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第10話 町に行ってみよう

 ガイハックさんと一緒に、小屋を出て町に向かった。

 小屋の近くも道らしい道はない。

 周辺から白っぽい木々がなくなった。


 開けた場所に、腰ぐらいの高さの葦の様なものが生えてる所を抜ける。

 こんな足下が見えない所なんて、俺ひとりなら絶対に通らなかっただろうな。


 地面のぬかるみがなくなって、土が硬くなってきた頃ようやく細い道に出た。

「この道を左に行くと、シュリィイーレの町だ」

 シュリィイーレ……難しい発音だな。


 こっそり持って来てしまった、さっきの羊皮紙を見てみる。

 空白だった単語の一部が埋まった。

 やっぱり、地名だったんだ。

 俺が聞いて音を確認したから、日本語の一番近い音に変換したのか。


 暫く歩くと、町の外壁が見えてきた。

 外壁は石造りで堅牢そうだ……不審者を入れないためかな。

 俺、結構不審だけど、大丈夫なんだろうか……?


「魔獣が時々この近くまで来るから警戒しているだけだ、心配はいらねぇよ」

 ガイハックさん、結構鋭いよな……俺、表情に出ていたのか。


「町とか初めてなんで……緊張しますね」

「いい町だぜ。工芸や鍛冶が盛んで、職人が多い。さっきの森や反対側の森でも、いい素材が取れるからな」

 へぇ……どんな物を作っているんだろう。

 職人の町なら、いろいろあって面白そうだ。


 門番に名前を言い、少し話をして身分証など持っていないことを告げる。

「ガイハックと一緒なら問題ねーよ。ようこそ、シュリィイーレへ!」

 この人もいい人だ……!

 そして、ガイハックさん、マジでありがとう!



 予想していたよりずっと、大きくて活気のある町だった。

 石造りの家々はだいたい二階建てで、町中の道は石畳だ。

 露店も出ていて、手軽な食べ物か生活雑貨らしきものを売っている。


「あの……俺、全然金とか持っていないんですけど……大丈夫ですかね?」

「だから、心配すんなっつったろ? 俺がいるんだから!」

 なにからなにまで、本当にすみません……いつかこのご恩は必ず!

「おまえは命の恩人だからよ」

 そんなたいそうな傷を治した訳じゃないのに……義理堅すぎるぜ、ガイハックさん。


 食堂に着くと、お客さんがかなり入っていた。

 いいのかな、ガイハックさんは仕留めた獣を持ったままだけど……衛生的に……

「おい! みんな、角狼つのおおかみが出始めた! 白森に行く時は、必ず対策していけよ!」

 ガイハックさんはその獣を高々と掲げ、客に見せる。


 おおー!


 応答……と拍手。

 仕留めたガイハックさんへの賛辞だろう。

 そうか、危険な獣が出たから注意喚起か。

 ……対策がいるほど……危険なやつだったとは。

 逃げられて本当に良かった……!


 その後、裏に回って自宅の方に案内された。

 店の裏に居住用の住宅があって、裏庭があるみたいだ。

 何軒かの家の裏口もその庭と接している。


「俺はこれを猟師組合に届けて自警団に寄ってくる。おまえは店でなんか食ってろ」

「で……」

「おっと! 遠慮はナシだ! いいな、ちゃんと食えよ!」


 でも……と言いかけて、遮られてしまった。

 はい、お言葉に甘えてご馳走になります。

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