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第92話 加護の祈り

「生誕日おめでとう。成人となる心構えはできていますか?」

「ありがとうございます。そのつもりです」

「君だけは職業が既に出ておりましたので、こちらで加護の祈りが捧げられます」


 あ、なるほど、そういう違いがあったのか。

 てことは、職業変更はないんだな?

 よっしゃ!


 司祭様の祈りの言葉は、音楽みたいだった。

 こういう感じ、嫌いじゃない。

 音が天に昇っていく感じで素敵だ。


「あなたの身分証を開いて。裏返しにしてこの上に置いてください」

 俺は言われたとおりに身分証に魔力を通して大きくし、目の前の真っ白な石造りの台に裏返しに置いた。

「身分証に両手を乗せて」

 そして、司祭様も身分証に触れながら、また別の祈りが捧げられる。


 徐々に身分証のプレートが光り出し、銅色から銀に、そして金色に変わった。

 おおー、ゴージャスな輝き……

「こ、これは……」

 え?

 なんか、不具合ですか?


「すこし……このまま待っていてください」

「はい……」

 えーーーーっ?

 めっちゃ不安なんですけどーっ?


「お待たせしました。ここからはわたくしが説明致しましょう」

 あれ、もしかしてテンプレの交代だったのかな?

 焦っちゃったよー、小心者だからさー。


 よく響くいい声の司祭様だな……フードで顔がまったく見えないのも怖いような、神秘的なような。


「まず……あなたはここに表示させていない事項がありますね?」

 ……はい?

 ありますけど……えっ、全部ばれちゃってるってこと?

【文字魔法】完全敗北ってことですかっ?


「『家名』をお持ちですね?」

「……どうして……?」


 司祭様はゆっくりと裏返していた身分証をひっくり返して、俺に向けて見せる。

 名前の下に……うっすらと家名が出てしまっている。

 そうだ……『家名を表示しない』っていう指示は、五年前からまったく書き替えていなかった!


 しかも、あれを書いたのは当時入れていた青インクだ。

 期限切れ……ってか、魔力切れで表示されてしまったということか!

 ……俺の魔法、五年はもつってことか……

 いや、そんな考察をしている時ではない!


「巧みに隠蔽の魔法が掛けられているようですが……この金の輝きまでは誤魔化せませんよ」

「……わかりました。認めます。俺には『家名』がありました」

「『ありました』?」

「はい。今、ここにはない国のものです。もう、なんの意味もない」


「家名は尊いものです。隠す理由がわかりません」

「必要ないからです」

「身分を保障するものですよ? 貴族であるという証です」


 やっぱり、貴族だと家名があるのか。

 面倒だから非表示にしていたのは、正解だったわけだ。


「俺のいた国には、もう身分制度はありません。昔は……あったけど、既になくなっているので俺は平民です」

「……それでも、継ぐべきものでは?」

「俺は……全部なくして、何もかもなくなって、死んで当たり前だったのをシュリィイーレの方々に救われた」

 そうだ、この世界に来たあの日、父さんに会えたから俺は生きている。

「ここに来て、ここで生きていていいと言われた。ここでの生活に『それ』は要らないものなんです」


 司祭様は少し黙っていたけど、わかりました、とだけ言ってくれた。

「あなたはどこででも生きていけます。王都でもあなたは歓迎されるでしょう」

「俺は、シュリィイーレで生きて行きたいです」

「よろしい……では、その他の項目を確認して解らないことがあったら聞いてください」

「はい」


 なんとか、家名の件は大丈夫みたいだな。

 よし、表示確認だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 名前 タクト/文字魔法師カリグラファー

 家名 スズヤ

 年齢 25 男

 在籍 シュリィイーレ 移動制限無

 養父 ガイハック/鍛冶師  

 養母 ミアレッラ/店主

 魔力 3250


 【魔法師 二等位】

 文字魔法・極位 付与魔法・極位

 加工魔法・極位 耐性魔法・極位


 強化魔法・第一位


 【適性技能】 

 〈最特〉

 鍛冶技能 金属鑑定 金属錬成

 鉱石鑑定 鉱物錬成

 〈第一位〉

 石工技能 

 〈第二位〉

 陶工技能 土類鑑定 土類錬成

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ……あれ?

 一番上って『特位』じゃないの?

 何?

『極位』って?

『最特』って?

 どっちが上?


 なんなのこれ?

 エクセレントとかスーパーとかマーヴェラス的なことなの?

 俺はおずおずと司祭様に尋ねる。


「あの……これ、意味がわかんないんですけど……?」

「どれど……れ……は?」

 司祭様も初見っぽいー。

 こういうヤバさもあるのかーーーーっ!

 想定外だぜーーっ!


「……初めて見る段位です……ここまでの技能や、魔法が使えるとは……皇族の方でも見たことはありません」

 やっべーーーーっ!

 そのトップオブトップですら、ここまで行っていないっていう事実、やっべーっ!


「俺は! 普通に暮らしたいので! このことはどうか、どうかご内密にっ!」

「ああ……これは、言えん……さすがに。しかし凄いものだ……ここまでの研鑽を為されているとは」

 いや……頑張ったけど、頑張っていないというか。

 えーと、どうしてか、わかんないというか……


 でも、家名以外は無事に隠蔽できてて良かった……

 そっちもバレていたら、マジで何も説明できなくて詰んでたかもしれん。

 フツウサイコー!

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