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第05話 アスガルド城~賢者カムサム

 アスガルドの城下町は賑わっていた。


 この国は天然の要塞と言われるだけあって交易には不向きな地だ。


 だが、300年の歴史をもつこの国は貿易に向いた南の海近くに拠点をつくり、そこからアスガルド城までの陸路を開拓した。道の名はリオロード。


 南の貿易港クリシュナからアスガルド城に続くリオロードには数十もの町があり、ちょうど中間地点にあるガレイロという城塞都市には、王国騎士団の本部が構えている。


 機動力のある勇者たちにとって、クリシュナとアスガルド双方を防衛できるガレイロが本部としてふさわしかったからだ。



 ガルムははじめてみる屋台に興奮気味だった。


 ジャッカリコのバター焼きやアプルーの水あめ、ポルム鳥の串焼き。城下町に入ってから、ひっきりなしにフェンにおねだりしている。


「ガルム! 少し我慢しろよ。フェンに悪いじゃんか」


 カエデがそう言うとガルムは不満そうにしていたが、やがて諦めてそっぽを向いてしまった。


 フェンも安心した。王女だが実は無駄遣いしない派なのだ。


 いじけたガルムをよそに、フェンの街案内があってカエデがそれに集中していると、街のはずれに鍛冶屋の看板があった。フェンはそこに用があったのだ。



― 聖剣 エクスカリバー



 世界にただ一振り。才能のない者には触れることも許されない伝説の聖剣。フェンが16才という若さで王国騎士団副団長にまで昇りつめた最大の理由がこの剣にあった。


「錬成をお願いしてたの。しっくりくるわ~。この剣じゃないとあたし無理」


 カエデがエクスカリバーの青い刀身に見惚れていると、フェンが何かに気づいた。


「あれ? ガルムは?」



 ・・・ガルムは迷子になっていた。イカロス焼の香ばしい匂いにつられて、ガルムは屋台の店先でじっと眺めている。そこに、あご髭をはやしたおっさんが本を片手にやって来た。


(フェンリル・・・、か、かっわい~!)


 おっさんはガルムに迷子になったいきさつを聞いて、イカロス焼を2つ注文した。


「ああ~、それは気の毒に。ご主人ケチだね~。どうだい? 召喚契約を解消してボクと暮らすっていうのは!」


 おっさんの提案にガルムはあっさり断った。だが、しつこく食い下がるおっさんは、ガルムを抱きかかえ「可愛いね~」と言って頬ずりをする。


 ゴ――――――!


 おっさんはイカロス焼ごと真っ黒に燃え尽きた・・・。


「ひ・・・酷いじゃない・・・フェンリルちゃん・・・」


 おっさんはパタリと倒れた・・・。屋台の騒ぎを聞きつけて、カエデとフェンが駆けて来る。



「ガルム! 何てことしてんだ!」

「カ、カムサム!?」



 アスガルド王国 国防大臣 兼 勇者フェン私設パーティ所属。35才、男。独身。王国の誇る大賢者。カムサム・マグナはあご髭が特徴のわんちゃん大好き変態おやじだった・・・。




「姫の仲間だったら最初からそう言ってくれればいいのに~。ガルムちゃん」


 城内の一室でカムサムは性懲りもなくガルムに近寄っていった。すぐにガルムに嚙みつかれて、頭から血を流している。これで5度目だ。カエデは可笑しくなった。


 変態おやじだが、カムサムは大賢者だけあって、噛まれた直後に回復魔法で完璧に傷を治す。


 度の過ぎたスキンシップにガルムは大迷惑そうだが、カエデには案外楽しんでいるように見えた。


「よろしくお願いします。カムサム」


 カエデがそう言うと、カムサムは笑って言った。


「あ~。こちらこそよろしく悪魔くん。ボクは君にも興味あるな~」


 カエデとフェンは苦い顔をした・・・。




 王の間に入ると、フェンを見た国王は優しく笑って無事に帰ってきたことを喜んだ。


 フェンは国王にこれまでの経緯を話し、カエデをパーティに加えたことを報告した。


「まさか召喚士を仲間にするとは、さすがのワシも驚いたよ。フェン」


 国王はカエデの瞳をじっと見ている。カエデは少し目をそらした。


「確かにいい目をしている。フェンの見込みに間違いはないようだ。特権を認めよう」


 王族のパーティには、一部を除きこの国で冒険するための様々な特権が与えられる。アスガルド城や領内各地への通行権もそのひとつだ。


 カエデは国王から紋章入りの赤いピアスを受け取った。ピアスを耳につけると、一瞬、まばゆい光がカエデをつつんだ。




 その時、王の間にあわただしく城兵が入ってきた。緊急を告げる一報だ。


「国王! 勇者マルクより急報です! ガレイロが悪魔の侵攻を受けている。至急、援軍を派遣されたし!」


 フェンとカムサムは互いの顔を見合った。国王が玉座から立ち上がる。


「ユピは、ユピは何している!」

 

 国王が城兵に向かって言った。


「そ、それが・・・・。王国騎士団本部は『氷の魔女』によって凍結されたと・・・」


「守り神が? 一体何故?」


「それは・・・報告を受けておりません・・・」


 玉座に座った国王は一息つき、フェンとカムサムにすぐに救援に行くよう命じた。



 フェンは聖剣エクスカリバーを鞘から抜いて天に掲げ、大声で宣誓をした。


 「この命尽きようとも、必ずガレイロを救いだす!」


 実はこれが『勇者』フェンの私設パーティ初陣だったのである。フェンの鼓動は高鳴っていた・・・。



―――――――――――――――――――――


フェン・アスガルド 勇者 :LV20

カムサム・マグナ  賢者 :LV25

カエデ・イチノセ  召喚士:LV12


―――――――――――――――――――――



最後まで読んでくださってありがとうございました!! いよいよ冒険スタートです。

(^▽^)/ 是非みていってください。ペコリ。


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