第52話 こんどこそ多分、尋問
ビィクティアムさんの目の前に座って、質問に答えていく。
企業の圧迫面接よりはマシだろうが、緊張はする。
「タクト、俺が言いたいことは解ってるよな?」
「はい、魔法……のことですよね?」
「そうだ。おまえ、魔法を使おうとしたよな?」
ん?
『使おうとした』?
『使ったな』じゃなくて?
「で、失敗しただろ?」
「え……なんで……?」
「水でも出そうとしたのか? おまえの足下が水浸しだった。飛ばすのに失敗して自分の足下に落ちたんだろ?」
あー、そういう解釈をして下さったのですか!
確かに空気魔法は見えないし、圧縮して使うなんて考えないよねー。
水浸しだったのは水道の石に魔法を付与して、上がってきた時のだね。
「……あの男が使おうとしてた武器が、火を使って発動すると知っていたので……」
うん、俺は嘘は言っていない。
ビィクティアムさんの勘違いを、否定していないだけだ。
「それで水……か。あの武器を知っているのか?」
「使った事はないですし、持った事もないけど……見た事だけはあります。実物ではなく、写し絵でしたけど」
写真とかテレビとか。
モデルガンも触った事はない。
「おまえのいた所にあった物か?」
「俺の国では、作る事も輸入も使用も所持も、禁止されていました。でも密輸されたりしていて、年に数人は……あれで殺されていると聞いていました」
「詳しい仕組みは?」
「知りません。だいたいの形と、火薬に火花を散らして爆発させた勢いで弾を飛ばす武器……という事くらいです」
「ここに、おまえが知っているものの絵を描けるか?」
差し出されたペンと羊皮紙に簡単に絵を描く。
……俺には絵心はないので、本当にだいたいの形だけだ。
「ふむ……奴が持っていた物と、ほぼ同じ形のようだ。構造は解らないのか?」
「解りません。触ったことがないので……聞きかじった知識も、今、話したことだけです」
暴発した銃は、原形をとどめていない。
銃口は勿論、引き金辺りも吹っ飛んでるだろう。
奴の指と一緒に。
それに、俺が描いたのは所謂ピストルの形だが、奴が持っていたのはリボルバーだ。
暴発した時に、俺の近くにシリンダーが飛んできたので拾って隠した。
鞄に入れて、コレクションの中に。
あのパーツがなければ、再現はほぼできないだろう。
「あいつら……うちに来たんですけど、物を見る前に追い出しちゃったんで、あれかどうか解らないですが、他の人の所にも直して欲しいと持って行っていたみたいです」
「そうか……元々故障していた可能性もあるのか。では別の誰かが直したのか……」
違う。
多分、壊れてはいなかった。
ダリヤという冒険者は『改造』と言っていたはずだ。
おそらく連射速度を上げるとか、威力を強くできないかとか、そういう改造を希望していたのだろう。
「うちで聞いた職人さんは、知らないものは直せないって突っぱねたみたいです。他の人も多分……」
「自分たちで直してみたものの、やはりちゃんと直ってなくて爆発した……ということか。つくづく間抜けな奴らだな」
そういう事にしておいてもらおう。
なんにしても、見過ごさなくてよかった……
これからは水源付近ももっと警戒・警備が厳しくなるだろう。
でも……なんで、この町の住人を殺す必要があったんだ?




