54.5 ビィクティアムとライリクス
「どうだ? タクトは」
「本当に二十一歳ですか? 考え方は、どう見ても子供と思えないですよ」
「身分証、『視た』のだろう?」
「はい。不審な点は、何ひとつありませんでしたよ」
「そうか……おまえに視えないとなると、本当に何もないのか……」
「初めから、ひとつも嘘はついていませんでした。珍しいです」
「ほう?」
「大概の子供は、見栄を張るものです。素直すぎて気味が悪いくらいですよ」
「おまえに気味悪がられるとは……大したものだな」
「身分証に魔法が付与されているのかとも思ったのですが、全くそんな痕跡はありませんでした」
「能力的に、問題になりそうなものもなかったのだな?」
「ありませんね。鍛冶師としても石工としても、優秀な職人にになれるでしょうし、【付与魔法】も安定しているようです」
「魔法付与されている物を、持っていたのか?」
「あの身分証入れ、彼の自作だということでしたよね?」
「それは彼自身から聞いた……そうか、あれに魔法が……どんなものか解るか?」
「詳しくは解りませんが、揺らぎからすると補助系でしょう。耐性とか体力増強とかと似ている魔力でした」
「……! 耐性付与ができると?」
「いえ、似ているだけです。おそらく耐性ではないでしょう」
「そこまでのものではない……ということか?」
「青魔法の補助的なものと判断します。彼は赤魔法適性ですから、補うためでしょう」
「そうか、それで水魔法を試してみた訳か」
「試していたのですか?」
「ああ、失敗していたようだが」
「でも発動はできる訳か……さすが付与魔法師ですね。魔力量の多さもあの年にしては破格でしたし」
「俺が見せてもらった一年前は二千三百だった」
「二千四百五十ありましたよ。一年でこれだけ伸ばせるとは、随分努力家ですね」
「末恐ろしいが、楽しみでもあるな」
「それにしても……臨床実験のことまで口にした時は、驚きました」
「あいつも、やつらの仲閒かと思ったくらいにな」
「ええ……でもそれはないですね。彼は自分の知識と思考で、あの答えにたどり着いたのが明白でしたから」
「……便利だな、おまえの《《眼》》は」
「そうですか? けっこう鬱陶しいですよ。嘘なんて……見抜けない方が良いこともありますからね」
「ライリクス、タクトの跡をつけてくれ。真っ直ぐには……帰らないだろうから」
「はい、そのつもりでした。もう少し話してみたいですしね、彼とは」
「隠し事が……ありそうなんだが、なんだか判るか?」
「そんなとこまで視えませんよ。それに隠し事なんて誰にでもあるものですから、それで判断はできません」
「喋ると思うか?」
「さあ……難しいでしょうね」
「タクトくんは、話せることしか話さないでしょう……言い訳しない子は扱いづらいです」




