第28話 バスケア山~救出作戦
「賢者様、トマを救っていただきありがとうございました。お礼をしたいのですが見ての通りこの村は貧しくて・・・」
「村長様、お気になされず。とにかく無事でよかったです」
村長はカムサムに何度も頭を下げた。トマはベッドでぐっすり眠っている。
フェンが事情を尋ねると村長は沈痛な顔をして話を始めた。
「先日、この子は父親を助けるためにこの村を飛び出だしたんです」
村長がトマの頭をじっと見つめる。
「三年前、この村に突然ロンダリア軍がやってきました。若い男連中をほとんど持っていかれたんです。村の男たちは近くの発掘場で毎日奴隷のように働かされているのですよ」
「ロ、ロンダリア軍が!? そ、そんなことって・・・」
ユピは腕組みをしたまま尋ねた。
「ご老人。この少年はさっき始祖鳥を助けてくれと言っていたが、それはどういうことだ?」
「始祖鳥様はロンダリア軍を追い払おうと、今まで何度も闘ってこられたのです。すでに千を超えるご高齢。そもそも闘いなどできる御身体ではないのにです。そしてつい先日、捕まってしまいました・・・」
村長が深い溜息をつくと、トマが目を覚ました。
「始祖鳥様は僕たちを命がけで守ってくれたんだ。お願いお姉さん。どうか始祖鳥様を助けてあげて・・・」
涙を流すトマの身体を村長が優しくさすっている。フェンはユピと目を合わせた。
「ユピ・・・」
「ああ。姫に任す」
フェンはうなずいた。
「トマ。安心して。あたし達が必ず始祖鳥様を助け出す。始祖鳥様が捕まっているのは何処?」
トマはポケットからくしゃくしゃになった地図を取り出しフェンたちにその場所を示した。
「ここだよ。東の山をひとつ越えた森の中の採掘場に捕まってる」
明け方に救出作戦を決行することにしたフェンたちは採掘場を目指し森の中を進んでいた。
上空に鳥系魔族が群れになって飛んでいる。僻地とはいえこの大陸では見慣れない悪魔の数だ。三年前のロンダリア軍来訪を境に頻繁に見かけるようになったらしい。
フェンたちはロンダリア兵に見つからないように気をはらい、低めの崖から採掘場を見下ろした。
(・・・!)
村人たちが重そうな袋を背負わされて列をつくっている。それをロンダリア兵が監視していて、歩みの遅い村人に鞭を打っていた。兵士の数はざっと50。
「こんなの酷すぎる・・・」
カエデは唇を嚙みしめた。袋を落とした中年の男性に鞭が振り下ろされた。叫ぶ気力もないようだ。倒れても執拗に続くロンダリア兵の残酷さにカエデはとうとう我慢が出来なくなった。
「もう許せない! 助けなきゃ!」
カエデは勢いよく崖を飛び降りた!
作戦もへったくれもないカエデの行動を誰も止めようとはしなかった。みんな同じ気持ちだったからだ。カムサムがフェンに言った。
「姫・・・ロンダリア兵とボクたちの闘いは国の問題にかかわる。それでも行くね?」
「当り前じゃない! 戦闘開始!」
フェンがエクスカリバーに手をかけた。一斉に崖を飛び降りようとしたその時、ユピの足が止まった。
「・・・!? 姫! 待て!!」
ユピが攻撃態勢に入ったフェンを制止する。フェンはエクスカリバーの柄を強く握ったままピタリと止まった。
「何!?」
「姫。カエデは大丈夫だ。ロンダリア兵の50くらい一人で十分だ。それより・・・感じないか? この気配・・・」
フェンはユピが何を言っているのか分からなかった。
「・・・? どうしたの、ユ・・・」
― ドクン、ドクン、ドクン・・・・
フェンの心臓が高鳴る。
「ぐっ・・・・・・!!」
そして脳裏に幼い日の辛い記憶が蘇り、同時に強烈なめまいに襲われた。
「エ・・・エキドナ・・・?」
ユピが咄嗟にデュランダルを抜いた。振り向きざまに構えを取り呪文を唱える。
フェンが後ろを振り向く。すると・・・。
カムサムが苦悶に満ちた表情をして立ち尽くしていた。
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