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第101話 日常に戻る

 結婚式と披露宴が終わって、慌ただしかった日々から日常に戻った。

 父さんと母さんにレーデルスであったことを話してかなり心配されたりしたけど、既に衛兵隊に襲われかけたことを訴えてあるって言ったのでなんとか落ち着いてもらえた。

 もう、暫くはシュリィイーレから出ないようにしよう。


 そして、とっさにあの男に付与してしまった『絶対服従』を【集約魔法】にしてしまうことにした。

 偶然でもシュリィイーレに来て欲しくなかったし、いつ思い出されるか落ち着かないのも嫌だったから。


 左上に四文字分の空白を作り四角く囲んだ中に『シュリィイーレ出入禁止』『鈴谷拓斗の全てを忘却』『魔法師試験での剣と盾についての全てを忘却』と書いて、空けておいた四文字分に『絶対服従』と書くとその紙の文字が光って【集約魔法】が発動した。

 やってはいけないことと思いつつも、自己防衛だと言い聞かせている。

 都合よすぎだな、俺……


 でも、人体への直接付与はどれくらいもつのだろう?

 それについては、純粋に興味がある。

 なので【集約魔法】で解毒・防毒の札を作り『β(ベータ)』として左手首に『β(透)』と書いてみた。

 これが消えるまでにどれくらい掛かるのかで、目安になりそうだ。

 ……これも五年保証だったら凄いな。


 そして、ライリクスさんとマリティエラさんへプレゼントするケースペンダントを作った。

 弦月つるつきに結婚なさったので、半月。

 ふたつを並べると満月になるように、ふたつでひとつの感じに作ったのだ。


 ……作っててなんだが、結構照れくさいな、これ。

 まぁ、いいか。

 新婚さんなんて、照れくさいくらいがちょうどイイのだ。

 この世界の空には『月』は……ないんだけどね。

 まぁ、円が完成するとでも思ってくれればいい。


 ビィクティアムさんから貰った錆山の鉱石に入っていた琥珀の欠片とかパイライトとかの黄色っぽい石、青っぽいものや紫っぽいものを交ぜて、月を彩っていく。

 うん、結構綺麗にできた気がする。

 そうだ……セインさんも、金属アレルギーだったなぁ。

 一個、作ってあげようかなぁ。


 神様好きなセインさんにはどんなのがいいだろう……そういえば、主神が右手に持っている杖の先に『九芒星エニアグラム』が付いていたな。

 中二ゴコロをくすぐるデザインだと思っていたんだよね。


 三角形が三つ重なった三複合正三角形型も悪くないが、主神の杖についていた九芒星は星形正九角形だ。

 俺的にも星形正九角形が好きだし、こっちだな。


 よし。

 夜空っぽくして……上の方に九芒星エニアグラムを……

 うーん……黄色は何か違うし、目立たせるより、よく見たら解るって方がカッコイイ。

 あ、でも九芒星エニアグラムだけ玉虫色に光るって方がいいか?

 円周を九等分して二番目ごとの点を結んでいった輪郭と、中をそれぞれ別の色ってのもアリだな。



 翌日、ライリクスさんとマリティエラさんにできあがったケースペンダントを持っていったら、もの凄く喜んでくれてその場で入れ替えてくれた。

 で、そのまま又しても甘々ロマンス劇場が開幕してしまったので、そそくさと退散。

 戻った頃には昼食時で、人が増え始めていた。

 ランチタイムの忙しさは嫌いじゃない。


 落ち着いてきて、スイーツタイムまでもう少しという時間に、セインさんが食事にやってきた。

「いらっしゃい、セインさん」

「やあ、今日のはからくないかい?」

「大丈夫ですよ。揚げ鶏の卵とじですから」

 セインさん、昨日のカレーで凄く苦労していたもんなぁ……

 結構、甘口だったんだけど。


 セインさんとお決まりの神様話をしていたら、ライリクスさんとファイラスさんがやってきた。

 あ、もうスイーツタイムだな。

 あのふたりは、スイーツタイムを知らせる時報みたいな感じだ。


「それにしても君の考え方は独特だが、誰かの影響なのかね?」

「いえ、誰かっていうより……本ばっかり読んでいたからですかね。小さい頃は友達いなくて」

「本が沢山あったのか」

「ええ。本だけはもの凄くありましたよ。三部屋丸々、本棚ばっかりだったから」


 そう、うちはとにかくやたら本があった。

 だが物語とかは全然なくて、知識系のモノとか図鑑とか詩集とか『文字書き』用の資料ばっかりだったけど。

 それは今、すべて俺の【蒐集魔法コレクション】に入っている。

 俺の最大の武器のひとつだ。


「ここでも、司書館とかあるといいのになぁ……」

「……あるぞ」

「え? シュリィイーレに? セインさん知ってるの?」

「ああ、教会には『司書室』というのがあってな。魔法関連の本や技能関連の本が沢山ある」

 うわ、何それ!

 めっちゃ見たい!


「教会……かぁ。見せてもらえるのかなぁ」

「構わんぞ」

「え?」

「私が許可証を出してやろう。成人しているなら、問題ない」


 そう言うとセインさんは、懐から羊皮紙と筆記具を出した。

 持ち歩いているのか……仕事柄なのかな?

 てか、許可証……って……セインさん、教会の関係者なのか?


 書いてもらった許可証には『ドミナティア』の名前が入っていた。

 あーっ!

 一番偉い司祭様じゃん!

 うわー……俺、散々神様暴論、言っちゃったじゃん……

 もー、そういうことは早く言ってよーっ!

 ……てことは、セインさんは俺の家名とか段位のこととか……知っているんだよな。


「もっと早く言ってくれればいいのに……」

「すまんの。なかなか言いづらくてなぁ」

 俺は声を潜ませて、セインさんにだけ聞こえるように話す。


「まぁ……俺のお願いを聞いてくれて、感謝しています」

「約束は守る」

 うん、ありがとうございます……


「実は、明日にはここを離れるのでな。今日、言おうと思っておったのだよ」

「え?」

「王都に行かねばならん」

「王都の教会? すごいね! 大出世じゃん」


 ぶふぉっ!


 ん?

 ファイラスさん?

「ごっごめん、ちょっと咽せちゃって……ごふっ……水、貰っていいかな?」

「もー、慌てて食べちゃ駄目だよ? はい、お水」


 ライリクスさんが、もの凄く笑いを抑えている。

 そうそう、人の失敗を笑っちゃダメだからね。



 そっか……セインさん、もう来なくなっちゃうのか。

「でも、セインさんに食べて欲しかったお菓子とかまだあったんだけど、残念だなぁ」

「いや、ひと月に一度はシュリィイーレに来る。直轄地だけでなく他の教会も回らねばならんから、長くはいられないが」

「そうなんだ! じゃあ、また食べに来てもらえますね」

「勿論だとも」


 よかった、よかった。

 試して欲しいお菓子が、沢山あるからね。


「あ……腕輪のところ、やっぱり赤くなってますね。痒いですか?」

「ああ、いつも布を巻いているのだが、それでも触れてしまうことがあってね」

「調整しましょうか?」

「ん? 調整……とは?」

「銀なのに赤くなるってことは、不純物に反応している過敏症だと思うから、いくつか防ぐ方法がありますよ」


 あれ?

 なんか凄くセインさんびっくりしてるけど……知らなかったのかな、過敏症。

 ファイラスさん達も?

 もしかして、みんな金属アレルギーで興味があるのかな?

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