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第49話 魔界樹

 『魔界樹』。オルペアパーラの街を覆うほど高くそびえるその巨大な樹は、この街に多くの恩恵をもたらしていた。果実は悪魔たちの腹を満たし、枯れ落ちた木々や葉は生活基盤を支える燃料となっている。


 不思議なことにこの巨木は、りんご、みかん、ぶどうなど様々な果物が実る。これらの果物はオルペアパーラの特産品として、この街の重要な収入源となっていたのだ。


 フェンたちがオルペアパーラに到着して五日目。エクスレイアとはまだ会えていない。ひと通り街を見て回ったフェンは、ちょっと飽きてきていた。


「不親切よね~エクスレイアって。正確な場所とか日時とか手紙に書いておけばいいのにさあ」


 屋台で買ったりんごを食べながら、フェンは頬を膨らませてプンプンしていた。


「フェンちゃんのいう通りじゃ。まったく何でそんな気が利かん男を天叢雲剣あまのむらくもは選んだんじゃか! 会ったらわしが文句言ってやるからな、フェンちゃん!」


 フェンとマンドリルの老人ガララは、肩を組んで歩きながら「ね―――」と言って意気投合している。いつの間にかやたらと仲良くなっていたのだ・・・。すると・・・。



「たたたたた、大変だ――――――!!」


 突然、広場から大声が響いてきた。悪魔たちの騒めきを聞きつけてフェンたちが近寄る。


「・・・!? 何か、あったんですか?」


「た、大変です! ほらあそこ! ま、ま、魔界樹に火の手が!!」


 フェンが見上げる。すると魔界樹の枝葉が炎に包まれているではないか!


「カ、カエデ!」


 カエデはうなずき、咄嗟に『竜王の書ブック』をだした。


「いでよ! ブエル! リリス!」


 『竜王の書ブック』から二匹が飛び出す。


「グオォォォォォォォォォォォン!」


 背中にカエデとリリスが飛び乗ると、ブエルは大急ぎで上空へと飛んだ。


― ギュン!


 魔界樹の枝葉がパチパチと大きな音をたてて燃え上がっている。すごい量の煙だ。


「ゴホッ・・・ゴホ・・・。ブエル! これ以上は危ない。リリス、この距離でいける?」


「任せとけ、カエデ。だいじょ―ぶじゃ」


「よし! リリス! 絶対零度ゼロアブソルト!」


 リリスは「ぽわん」と少女の姿に変化すると指をくるくる回した。


― くるくるくるくるくるくる・・・・ピッ


 リリスが指を振り下ろす。


― パキ、パキ、パキ、パキ、パキ、パキ――――――ン!!


 炎のすぐ上に巨大な氷塊ができあがった。すかさずリリスが指で十字を描く。


「カエデ、準備OKじゃ」


「うん! リリス! 『融解メルト』!」


 カエデが叫んだ瞬間にリリスは赤い光線を放った。光線が氷塊を包む。すると氷塊が下の方から溶けだして、大量の水が降り注いだ。


― ザアァ―――――――――・・・・・・


 もくもくと白い煙が魔界樹を覆い、炎が次第に勢いを弱めていく・・・。やがて氷塊が全て溶けると、ぶすぶすと煙をあげて、炎は「すっ」と消えた。


「ふう。・・・どんなもんじゃ、カエデ」


「さすがリリス。ゆっくり休んで」


 カエデがにこりと笑う。リリスはウィンクして『竜王の書ブック』に戻った。


 カエデの眼下で大歓声が起こっている。カエデは「ほっ」と一息ついてゆっくりと地上へと降りていった。


「カエデ、お疲れさま。一時はどうなることかと思った」


 フェンが額の汗をぬぐう。


「危なかったね・・・。でも何でこんなことになったんだろ?」


 するとちょうどユピとカムサムが駆けつけてきた。



「すまん、カエデ。向こうに気を取られていてな・・・」

 

 ユピが親指で指す方向にヤギの顔をした悪魔が倒れている。


「ど、どうしたの? あの悪魔ひと大丈夫?」


「ひとまず命に影響はない。彼は魔界樹の昇降装置操縦士リフトオペレーターだ」


 魔界樹をよくみると、クリスマスツリーに飾る電球のように、長いワイヤーがぐるぐると張り巡らされている。


「姫。彼は魔界樹の頂上てっぺんから逃げてきたらしい。何者かに襲われたそうだ」


 フェンとカエデは息をのんだ。


「今の火事もそのせいかな?」


「ああ。恐らくな。行ってみるか? 姫」


「うん。もし魔界樹が倒れでもしたらこの街のみんなが死んじゃうかもしれない・・・。あたしたちが力になろうよ」


 ガララはにこりとして「うんうん」うなずいている。


(この子たちには悪魔と人間を同等に思いやる心がある・・・ホントにいい子たちじゃ。わしもそろそろ・・・一肌脱がんとな)


「よし。じゃあ、昇降装置リフトはあっちだ。ボクは先にいって操縦方法を聞いてくる。準備ができたらすぐに来てくれ」


「うん、わかった!」



 ・・・フェンたちが宿屋に荷物を取りに行き昇降装置リフトの前につくと、カムサムはすでに操縦席に座りスタンバイ完了していた。回復した操縦士オペレーターが最終チェックをしている。


「カムサムさん、問題無しです。では、お気をつけて・・・メシシシシ」


 不気味な笑みを浮かべた操縦士オペレーターにカムサムがうなずく。


「さあ。みんな乗ってくれ。一気に頂上てっぺんまで行くよ」


 フェンたちが昇降装置リフトに乗り込むと、ガララもひょいと乗ってきた。


「おじいちゃん! 危ないからここで待ってて。あたしたちが何とかするから」


 ガララが杖をブンブン振る。


「だ~いじょうぶじゃ、フェンちゃん。わし、めちゃくちゃ強いといっとろうが」


 フェンが困った顔をしてユピの顔をみる。


「まあ。いいんじゃないか? ご老人が相当な達人であることはわたしも承知している」


「オッケー。グランド・クリア!」


 カムサムが親指を立て操縦士オペレーターがプククと笑う。


「じゃあ、出発するぞ! みんなしっかりつかまってくれ!」


 一同がうなずき、手すりをギュッとつかむとカムサムは思い切りレバーを引っ張った。


― カラ、カラ、カラ、カラ、・・・・・・ギュギュギュ――――――ン!


 ・・・こうしてフェンたちを乗せた昇降装置リフトはジェットコースターのようにうねりながら、大きな音をたてて魔界樹の頂上てっぺんに向って昇って行った・・・。


最後まで読んでくださってありがとうございました!! 


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