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第10話 古都フルゴラ~雨と雷の神

 リオロードは商人たちの荷馬車が行きかい、ところどころで賑わいを見せていた。ガレイロをって一週間。フェン一行はガレイロとクリシュナのちょうど中間地点を進んでいる・・・。



「雨が降らない?」


「ああ。フルゴラはいま干ばつに見舞われていてな。もう三か月も雨が降っていないのだ」



 フルゴラとは城塞都市ガレイロと貿易港クリシュナの中間地点にある地方都市の名だ。歴史的な建造物や文化遺産を多く残す、荘厳な雰囲気漂う古都である。


 ユピはフルゴラの寺院に生まれ、幼い頃から司祭になるべくして育てられた。しかし、彼女生来の戦闘の才能は、寺院に留まることを良しとしなかった。


 彼女が14才になると、噂を聞いたアスガルド国王が直接フルゴラを訪れ、その場で王国騎士団への入団を決めたのだ。国王の熱意に彼女と彼女の両親が負けたのである。


 ユピの生家であるトゥパ寺院は『雨と雷の神エルドラ』を祀る寺院だった。




「エルドラ様に会いに行く。姫、良いな?」


 ユピによると『雨と雷の神エルドラ』は、フルゴラの北東にあるムシャプ山に住む生き神である。フェン一行はリオロードを少し東に外れ、ムシャプ山に立ち寄ることとなった。


 険しい山ではあったが、厳しい修行を繰り返すフェンとユピにとっては何てことのない登山だった。


 だが、カエデとカムサムは彼女たちを追いかけるのがやっとだった。結局、はぐれてしまい、彼らが頂上についた頃には夕日が傾いていた。


「遅い! 二人とも修行不足だ。明日から稽古をつけてやる!」


 ユピが怒鳴るとカムサムはびくっとした。


 とその時、神木で作られたほこらの上から、バサッという羽音がした。



「相変わらず厳しいのう・・・ユピ・・・」

 

 空から降りてきたのは、雷の色をした羽をもつ大鷲だった。


 神の鳥、雷鳥サンダーバードだ。


師匠エルドラさま、ご無沙汰をしております」


 ユピは会釈して言った。


「・・・フム。また強くなったのう。もうお主に勝てる気がせんわ・・・」


 エルドラは雨と雷を司る神である。雨が降るのは雷鳥の力によるものだ。


「フルゴラに雨を降らさないのは・・・何か理由があってのことですか?」


 エルドラの羽がバチッと音を立てわずかに電気が走った。そして電気が集まり何かを形作る。


「これじゃよ・・・」


 それは真二つに折れた金色の錫杖だった。


錫杖ヴァジュラが折れたんじゃ・・・。すぐにでも直したかったんじゃが、あれが心配でのう。ここを離れられなかったんじゃ。お主が来てくれてよかった・・・」


 エルドラの目の先にはひな鳥の姿があった。口をパクパクさせて餌を求めている。


「フルゴラの鍛冶屋にウルヌラという男がおる。そ奴に会ってそれを直してもらってくれんか」


 ユピはうなずいた。


「では、わたしが今すぐ行ってきましょう」


 そう言ってユピが後ろを振り返ると、エルドラは待ったをかけた。


「待てユピ。話を最後まで聞けい。・・・その男は勝負好きの変わった奴でな。お主じゃ絶対に奴に勝てん。理由があるんじゃ」


 ユピが不機嫌そうな顔をする。エルドラはくるりとフェンの方を見た。フェンが自分に指を差す。


「お嬢さん。ユピと一緒に行ってくれんか」


 フェンはユピの様子を見て肩をすくめた。そして小さい声で「ハイ」と言った。フェンの返事を聞いたエルドラは、次にカエデをじっと見つめて、話しを続けた。


「召喚士・・・。お主と賢者はここに残れ」


 カエデはフェンと同じように自分を指差した。カムサムも真似をする。


「お主に聞く。召喚に必要なものとは何だ?」


「・・・? もちろん契約です。お互いの同意があればその場ですぐに成立します」


「他には?」


「い、いや。特には無いです・・・」


 エルドラはため息をついた。


「師匠がおらんのか・・・。まあいい。それはブックだ」


 フェンがポンと手をたたいた。カエデも口を開けている。


「お主のブックを出してみよ」


 カエデは手のひらを空に向けた。すると霧が立ち込めブックがあらわれた。


「フェンリルにバハムート、ケット・シーか・・・その若さでたいしたもんじゃ。だがお主、フェンリルとバハムートに限っては、もうすぐ召喚できなくなるぞい」


「え? どういうことですか!? それは、こ、困ります!」


「まあ、二匹とも最強これだけの種じゃ。こ奴らが成長して召喚士の器が追いつかなければ当然召喚は無理じゃろう? だが、お主は大器じゃ。わしが少し鍛えてやればそこは問題ない」


 カエデは黙っている。


「問題はブックじゃ。これは初期のもんじゃな。何の装飾もしておらん」


 エルドラは続けた。


錫杖ヴァジュラが元に戻れば、わしがブックに装飾してやろう。わしは雨と雷を司る神じゃ。水と雷の属性をもつ種であれば、本来の力を十分に発揮できよう」


(装飾・・・。知らなかった・・・)


 カエデは今までブックを強化できるなど思ってもみなかった。魔王討伐の冒険を進めるにあたって、カエデの戦闘力アップにつながる『装飾』は必須だ。


「エルドラ様、よろしくお願いします」


 カエデが頭を下げると、エルドラはニコッとしてうなずいた。


 こうして一度ひとたび、フェン一行はカエデとカムサム、フェンとユピの2チームに分かれ行動することになった。フェンとユピが錫杖ヴァジュラを直しにフルグラに行っている間、カエデはカムサムとともにエルドラに修行をつけてもらうことになったのだ。


最後までみていただいて本当にありがとうございました。


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これからも頑張りますので応援していただけると幸いです。


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