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第87話 イモイモイモスイーツ

 『サツマイモ』は赤芋と呼ばれているだけで、特に名称がないらしい。

 やはりイスグロリエストでは、ほぼ作られていないのだろう。

 この国での呼び名がないのだ。


 ならば、俺が勝手に名前を付けてしまおうと考えたのだが……さすがに『薩摩』は使えない。

 赤だけでなく、紫っぽい物もあるので色指定はしたくないし……と、悩んだが結局『甘薯かんしょ』で落ち着いた。


 うん、日本の先人の言葉をそのままいただいただけである。

 午後にはスイートポテトができあがり、もう一度ゼルセムさんのもとへ。

 お名前決定のお知らせである。


「へぇ……『甘薯』かぁ。うん、甘くて旨そうな名前でいいな。よし、じゃあ、この名前だって言って仕入れるよ」

「頼むよ、ゼルセムさん。冬場用に少しは栽培しようと思うけど、やっぱり沢山欲しいから」

「知り合いも喜んでくれると思うぜ。折角作ったんだから、旨く食って欲しいもんなぁ」


 今日の夕刻前には、ゼルセムさんは東の町・レーデルスへ戻って、その翌日に生産者の人に会うというので、ゼルセムさんとその人達の分のスイートポテトをお土産として渡した。

 生産者様には『こんな風に美味しく食べてますよー』ってお知らせしたいからね。

 テイクアウトボックスは【文字魔法】で温度管理と状態保持魔法バッチリなので、箱を開くまで劣化も腐敗もしないのだ。


「箱を開けると魔法が切れちゃうから、ゼルセムさんが食べる時はこっちの箱だけ開けてね」

「お、俺の分も? うわぁ嬉しいなぁ! おまえの店の菓子、旨いんだよなー! あ、あとで焼き菓子買っていくからよ。みっつ、とっといてくれ」

「はいはいー、毎度ありー」


 生産者様、ありがとうございます。

 この夏の新作スイーツに、甘薯を沢山使わせていただきます!



 というわけで、今年の春は『甘薯の焼き菓子(スイートポテト)』。

 夏は……水ようかん!

 小豆と甘薯の二種類。

 それと、かき氷を作っちゃおうと思っているのだ。


 本当は一昨年辺りから作りたかったんだけど、シロップが懸念だったので見送っていた。

 果実を使うのが理想だったんだけど、原価が上がってしまうし、かといってジャムとかだと焼き菓子のソースと差別化が難しかったのだ。

 しかし!

 今年は甘薯を緩めのクリーム状にして、氷に掛けることができるのである。


 少し硬めのもので細く絞り出したり、小豆のあんこを添えたりしてもいい。

 抹茶がないから、宇治金時はできないけど。


 硝子の器は、ケースペンダントの石細工を作ってくれているレンドルクスさんの工房で作ってもらった。

 俺が石工職人育成支援をしていることもあって、もの凄く手間の掛かる美しい器をほぼ材料費だけで作ってもらえたのである。

 めっちゃラッキー!

 まさに『情けは人の為ならず』というやつだ。


 器には適正温度保持の魔法を付与してあるので、かき氷は口に入れるまで一切溶けない。

 氷も魔法で天然氷と同じ状態の物があっという間にできてしまうので、ふわっふわのかき氷が作れるのである。

 かき氷機は父さんの力作だ。

 俺の下手な絵と、身振り手振りを交えた説明だけであんなにちゃんとしたものが作れるなんて、父さんってスゴイ……


 今回のかき氷はまず器の一番下に、あまーい甘薯の煮汁を使ったジュレのチャンクしたものを少し入れる。

 氷の上に掛けたイモペーストやあんこをうっかり先に食べちゃった人が、味のしない氷で寂しい思いをしないための救済措置である。

 これは、俺がよく後悔することだから、絶対にそういう人が出るはずだ。

 だって美味しいから、どうしても多めに食べちゃうよね?


 そして氷自体にも、透明なすこーーーーしだけ塩味のあるシロップをちょっと掛けておく。

 その上からとろりとしたイモクリームをかけ、小豆のあんこと細く絞ったイモペーストで飾るのである。


 ちょっと……コストと手間が掛かりすぎか。

 小豆が足りなくなりそうだし、あんこはナシで……甘く煮たイモのキューブを交ぜ込もうかな。

 うん、イモづくしでいこう!

 でも生クリームは欲しい気がする……

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