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手繋ぎサンタ  作者: 幻中六花
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手繋ぎサンタのゆく末に

 とはいえ、三之助ももう91歳。人間である以上、必ず死は訪れる。

「なんだか、私達の人生は、長ぁい坂道みたいでしたねぇ」

「そうだなぁ。もう少し、頂上まではありそうだけれども、これからも2人でゆっくり、手を繋いで上って行こう」

「そうですね」


 縁側に座ったまま差し出された三之助の左手は、シワシワで震えていた。

 その手を握り返すタツの右手は、水仕事を長年やってきた功労のシワで満たされ、その手を愛おしそうに撫でる三之助が、タツもまた愛おしいと思った。


「これからの坂道には石や空き缶が転がっているかもわからない。私達は年寄りだから、小さな石で転んで、喧嘩をするかもしれない。だから、喧嘩のもとはそうなる前に、排除しながら進みたいものだなぁ」

「そうですねぇ」


 ほうじ茶をすすり、風の音が聞こえる長閑な空間。


「三之助さん、そういえば……」

 タツが(おもむろ)になにかを言いかけた。


「あ。その先を当てて見せようか」

「何ですか?」

 2人はよく、このような遊びをする。


「今の時代は空き缶など、転がっているのをなかなか見かけませんねぇ、と言おうとしただろう」

「ふふふ、大正解です」


 今の時代は、ジュースはほとんどがペットボトルになり、あの頃に比べてプラスチックゴミが信じられないほど、増えた。

 海岸も汚染され、海亀がゴミに絡まって海に入れずに命を落とすこともあるという。


 道端に落ちている空き缶はどれもお酒の缶で、それよりもタバコの吸い殻の方が目立つ。

 近所のボランティアや小学生がゴミ拾いをしている場面に遭遇すると、『手繋ぎサンタさん』と呼ばれるようになった。三之助のサンと、タツのタを取って、『サンタ』だそうだ。


「いつもゴミ拾いをやってくれて、ありがとうねぇ」

 タツがそう言うと、

「地球と動物のためです!」

なんて答えが返ってきたりする。

 このような子供達で地球が溢れたらいいのになぁ、と、手繋ぎサンタさんは思うのであった。



『手繋ぎサンタ』

──完──

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