第7話 この部屋の中も調べてみよう
それにしても……文字で全てが解決するなんて、思ってみなかった。
文字が、こんなに無敵だったとは。
とんでもない万能感。
……使い方さえ間違えなければ、だ。
もしかしたら飛んだりできるのでは? と思ったが、見たこともやったこともないことはできないようだ。
“理屈を知っている事”……が前提なのかも。
確かに、人が飛んでる所なんて見た事はないし、そうできる理屈もわかんないよね。
“経験則に基づく”なのかもしれない。
でも、今はそんな事、できなくてもいい。
「……俺、ここで生きていけるかもしれない……」
食い物も水もある。
出せる。
医療品も、雑貨も、ありとあらゆる生活用品も。
そして、ゴミも始末できる。
火もおこせて、灯りも確保できる。
……問題は住む場所と、この世界の人間達との共存ができるか、だ。
「……この小屋があるって事は、これが作れる人間がいるって事だ」
テーブルも椅子も身長・百七十四センチの俺が座って、ちょうどいいサイズだ。
この世界の人間の大きさも、こんなものなんだろう。
この棚には、何が入っているんだろう?
上の開きの扉から開けていく。
いくつかの瓶と、食器……だろうか。
瓶の硝子は不透明で、日本のものよりは不純物が多そうだ。
気泡も入っている。
コルクみたいなもので栓がしてあるものが多い。
いくつかは、なめし革のようなものを紐でまいて蓋にしているものもある。
ラベルは付いていないので、何かは解らない。
「流石に開けるのは怖いな……」
中に虫とか湧いていたら、泣いちゃうかもしれない……
それに、棚の上も埃やカビまみれだし、触りたくないよな。
「そうだ、ちょっと試してみよう」
紙に『室内浄化消毒』と書き、床に落とした。
「おおおー! きれいになったぞ!」
埃や汚れがさっぱりとなくなり、戸棚の中まで綺麗になった。
でも、瓶には触らなかったけどね。
だって、虫がいたら嫌だし!
下の方の扉を開けると、殆どの棚は空っぽだったが何か落ちている。
「これ……羊皮紙かな? 文字らしきものがびっしり書いてある……!」
カリグラフィーは当時貴重だった羊皮紙に、なるべく多くの情報を書き込むために生まれた。
文字が小さくても、密集させてもちゃんと読めるように美しく書く技術。
それが、カリグラフィーの真骨頂だ。
羊皮紙を見て、テンションが上がらないわけがない!
「全然、見たことのない文字だな……」
俺の知っている地球上にある、どの文字とも似ていない。
……強いて言えば、フェニキア文字にルーン文字を合わせたみたいな字だ。
読みたいなぁ……なんて書いてあるんだろう。
「……読めるんじゃないか?」
ひとつ、思いついた。
『この紙を持つ者は全ての言語の翻訳ができる』
と書いて、その紙を握り締めながら羊皮紙を見てみる。
「読める! 単語が、日本語に訳されてる!」