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122.5 その日の午後の人々

▶新人騎士達とライリクスとファイラス


「やっとあの女に、思い知らせてやれると思ったのに……」

「なんで……なんで金証の方がこんな所にいるんだ?」

「どうしよう、家門に何かあったら……」

「大丈夫ですよ、我々は名乗っていませんし、あの女だってあなたの名前も覚えていないでしょう?」


「でも金証の家名が、青くなっていたじゃないか! そんな方なら、すぐに調べられちゃうんじゃないのか?」

「……だ、大丈夫……ですよっ、たぶん……」

「とにかく、早く宿舎に戻って、領地に帰れるか聞いて……しまった、青……どこの家門かちゃんと見てなかった……っ!」

「ここで訓練を放り出したら、騎士位が剥奪されてしまいますよっ?」

「調べられて不敬罪にされるより、よっぽどいいだろっ!」


「君達、ちょっと」

「ひっ! ……じ、自分たちは何も……!」

「うん、よく剣を抜かなかったね。それは褒めてあげるよ」

「ふ、副長官殿、あいつ……じゃない、あの方いったい……」

「他言無用」

「え?」


「絶対に今日のことは話しちゃだめだよ? たとえ皇王陛下であってもね」

「神であっても……です」

「は……はい」

「君は?」

「でっ、でも、なんでこの町に……あんな……」


「この町はセラフィエムスとリヴェラリムとドミナティアが守る町だ。……その意味が判るね?」

「……! はっはいっ! 絶対に何も、誰にも言いませんっ!」

「よろしい。では女性に絡んだことも、今回は不問にする。早く宿舎に戻れ」

「「はいっ!」」



「……今更、僕がドミナティアを名乗る羽目になろうとは……」

「いいじゃないか。家名なんて、こんな時くらいしか役に立たないよ、僕らにとってはね」

「確かに、そうですね」



▶ガイハックとミアレッラ


「……タクト……あの娘さんのこと、追いかけて行ったわねぇ」

「あいつ、いっつもあの娘を、チラチラ見ていたからなぁ」

「あの子って、そういうところは行動が遅いよねぇ……あんたそっくり」


「おっ、俺ぁ……いろいろあったんだよっ」

「そうだねぇ。いろいろ……あったねぇ。でも、結婚しようって言われた翌日に駆け落ちするとは思わなかったけど」

「……それは、悪かったと思っては……いる」

「あら、あたしは嬉しかったわよ?」

「そっか……なら、いいか……」


「でも、タクトには駆け落ちなんて、させたくないからね。あの娘さんが、タクトを好きになってくれたら嬉しいねぇ」

「確か、マリティエラの助手の子だよな」

「あら、お医者さんかい? じゃあ、この食堂はどうしようかねぇ……?」

「タクトがやるだろ。あいつなら食堂も、鍛冶師も、魔法師も、全部できちまいそうだ」


「それじゃあ働き過ぎだよ」

「なーに、すぐに子供が生まれて手伝うようになるさ。俺達の孫だ」

「……そうだねぇ……孫と一緒に、できたらいいね」

「できるさ」

「ええ、そうね」



「それにしてもあいつ、女の子の扱いなんて解るのか?」

「あんた以上に奥手だからねぇ……タクトは」



▶ ? 独白?


(おかしい……今日も全く視えない)


(絶対にあの部屋のはずなのに、なんで調べに来ないんだ?)

(しかしドミナティアと一緒に駆け込んできた時にはあの子しか部屋に入らなかった……しかもすぐに部屋を出てしまってからは、誰も入ってこなかった……)


(まさか……あの部屋ではなくて廊下から?)

(くそっ、廊下には『目』を仕掛けていなかった!)


(遠視では音までは聞こえないし……聴ける者は、ここにはいないし)

(必ず、もう一度来るはずだ! 何も持ち出していなかったのだから)


(壁に文字のある部屋を、我々が最初に見つけなければ)

(それにしてもドミナティアめ……あんな『方陣門』など作りやがって。いや、いざという時に使えるか?)


(あの時、あの衛兵が一緒でなければ、地下までついて行けたのに!)

(あいつの魔眼は厄介だ……どうにか欺かなくては……)


(しかし、何度確かめても、司書室には何もなかった)

(ドミナティアの慌て振りからも、絶対にあの付近に入口があるはずなのに)


(ええい、なぜ来ないんだ!)



▶マリティエラとメイリーン


「あら、もっとゆっくりしてきてもよかったのに。メイリーン」

「いえ……」

「その袋、あなたも保存食買ったの?」

「あ、これは、違います。保存食は、家に沢山あるので……これ、新しくタクトくんが作ったもので……」


「まぁ、また何か作ったの? 相変わらず突拍子もないものなんでしょうね」

「驚きますよ、絶対っ! 凄いんですから!」

「……なんであなたが得意気なの? ふふっ」

「とっ、得意、だなんて、そんなことはっ!」


「今日は沢山、お喋りできたみたいね?」

「……はい。すごく、沢山、話せました……助けて、もらっちゃったし」

「助けて?」


「新人騎士に絡まれそうになったのを、助けてくれたんですっ! すっごく、すっごく格好良くてっ!」

「そ、そうなのね? それは良かったわね?」


「はいっ! それでっ、これっこの身分証入れも、新作なんですけどっ! お揃いなんですっ」

「ちょ、ちょっと落ち着きましょう? メイリーン」

「タクトくんと、お揃いなんです! えへっえへへへっ」


「そっか……うん、良かったわね」

「はいっ!」



「……これは絶対にタクトくんに、メイリーンを好きだって言わせなくっちゃね……」

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