第11話 地獄の支配者
「ぐ・・・、たぁぁぁぁぁぁぁあ!」
― ガシ――――――ン!!
聖剣エクスカリバーと神剣デュランダルがぶつかり合い、火花が飛び散った。
フェンの連続突きをユピがぎりぎりのところでかわす。一進一退の攻防が続いた。隙をみてユピが間合いをとると、デュランダルに雷が落ちた。
ー ドカーーーーーーン! バチ、バチ、バチ・・・
魔法剣『雷神』。ユピが最も得意とする技だ。雷鳴とともに黄色い閃光がフェンに襲いかかる!
フェンは咄嗟に防御したが雷神の莫大なエネルギーを抑えきれず、遠くまで弾き飛ばされた。すかさずユピがフェンの側に詰める。
「・・・ま、参りました!」
勝負あり。一騎打ちは今日でちょうど100戦目。ユピは刀身を納めた。
「姫・・・。剣技はだいぶ上達したな。正直言ってわたしと遜色ないレベルだ。だが、魔力の使い方が悪い。特に回復があまりにも下手すぎる。そこを徹底的に磨け」
「・・・はい。ありがとうございました。ユピ」
・・・フェンとユピはフルゴラの中心街に宿をとっていた。エルドラが指定した鍛冶屋は宿のすぐ側だ。
正午に近くなり街が活気づいてくると『ウルヌラ工房』が開店を迎えた。フェンとユピが荷物をまとめ、店に向かう。
・・・フェンたちが店に入り、ウルヌラに事情を伝えて錫杖を渡すと、ウルヌラはエルドラが言った通り、勝負をもちかけてきた。
「エルドラ様の頼みとあっちゃあもちろん聞くが先約がいっぱいでなあ。その前にお嬢ちゃんたち俺と一勝負受けてくれんか? 受けてくれるなら優先で引き受けてやるよ」
「ハイ。ありがたいです。でも、一体何の勝負なんですか?」
ウルヌラは錫杖を一振りすると、フェンとユピに向かってニヤリと笑った・・・。
カムサムはカエデの治療に専念していた。・・・これで10度目だ。ボロボロの状態から万全まで回復させているので、いかにカムサムといえど魔力が底を尽きようとしていた。
リリスは白猫の姿でカエデに寄り添っている。一方、ガルムとブエルはそんなリリスの心配をよそに、じゃれあって遊んでいた。
「エルドラ様~、ちょっとボクもう無理かも。これを最後にしてくださいな」
カムサムは泣き言をいった。
「・・・仕方ないのう。じゃあ今日はこれでラストじゃ。フェンとユピが戻ってくるまで、これを毎日続けるぞ。いいな、カエデ」
カエデはうなずいた。だが、実際のところカエデは悲鳴を上げていた。
(ひえ―――! し、しんどい・・・)
召喚の訓練は魔王軍時代でもいやというほど経験したが、エルドラの指導は特別にキツかった。何せ召喚魔法のリミット解除を目的としているから、毎度毎度、ほとんど瀕死まで追い込まれるのだ。
それでもカエデが根をあげないのは、大切な仲間のためだ。カエデの頭にはフェンの笑顔が浮かんでいた。
カエデが立ち上がり、ふたたび本を出す。リリスたちはそれを見て、ポンっと本の中に戻っていった。
「エルドラ様、もう大丈夫です。ラストいきます!」
エルドラが構えた。
「いでよ! ガルム!」
ガルムは本から飛び出すと、可愛らしい姿を変化させた。
巨体と化したガルムにはいつの間にか五本目の尾が生えている。身体全体に黒い炎をまとい、尾の先には赤い炎。ガルムは長い尾をゆらゆらと動かしていた。
「ほう・・・。カエデ、五本以上尾の生えたフェンリルが、わしたち神々の間で何と呼ばれておるか知りたいか?」
カエデはうなずいた。
「『地獄の支配者』じゃ。さすがにこりゃあ骨が折れそうじゃな・・・」
ガルムは空に向かって獄炎を吐き出し、尻尾で強烈な風を巻き起した。雨と雷の神、エルドラとの勝負が再び始まった・・・。
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