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148.5 ガイハックとビィクティアム+ライリクス

「……そういう事を言われてもなぁ…」

「申し訳ありません…日が経てば別のことを言いだして忘れるかと思ったのですが…望月ぼうつきの中頃に…お忍びでと」

「あの陛下がお忍びなんかになると思うか?まったく、あの方は昔っから…!」


「確かに…」

「おまえもおまえだ!なんでもっと強硬に反対せんのだ!」

「俺なんかが伯父上に敵うわけないでしょう?」

「む…ま、まぁあの方に勝てるものなど先王陛下くらいしかおらんが…はぁ…よりによってタクトに会いに来るなど…」


「かなり興味があるみたいです。あなたの…息子だということも含めて」

「どうせ、儂に文句が言いたいだけだろうて。タクトのことは半分は口実だろう」

「タクトに関心をお持ちなのは事実ですよ。彼の作った蓄音器を伯母上以上に気に入っておいででしたから」



「実は…タクトの魔法のことでお伺いしたいのです」

「俺が答えられることか?」

「答え…があるかどうかさえ、解らないのですが」


「タクトは黄魔法を最近獲得しています。でも、もしかして以前から使えたのではないですか?」

「…適性がないから安定していなかったが、初めて会った時には既に使えていたな」

「そうでしたか…他に適性がなくても使えている魔法にお心当たりがありませんか?」

「何故そんなことを聞く?」


「……これです」

「身分証入れ……加護光が見えるな…タクトの作ったものか」

「はい。総て彼が仕上げたものだと言うことでしたが…先日まで加護など付いていなかったのです…突然、まるで俺を護るように…」

「ならば、それは神がおまえに対して与えたもので、たまたまその身分証入れが条件を満たしていたに過ぎん」


「これの加護は『聖魔法』でした」

「なんだと?…セラフィエムスなら賢神一位の加護ではないのか?」

「はい、俺も攻撃された所がすぐに回復するという回復魔法の加護かと思ったのですが、ナルセーエラ神司祭に間違いなく聖魔法だと言われました。俺の持つ聖魔法では無効化や防御は出来ません」


「…聖魔法の加護は…余程適性の高いものにしか現れん…若しくは、かなり高い段位の聖魔法が使えるものが行う儀式で授かるものだ…有り得ん。セインドルクスはなんと言っている?」

「やはり、通常では有り得ないと。しかし、タクトが絡むとどうも我々の常識で量ることが出来ないことが多くて、可能性があるとすればタクトに聖魔法が目覚めたのではないか…と」


「最近、やたらおまえ達がタクトに何かさせているようだが…?」

「俺が頼んだのは、さっきお話しした通りですよ。……ドミナティアは…他にもあるようですが」

「……」

「睨まないでくださいよ」


「来い」

「え?」

「ライリクスの所に案内しろ!」

「い、いや、あいつにはまだいろいろ伝えていなくて…」

「なら、一緒に言えば良かろう!ほれっ早くしろっ!」




2 ガイハックとビィクティアムとライリクス



「……どうしてそういうことになったんですか……」

「こいつがタクトの身分証入れを陛下に見せたりするからだ」

「そんなこと言ったって俺が断れるわけないでしょう!何で全部俺のせいみたいになっているんだっ!」

「で?ドミナティアはタクトに何をやらせているんだ?」


「……」

「そんな目で見るなっ俺は何も言っていないからな」

「こいつが言わんだろうからここまで来たんだ。ライリクス、話せ。どうせセインドルクスの奴だろう?」


「…神典の原典を現代語に翻訳してもらっています…」

「はぁぁっ?原典って…見つけたのか?」

「はい。タクトくんが教会の地下に有ったのを発見してくれまして」

「二つの家門の使命に関わっちまってるって事か……まったく、おまえら自分のことは自分でしやがれ!」


「先生だってご自分の家門を放り出して駆け落ちしてきてるじゃないですか」

「うっ…わっ儂は……あの時は聖魔法などなかったのだから…!…ええいっ昔のことはどうでもいいっ!だいたい何でタクトに任せるんだ?セインドルクスだって少しは読めるだろうが!」

「はい『少し』だけ。でもタクトくんは『すべて完璧に』読めるんです。彼以外正確な原典復活を成し遂げられる者はいないでしょう」


「…訳したものを見たのか?」

「ええ。素晴らしく美しい文字と文章でした。あれこそ『神典』と呼ぶに相応しい」

「それは俺も同意です。タクトでなければ、神典は書けない。だからこそ、新しい聖属性魔法が目覚めていてもおかしくないのです」


「その事を陛下はご存知なのか?」

「今回の一件で……知ってしまわれました。長官が話した『映像』で兄が…言っていたので」

「そうか…あいつを信じた儂が馬鹿だったということか……もういい」


「先生、兄は決してあなたを裏切るような真似はしません!それだけは…」

「何が裏切りかを決めるのはおまえじゃあない。それと…その『先生』ってのももう止めてくれ」

「あなたが我々の教師であったことは事実です」

「『そいつ』はもういない。ここにいる儂のことではない」

「過去の全てを否定なさるのですか……?」


「名を変えるということはそういうことだ。タクトに関わるなとか近づくな、なんて事は言わねぇよ。だが、あいつの望まないことをさせようってんなら容赦はしない。……陛下であってもな」




3 ビィクティアムとライリクス



「あれは…本気で怒っていたな…」

「ええ、怒れば怒るほど冷静になって声が低くなるのは昔から変わっていません。…はぁ…何も起きないといいのですがねぇ…お忍びの時」

「期待するな。絶対に何か起きるに決まっていると思っておけ」

「陛下は確実にタクトくんを気に入るでしょうね」


「ああ、そうだな。だがタクトなら大丈夫な気がするんだよな…あいつがここを離れたいなんて言うはずないだろうし」

「そうですね。例え皇王陛下相手でも嫌なことは嫌って言うでしょうね…いつもみたいに」


「おまえとマリティエラにも会うって息巻いていらしたから、覚悟しておけよ?」

「ははは……そっちは…諦めました。でも兄は巻き込んでやります」

「では俺は高みの見物とさせてもらおう」

「何言ってるんです?あなただって兄上なんですから陛下のお相手をしていただきますよ」


「…」

「なんて顔なさっているんですか」

「いや…おまえに兄と言われるのは…なんかやっぱりこう…不思議だ」

「そうですか?僕はあなたに義弟と言っていただけた時は結構感動いたしましたよ?」

「……まぁ…俺だって嫌というわけでは…ないのだが」



『うーん、副長官の言った通りの反応ですねぇ…面白い…』

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