウンター越しに話をする。


「何か、御用ですか?」

「君が坑道整備の燈火を作ったと聞いてね」

 ああー、簡易懐中電灯擬きのミニチュア燈火ですね。

「そうですけど……もう作る気はないですよ? 俺は鍛冶師じゃないし」


「……タセリームくんからもそう言われるだろうと聞いてはいたけど……本当に作らないのかい?」

「はい。結構面倒だし」

 嘘ですー面倒ではないけど、魔法師としてああいう作業でお金貰うのは、なんか嫌なんですー。


「ううむ……そうだろうね。あれだけ精巧な物を一から全部、ひとりで作るのは。では、その作り方を教えてもらってだね、君の意匠として我が商会で作成・販売する権利をいただけないかね?」

「作り方をお教えするのも、販売許可も構いませんが……魔法付与までは、教えられませんよ?」

 てか、俺のやり方は多分誰にもできないし。


「ああ、それはそうでしょう。君は魔法師なのだから、その技術までさらけ出せとは言いませんよ」

 タセリームさんといいコデルロさんといい、この世界の人は権利関係にはちゃんとしているのかな。

 とても好感が持てる。


「それなら、構いません。でも、販売したものは全てコデルロ商会の責任で点検や修理、苦情があった場合の対応をしてくださいね」

「もちろんですとも! ははは、君は本当にタセリームくんの言ったとおりの子ですねぇ」

「……可愛げないガキ、とでも言ってましたか?」

「しっかりしていて先見の明がある、と言っていましたよ。確かにその通りだ。私も君となら安心して取引できると確信しました」

 タヌキ親父め……試していやがったな。


「では素材をお伝えしますので揃えてください。揃ったら作り方をお教えしますが、五人までです。それ以上の方に作らせたいなら、その五人が完璧に覚えて他の人に教えてください」

「わかりました。すぐに用意しましょう。素材は……五日もあれば何とかできるでしょう」

「はい。習いたい方々がここに来てください。他での講習はいたしません」


「いいでしょう。一日でできるものですかね?」

「そうですね……その方々の技能にも依りますが、『金属加工』【加工魔法】『石工技能』『鍛冶技能』が全てあれば割とすぐに覚えられます」

 あれ……?

 コデルロさん?

 何、固まっているんですか?


「き、君は……それを全部習得しているのか……これは思っていたより……解りました、教えてもらうのは十日後くらいでいいですかね?」

「ええ、構いません。」

 そうか、技能を確認してから人を集めるのは、大変だもんな。

 遠くの人もいるかも知れないし。


「俺の方で予め、必要な魔法を付与した部品を用意します。その部品は消耗品ですので、今後販売するとなると、都度、これを仕入れていただくようになります」

「うむ、その辺は大丈夫ですよ。ちゃんと魔法師組合に定期取引として依頼を出させてもらいますから」


 ほほう、定期取引!

 これは安定収入の気配ですぞ!

 ふははははは!

 でも『電池』の販売だもんな。

 そんなに大きくはないか。


 そして俺は羊皮紙に必要素材を全て書きだして、コデルロさんに渡した。

 なんだか難しい顔をしていたけど……あ!

 竹が手に入りにくいのかな?


「コデルロさん、もし竹が手に入りにくいのでしたら木綿糸とタール……ええと、木の乾溜液かんりゅうえきと煤でも大丈夫ですよ? 品質は少し落ちますけど……」

「いいえっ! 大丈夫ですっ! コデルロ商会の名にかけて、必ず全て揃えますともっ!」


 商人としての面子って奴ですな。

 でも、竹が手に入るなら、少し分けてもらえないかなぁ。

 竹で籠とか、ざるとか作ったら使い勝手がよさそうなんだよなぁ。

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