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第115話 翻訳

 翌日から、俺は転移魔法を試しながら翻訳をしていくことにした。

 教会の前から、あの秘密部屋へ移動した時の魔力消費量は三百くらい。

 出入りに六百。

 これくらいは全然大丈夫だ。


 教会に向かう道の途中にある公園から、あの部屋へは片道・五百ほど。

 うん。

 へーきへーき。

 でもここは人の目が多いから、転移魔法は使わない方がいいかもしれない。


 もう少し家に近づいた所にある、ミズナラの大木の影からあの部屋へは七百二十。

 よし、これは家からでも大丈夫かも。

 でもちゃんと外出することを伝えてからの方がいいから、家の外に出たと同時に転移魔法を使う。

 あの部屋まで千二百、必要だった。


 うーむ、翻訳にどれくらい魔力を使うか解らないから、この距離の往復は止めておいた方がいいかもしれない。

 なるべく近くまで行ってから、秘密部屋に移動するようにしよう。

 転移目標を細かく書いておけば、消費量を調節できる。


 あの魔眼での『遠視とおみ』を誰がやっていたのかは気になるところだが、教会内部の人間であることは間違いないだろう。

 だとすれば『俺が教会を訪ねた記録』が残らない方がいいような気がする。


 秘密部屋への入口を開く仕掛けを魔法で動かないようにして、本棚も完全に固定してしまう。

 転移魔法以外での出入りができないようにしてから、翻訳作業に取り組むのが安全だ。

 俺は秘密部屋で翻訳の準備に取りかかった。


 先ずは、自動翻訳に書き加えておかなくちゃ……えーと。

『古代文字は青く表示』

『古代文字と現在の文字での訳文を併記』

『全ての文字と文章の原文を表示して日本語に翻訳』

 これでいいかな。


 おおお!

 古代文字だけ、鮮やかな青になったぞ!

 うっわー……本当に全部古代文字なんだなぁ……

 あれ?

 壁に……青い文字が浮かんでいる?

 壁にも古代文字が書かれているんだ。


 でも全く見えなかったぞ?

 古すぎて色あせちゃっていたのか。

 彫られている訳じゃないみたいだもんな。


ちりばめられし星を繋ぐはふたつ目のものの鍵にて星々のつがいを裁つべし』


 はい、解りません。

 まぁ意味のないものかもしれないしね。

 どれかの本の一節かもしれない。

 壁に落書きなんて、よくあることだよ。



 改めて『至れるものの神典』を見る。

 うん、古代文字の下に現代の文字、そして日本語が表示されている。

 でもこのまま現代文を書き写したりはしない。


 そのまま古代文字が読めることは危険だとセインさんもライリクスさんも言っていた。

 ならば、完全に一致しないように一部を近しい別の言葉に置き換えた方がいいのかもしれない。

 いや、置き換えだと意味が違ってしまうからまずいか……


 うーん……まず、どの古代文字がどの現代文字になっているか一覧表を作ってみよう。

 古代文字を書き出すと五十種あったが、現代文字は二十九種しかなかった。

 ……あれ?

 現代では古代文字一文字分を、組み合わせで使っているものがあったりするのかな?


 神典を見ていくと、古代文字と日本語の意味が表記されているのに現代文字だけ空白の部分が見つかった。

 これって、今では使われていない言葉で、その単語が存在していないということか?

 よく見ると日本語で同じ言葉に置き換えられているものでも、古代文字の表記が違うものがある。


 もしかして『顕す』『表す』『現す』『著す』みたいに、同じ音だけどニュアンスや表現が違うということなのかも知れない。

 そうか、だとすればそこを現代文字では同じにしてしまえば、他の本や方陣の『古代文字の全てを正しく読む』ことはできないのではないだろうか。


 そして日本語訳もされていない古代文字は俺の知らない地名とか、現在はないもの……なのかも。

 いや、ライリクスさん達も言っていたじゃないか『目くらましのために意味のない言葉を書くことがある』と。


 これはミスリードのための単語で、これに引っかかっていると全体が訳せないようになっているトラップってことも考えられる。

 もともと存在しないただの記号の羅列だとしたら、訳せなくて当然だ。

 これは書き出してノートに纏めておこう。

 この三言語で見えているものをそのままノートに転写しておいた方がいいかもしれないな。



 俺は翻訳は午前中の一刻間、二時間だけと決めた。

 夢中になり過ぎると、絶対に魔力切れになるまでやっちゃうに決まっている。

 この秘密部屋で魔力切れになんてなったら、誰も救出に来られない。

 時間を区切って、無理をしないようにしなくては。


 万が一の時はコレクション内に食べ物も飲み物もあるから、緊急脱出くらいの魔力は戻せると思うけど。

 この間、身を以て学んだばかりだからね。

 『やり過ぎは絶対によくない』って。

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