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第02話 悪役召喚士への転生

 悪魔の地、ギルティア。


 この世界で最も栄えるアスガルド王国から遥か北、その地に魔王の城はあった。


 カエデ・イチノセは悪魔が15歳で迎える魔王との『誓約の儀』を終え、これから配属される召喚士部隊の宿舎に荷物を運んでいた。


 そう。ド底辺営業マンだった一ノ瀬楓は悪役召喚士に転生したのである。もちろん、前世の記憶と性格をそのまま残して。


「俺、死んだよな・・・」


 目が覚めた時、楓は不思議な感覚におちいった。ギルティアで育った記憶も持ち合わせていたからだ。


 天涯孤独なのは前世と変わらず、子どものころからお人好しで通った悪魔の子。運動も勉強も成績上位。周囲とは馴染めなかったが15歳まではそこそこ順調・・・。


 それが、よりによって『召喚士』とは・・・。


 『召喚士』とは悪魔や幻獣などと契約を交わし、その力を自らの魔力と同化させて敵を攻撃する職業である。


 優秀な召喚士は悪魔や幻獣の力を何倍にも増幅させる。


 この世で唯一、『勇者』に対抗できる職業とされていた。


 召喚士部隊はエリート集団である。宿舎は一人部屋で毎月高額な給与が支給される。


 誰もが羨む職業にもかかわらず、カエデが憂鬱なのはもちろんあの理由があるからだ。


「契約をとれる気がしない・・・」


 入隊式が終わって宿舎に戻る途中のこと。カエデは子犬に懐かれた。尻尾が2本生えた魔犬だ。


 子犬とはいえ、成長すると手に負えない化け物になる。懐かれるとやっかいだから、一般的には相手にしないのが鉄則だった。


 しかし、カエデは違った。


「お前・・・もしかして、あの時、俺についてきた犬か? お前も転生したのか」


 カエデはガルムと命名した。ガルムはまだ幼くて戦闘力が低いため戦いには不向きだが、カエデは心の底から喜んだ。最初の相棒である。


「これからよろしくな。ガルム」


「わん!」と吠えてガルムはカエデに飛びついた。


 魔王との『誓約の儀』を終えると召喚士にはブックが与えられる。何も書いていない真っ白な本だ。


 召喚契約を結ぶと本に対象者のデータが記録される。その最初のページにガルムは記録された。


―――――――――――――――――――――


契約No.:001

契約名 :ガルム

種 族 :魔犬族

個体名 :フェンリル

L V :8

体 力 :15

魔 力 :25

特 徴 :尾の数が増えるごとに魔力が増す。

     5本以上の個体は確認されていない。

固有技 :かがり火


―――――――――――――――――――――


 翌日から召喚士部隊での訓練が始まった。部隊の総責任者は二大悪魔と呼ばれる大召喚士ゲエーロである。


 カエデは技術や魔力の量など、召喚に必要な能力値には何の問題もなかった。むしろ、入隊当初はゲエーロでさえも一目置くほどの期待の新人だった。


 しかし、いよいよ実習が終わり、魔王軍のお抱え悪魔との契約が訓練生の課題となったとき、カエデの不安は見事に的中した。


 契約を試みた悪魔がことごとく悪い奴だったのだ。そもそも悪魔こいつらに期待する方もおかしいが・・・。


 契約条件は給与数年分の金、金、金、人間エサ妖精エサ竜族エサ


(やっぱり魔王軍は狂ってる・・・。でもこうやって召喚士は成り上がっていくんだ)


 法外に要求された金銭は、巡り巡って魔王軍に流れていく。召喚士はローンを返済するために魔王軍に従事する。


 そして弱い者を虐げる。逃げられない迷宮だ。


 案の定、カエデは期限までに悪魔と契約を結ぶことができなかった。まともな悪魔がいることに期待をかけたが叶わなかったのだ。


 カエデのド底辺営業ライフは再び始った・・・。


 この世界でカエデは魔族の子だ。記憶はしっかり残っている。天涯孤独だったが、育った村はまだマシだった。王都から離れた田舎街に、ここまで下卑た悪魔やつらはいなかった。


「カエデ・イチノセ。召喚できない召喚士などゴミ同然だ。魔王軍の落ちこぼれめ。死を選べ。クズ」

 

 半年しても召喚契約が全く結べないカエデにゲエーロは無情だった。カエデは身体の至る所に傷を負い、命からがら王都を逃げ出した。


 育った村は全焼していた・・・。魔王軍の落ちこぼれ。召喚できない召喚士。見習いでしかないカエデに対しても、容赦のない粛清だった。


「すまない・・・」


 こうして、カエデは愛犬ガルムとともに南へと海を渡ったのである・・

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