第04話 第三王女フェンとの出会い
「あそこにアジトがある。見える? カエデ」
深い森の奥に山小屋が見える。崖の上にあるその場所からはおよそ1kmだ。
ブエルによると、フェン王女をさらったのはこのあたり一帯を牛耳る『山賊』とのこと。『山賊』とは素早さに特化した職業で、集団戦闘を得意とする厄介な奴らだ。
カエデと二匹は暗闇に乗じてアジトのすぐ近くまで潜入した。見張り役が2人いるが、気づかれていない。
中から下卑た笑い声がした。金の話で盛り上がっている。
窓から中をのぞくと、縄に縛られたフェン王女の姿があった!
相手は4人。突入して王女に何かあったら大変だ。ブエルが外で暴れているうちに、カエデとガルムが彼女を助けるという作戦をとることにした。
「いくよ、カエデ」
ブエルは大きく息を吸い込んだ。見張りの2人に向かって閃光弾を放つ。大きい方の見張りがブエルの攻撃をうけて悲鳴をあげた。
それを聞きつけてアジトから4人がでてきた。すでに山賊はパニック状態だ。全員が見張りのもとに駆けて行った。
(今だ!)
カエデとガルムはアジトに飛び込み、急いでフェン王女の縄を解く。解放されたフェン王女は、カエデとガルムにお礼を言って、すぐにブエルのもとに駆けつけた。
「ブエル!!」
山賊のひとりが脱走したフェン王女に気づき、大声で仲間に知らせている。
カエデは意識を集中した。
-『召喚士』。その職業は契約した者の魔力を数倍にも引き上げ、敵を攻撃する。
「ガルム! 火焔!」
その瞬間、ガルムが可愛らしい姿を禍々しく変えた。牙を剥いたガルムが山賊に襲いかかる。
炎を帯びたガルムの力は圧倒的だった。ひとり、ふたり次々と蹴散らす。
ボスをやられた山賊は、得意の集団戦闘に持ち込むことすらできない。そして散り散りに逃げていった・・・。
カエデは勝利した! どこからともなく、勝利のファンファーレが聞こえる。
「助けてくれてありがとう・・・」
フェン王女は言った。カエデは額の紋章が隠れるように前髪を垂らしていたが、風が吹いて露になった。フェン王女がその紋章に気づく。
「あなた、悪魔なのね・・・」
カエデは黙っていた。
「・・・関係ないわよね、命の恩人に対して。ごめんなさい」
ブエルがくしゃみをした。パフンと爆発。
「あたしはアスガルド王国の第三王女、フェン・アスガルド。あなたは?」
「召喚士のカエデ・イチノセ・・・」
フェンはカエデに両手で握手を求めた。
さらさらの金色の髪。澄みきった碧色の瞳。バランスの整った可愛いらしい顔立ち。そして優しい声・・・。
カエデ・イチノセ15才。人間界より異世界へ転生。前世を含めて初めての一目惚れだった。
「フェン。うっかりしすぎだよ、剣を忘れるなんて。王国騎士団副団長ともあろう者が、たかが山賊に捕まったなんて、国民が知ったらどうなるかわかってんの?」
ブエルはそう言うと、フェンに剣を差し出した。
「うう・・・反省してます・・・」
アスガルド王国第三王女フェン。職業は『勇者』。16才にして王国騎士団副団長を務める若き天才少女。
特技は剣技。苦手なものは爬虫類全般。
山賊に捕まった理由は、爬虫類で脅されて抵抗できずに気絶したため。
(誰にも言えないよ~、恥ずかしくて)
「ユピが知ったら怒るから絶対黙っててねブエル・・・」
ブエルは呆れ顔をしてガルムのもとに飛んで行った。
その夜、カエデたちはアジトに一泊することにした。
静かな森の奥で、フェンとカエデはお互いのこれまでのことを遅くまで語り合った。
フェンは王国のことや冒険の旅にでていること。カエデは生い立ちや前世のことまで。
ガルムとブエルはすぐ横ですやすや眠っている。
「カエデ・・・」
「何? フェン」
「ブエルってね。こどものくせにすごくプライドが高いの。従来、バハムートは誰にも従わずに生涯をおえる種だから、カエデと召喚契約したって聞いた時はびっくりしたよ」
「フェンを助けたかったんだよ、あいつは」
フェンは微笑んで首をかしげた。
「あたしの親友をよろしくね」
カエデは顔を赤らめて咳ばらいした。
「それと、いいこと教えてあげる。カエデは凄いよ。カエデはいい奴だから悪い奴と契約できないのよ。でも強くていい奴には好かれるでしょ? 自分で気づいてないだけ」
カエデとフェンは、ブエルとガルムの寝顔を見た。二匹は寄り添い幸せそうに寝ている。
バハムートとフェンリル。こどもだが、成長したら二匹とも世界最強ともいわれる種なのだ。
「・・・カエデ、あたしのパーティに入ってくれない?」
悪魔であるカエデが王国騎士団に入隊することは規約上できない。だが、フェンの私設パーティ所属なら、アスガルド城への立ち入りも問題がないとの理由があったからだ。
こうして、召喚士カエデはアスガルド王国第三王女、勇者フェンの冒険におともをすることになった。
冒険の目的は魔王討伐。魔王軍だったカエデは遠いアスガルトの地で、ふたたびギルティアを目指すことになったのだった。
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