第08話 氷の魔女の絶対零度
「迂闊! まさか、このわたしがコンタクトを忘れるとは・・・」
狙いが定まらないユピは力の半分も出せず苦戦していた。猿人悪魔の爆炎をくらい、かなりのダメージを負ってしまったのだ。
カムサムが回復に専念しているが、フェンたちを同時に回復させるのはかなり厳しかった。
残る戦力はカエデのみ。カエデは決意して本を開いた。
「いでよ! ガルム!!」
炎とともに姿をあらわしたガルムは、尻尾が四本に増え身体も一回り大きくなっていた。牙を剥きうなっている。
戦闘態勢は万全だ。カエデとガルムは互いにうなずく。意志の疎通も完璧。本に書かれた新技をカエデはいきなり試すことにした。
「ガルム! 獄炎!!」
ガルムはカエデの合図で大きく息を吸い込み、猿人悪魔に向かって炎を吐き出した。炎と炎が衝突し、巨大な火柱があがる!
さらに猿人悪魔は連続で爆炎を放つ。ガルムは上手くかわしたが、そのうちのひとつがリリスに向かって飛んで行った!
それを見て即座にカエデがブエルを召喚する。ブエルはリリス側にあらわれた。
「ブエル! 爆炎が来てる!」
カエデの声でブエルは爆炎に気づき口を大きく開ける・・・。
― バクン
何とブエルは猿人悪魔の爆炎を食べてしまった!
口の端から煙があがりブエルはゲップをした。「ぶはっ」といってふたたび目を閉じる。
「ごめんカエデ・・・。もう無理。眠い。おやすみ・・・」
カエデがあっけにとられていると、その時、リリスがぱちりと目を開けた。
「おい召喚士! わしと契約せい! お主に力を貸してやる! 早くせい!」
その声に驚きカエデは振り向いた。リリスと目を合わせる。契約成立。本に記録が浮かび上がった。カエデが「よろしく!」というとリリスはうなずき、玉座から飛び降りた。
ガルムとブエルが本に戻る。
「カエデ、わしの技は分かっているな?」
リリスがカエデに尋ねるとカエデはうなずいた。本に書かれている通り。
「リリス! 絶対零度!!」
カエデが叫ぶと、リリスは人差し指をくるっと回し、猿人悪魔に向かって振り下ろした。神殿内の空気が一瞬にして冷え込む。猿人悪魔の周囲にはすでに氷が張っている。
「グアァァァァァァァァァァァァァァァァア! 冷タイ! 凍ル! 凍ル―――! キ、貴様―――、召喚士メ・・・」
そしてほんの数秒後・・・。
― パキ、パキ、パキ、パキ、パキ、カチ―――――――――ン!
猿人悪魔は完全に凍りついた。
「破壊!」
カエデが言って氷が砕け散ると、猿人悪魔は黒い霧となって消滅していった。
勝利だ!
フェンがカエデに駆け寄ってきて抱きついた。フェンの鼓動が伝わる・・・。カエデはフェンに力をあずけて、ずるずると床にへたりこんでしまった。カエデの魔力はほとんど空になっていた。
「カエデ・・・、リリスもフェンと一緒でカエデが大好きじゃ」
リリスがそう言うと、フェンは顔を赤くしてふさぎ込んだ。
すると、カエデまで顔を赤らめてふさぎ込んでしまった・・・。カムサムが笑う。
リリスは本に近寄り、「ぽんっ」と姿を変えた。少女だったリリスの真の姿は白猫だったのだ。
「フェンもこれから、よろしくニャ」
リリスはカムサムを避けて本の中に入っていった・・・。
―――――――――――――――――――――
契約No.:003
契約名 :リリス
種 族 :妖精族
個体名 :ケット・シー
L V :40
体 力 :50
魔 力 :90
特 徴 :水の精霊。
水温を自在に操ることが出来る。
少女の姿だが正体は白猫。
固有技 :絶対零度
―――――――――――――――――――――
最後までみていただいて本当にありがとうございました。
ブックマークもらえるとすごく励みになります☆ どうぞよろしくお願いします。