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10.5 ガイハックとミアレッラ

「ミアレッラ、さっきのやつ、タクト、ちゃんと食ってるか?」

「ああ、食べてるわよ。どうしたのよ、あの子?」

「白森に昔の小屋があったろ? あそこにいたんだ」

「ええ? あの近くに角狼の巣ができたからって、何年か前に使わなくなっていたじゃない!」


「さっきの角狼も、あの近くで仕留めたんだがよ」

「なんだって、そんな危ない所に……」

「一ヶ月くらい前に、白森の奥の山が崩れただろう?」

「そんなこともあったねぇ……小さな村が巻き込まれて全滅……あ……!」

「うん、あいつは、そこの生き残りじゃねーかと思うんだ」


「じゃあ、生き延びてあの小屋で暮らしていたって?」

「何年も行ってなかったのに、部屋の中が綺麗だったんだ……」

「でも……どうやって一ヶ月も暮らしていたんだろう……」

「川魚を焼いたような匂いがしていた。今の季節なら、まだ森にも食えるものはある」


「そうかい……ひとりで、よく病気も怪我もせずに生きていられたねぇ……」

「あいつは【付与魔法】が使える。しかも回復系だ」

「そ、そんな希少な魔法師なのかい? あの子が!」

「ああ、絶対に言うなよ!」

「解ってるよ! 冒険者なんかに狙われたら大変だ」


「かなり凄腕だぜ。ほら、この腕、見て見ろよ」

「ちょっと、あんた! 服が裂けて血が……!」

「よく見ろって! 傷なんかないだろ」

「本当だわ……でも角狼にやられたんなら、早く解毒しないと!」

「大丈夫だよ」


「弱毒でも放っておいたら、左腕が動かなくなっちまうよ!」

「毒も消えているんだ」

「……え? 【回復魔法】で毒は消えないじゃない?」

「消えてたんだよ。さっきガンゼールの親父さんに診てもらったら毒はなかった」

「そんな【回復魔法】があるのかい……」


「初めてだよ、こんなのは。俺は聞いたこともない」

「とんでもない魔力を持っているんじゃないのかい?」

「だろうな……顔にも怪我したんだが、全部治してくれたんだよ」

「顔に毒なんて……少し遅かったら、死んでいたかも知れないじゃない!」


「きっと、あいつの故郷の魔法なんだろう」

「……もうなくなっちまった村の……あの子、家族も全部亡くしたんだよねぇ?」

「ああ、あいつ自分では成人してるって言い張りやがったけど、絶対にまだ子供だぜ」

「あたしもそう思うよ。どう見たって二十五歳以上になんて、見えないからね」

「だよなぁ……」


「きっと、虚勢を張っていたんだろうねぇ……ひとりでも生きていけるって」

「しばらく置いてやりたいんだが……いいよな?」

「当たり前じゃないか! あんたの命の恩人を、放り出したりするもんかね!」

「やっぱり、おまえは最高だぜ、ミアレッラ」

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