表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/242

第88話 スイート・スパイシー

 春夏甘薯祭りは、大盛況である。

 やっぱりサツマイモは、スイーツとしてスペックが高いのである。

 小豆もイイ感じでファンを増やしているようだし、これからも大活躍の予感。

 本日のスイーツタイムも、皆さんイモスイーツをご堪能くださっている。


「タクトくーん、こんにちはー! 食べに来たわよー」

「こんにちは、マリティエラさん! 今日は甘薯のかき氷ですよ」

「楽しみにしていたのよ。うちの助手をしてくれてる子が、絶対美味しいからって」

「助手の方って……?」

「メイリーンよ。知ってるでしょ?」


 ああ!

 プロトタイプ五番の、意匠再付与のきっかけをくれた人だ。

 うちのスイーツタイムの常連さんでもある。


「へぇ……メイリーンさん、お医者さんだったのかぁ……知らなかったな」

「あら、あの子なんにも言わなかったのね」

「いつも黙々と、すっごく美味しそうに食べてくれてて」


 なんか声をかけづらいくらい、楽しそうにお菓子を食べているんだよね。

 俺も声かけとか、得意じゃないからなぁ。


「……なるほど……あら? ライリクス? ライリクスじゃない!」

「やぁ、マリティエラ」

 知り合いなのかこのふたり?


「相変わらず甘い物好きなのねぇ。あ、一緒の席でもいいかしら?」

「勿論だよ。君がここまでひとりで来られるとは、その方が驚きだ」

「やっと近道を覚えたのよ」

「そうか。それは良かった。じゃあ、新しい僕のうちも覚えてくれているのかな?」

「……ごめんなさい、それはまだ」

「だと思いましたよ……この店の斜め向かいにある、白い煉瓦の官舎の二階です」

「あら、近いのね! 良かったわ、迷わないで行かれるわね!」


 俺を無視して盛り上がるこの感じ、このふたりはもしかして、もしかしなくても……


「おふたりは……恋人同士なんですか?」

「違うよ、タクトくん」

 違うの?

 じゃあ、この親しさは何?


「ライリクスは、私の婚約者なの」


 まさかの上位互換。

 恋人どころか、婚約者がいたのかっ!

 しかも、こんな美人の女医さんだなんて許し難い!

「意外かな?」

「はい、とても。ライリクスさんって絶対に、こういう恋愛関係とか面倒だと思う人だと思っていました」


「あら、この人、意外に結構情熱的よ?」

「マリー、あんまりタクトくんに変な情報与えないで」

「うふふ、御免なさい、ライ。でもちょっと自慢したいじゃない?」


 愛称呼びかよ、コノヤロウ。

 羨ましくなんかないんだからねっ!

 本当なんだからっ!

 結婚式に呼んでくれなかったら、絶対に許さないんだからねっ!




 スイーツタイムが本当にスイートな感じになってしまって、なんだか捻くれた気分の俺は買い出しの続きで東の香辛料市場に来た。

 くっそー、彼女欲しーなー!

 あちらにいた頃、一度だけ女の子とつきあったことがあるけど、つまらないとかときめかないとか訳の判らない理由で振られた。


 その後別の友人から聞いたところによると、二股をかけられていたらしいってので変に納得した。

 何に対しても自信がなく『どうせ俺なんか』ってのが当時の俺の口癖だったから、そんなことばっか言うやつはきっと誰も好きになんてならないよなって諦めた。

 そうやって、俺は引きずるくせに、諦めたって言い聞かせてばっかりいたんだ。


 だから!

 こっちでは絶対に自分を卑下したり、諦めたりしないで生きようって思ってるんだけど!

 如何せん、やっぱり女の子は未知の生物過ぎて苦手なんですっ!

 まぁ……可愛いなーとか、しゃべりたいなーって思う人はいるけどさ。

 勇気が欲しい……

 今、俺が一番欲しい技能は『勇気』と『大胆さ』かもしれない。



 お目当ての香辛料を買い込んで、二、三品は使ったことのない物を試してみようと思い、いつもと少し違う店に入ってみた。

 あ……すっげ、いいもん見つけた!

 ターメリックだ!

 この店、カレーに使う香辛料が沢山あるぞ!


 赤唐辛子とか生姜の粉はうちでも使うからあるんだけど、シナモンやナツメグ、クローブ、クミンはあんまり使わないから買っていなかったんだよな。

 ターメリックが手に入るなら、全部買おう!

 うん、うん、カレーはいいぞ!

 そっか、シナモンはお菓子にも使えるな。


 ターメリックの量り売りを袋に詰めてもらっている時に、お店の人から男の子が珍しいねーと言われた。

「え? これって肌に塗るの?」

「そうよー、化粧品になるのよー。あなた、化粧品作るの?」

 へぇ……そういう使い道もあるんだ……知らなかった。


 お店の人と色々話しながら、結構たくさんの種類を買ってしまった。

 スパイスを利かせた夏のカレーもいいもんだしな!

 うん、大丈夫、ちゃんと全部使える!

 ……はず!

いつもお読み下さってありがとうございます。

また、誤字報告なども大変助かっております。

ありがとうございます。


明日よりしばらくの間ネット環境のない所に参ります為、誤字・脱字などの修正やご連絡いただいた場合のお返しなどが12/14くらいまで出来ない可能性がございます。

予めご了承くださいませ。


書き溜めた分がございますので、小説の更新は毎日続けます。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ