拡大する合法詐欺と老人食いビジネス、話の通じない年寄りに疲れた日
(* ̄∇ ̄)ノ 奇才ノマが極論を述べる。
( ̄▽ ̄;) 今回は愚痴になってしまいますが、広まる合法詐欺の警鐘として。
今の若者にはハングリー精神が足りない、と言う年輩の人がいる。
これを言うのはハングリー精神を持ってガツガツ働くことが美徳、という時代を過ごして来た人達に多いようだ。
昔から、『最近の若者は』というお年寄りが絶えた試しは無い。
■ハングリー精神
ハングリー精神とは、物事を強く欲する気持ち、精神的に飢えている心の状態などのことを言う。
ハングリー精神は、成功や勝利を強く欲する気持ちに繋がり、スポーツやベンチャー企業などでは、この言葉を好んで使う人が多くなる。
ハングリー精神の根底にあるのは、まだ満たされていないという現状への不満から発生する。
現代の若者はハングリー精神がないと言われることもあるが、そのハングリー精神で努力する若者の業界が、今は活発になっている。
■老人食い
『老人喰い―高齢者を狙う詐欺の正体』
著者 鈴木大介
近年において進化拡大する老人を狙う詐欺の手口や実態、また、そんな犯罪に手を染めていく若者たちを取り巻く環境や心理を描いたもので、この『老人喰い』が原案としてドラマにもなった。
『金を抱え込んだ高齢者から小銭を奪うのは最悪の犯罪じゃない』
『4本(4000万円)残して捕まる分には、俺は勝ちだと思ってます』
『自宅に何億円か持ってるのが分かる老人がいるなら、俺らは殺して家燃やしてでもそれ取るでしょうね』
高齢者を狙う特殊詐欺、そこで働く者はハングリー精神に溢れ、優秀で、異常なほどに高いモチベーションの持ち主。時代の閉塞感に抗う、人間的な情熱を過剰に抱えすぎた者。
年寄りが抱え込んだ金を社会に還元する、現代に甦ったネズミ小僧と、社会正義の為に働いた、と言う者もいる。
多額の金を稼ぎながら、そのほとんどを実家に送金する真面目な者もいる。
■合法の詐欺
近年増加するのは合法詐欺。法律に反しないように働く、犯罪として取り締まれない合法の詐欺。
催眠商法、求人広告の自動更新、詐欺まがいでありながら限りなくグレーであり、交渉ごとに不馴れな人をターゲットにして様々な手法が開発されている。
■SF商法
催眠商法は、『新製品普及会』という業者が始めて行ったため、その頭文字をとってSF商法とも呼ばれる。
公民館や仮設テント等で商品説明会や安売りセールを名目に人を集め、初めのうちは欲しい人に手を上げさせ日用品や食料品を無料で配る。
『もらわないと損だ』という心理にさせ熱狂的な雰囲気に盛り上げ、一種の催眠状態を作り出した後、高額な商品を買わせる商法。
高齢者からの相談が圧倒的に多いのも特徴のひとつ。
私はこのSF商法に嵌まった知り合いと話をすることになった。説得の手伝いを頼まれた。
この問題の人物は年輩の女性なのだが、この人はSF商法に賛成する高齢者という、変わった人だった。
「私が私のお金をどう使おうと、私の自由じゃない」
無料でお菓子やトイレットペーパーを配るSF商法に、知り合いや友人を連れて行こうとするこの女性。彼女の言うSF商法の魅力と存在意義には、なかなかおもしろい発見があった。それ以上に疲れたが。
「(私の)子供が私になにかしてくれるわけじゃない。だけど、あそこに行けばタダでいろんなものをくれるのよ。それに若い人が私にチヤホヤしてくれる」
若い男性に優しくされて話をし、タダでいろんなものをもらう。その空間が居心地が良いらしい。そのために後で高額商品を買うのも商売のひとつ、だと彼女は言う。
ある意味で高齢者向けのホストクラブとしてSF商法を利用しているようだ。
「私がお金を払うことであの人達はお金を稼ぐし、私はいい気分になれる。ウィンウィンの関係で、あの人達は詐欺じゃない」
本人に騙された、という自覚が無ければ詐欺にはならない。相場よりも随分と高い買い物をしているだけで、ある意味で、これはデフレ脱却の糸口とも言える。
「頑張って働いてる若い人達を詐欺呼ばわりして、そっちの方がどうかしている。たとえ私が騙されていても、それで出すのは私のお金。誰にも迷惑かけて無いわ」
本人が持つ金を本人がどう使うかは自由。ここには騙されることも自由のひとつ、とも言える本人の自己責任論があるだろうか。
「あそこに行けばいろんな人に会える。新しい人の繋がりができる出会いがある。それを寂しい年寄りの楽しみを邪魔するの? 詐欺だからそこに行くな、なんて言われても。じゃあ、年寄りはひとりで家に居て外に出るな、とでも言うの?」
もっと健全なもの、カラオケ教室でもフラダンス教室でも行ってみてはどうか、と思うが。
どうやら一度、SF商法の若い男性に優しくされて、それが憩いとなり手放したくないらしい。
「それに騙されたからってなんだというの? 誰にも迷惑かけて無い。騙されてお金を無駄にするって言うけれど、人はそうして騙されて高い授業料を払って、学ぶことで、人生は豊かになるのよ」
独特な人生感を聞かされた。騙されてもいい、それが若い人達の為になれば、とも彼女は主張した。
「それにあの人達も生活するために必死で働いているのよ。世の中はお金を払う人とお金を受けとる人で成り立つの。清濁合わせ飲むってのはそういうことなの」
彼女が言うには、騙して奪う人と騙されて奪われる人がいるから、経済は回り社会は成り立つのだと言う。失笑するしか無いが、ある一面から見れば正論だろうか。
「騙されるかもしれないからって引きこもっても寂しいだけ。私みたいに騙されてもいいって言うのが、豊かな人生を送れるのよ。騙されてもかまわないって思うから、私は誰とでも仲良くお付き合いできるし、楽しい老後を過ごしているわ」
何やら独特な哲学のように思える。
知り合いに彼女の説得を頼まれたのだが、いろいろ言ってはみたものの逆に意固地となってしまった。
年寄りの頭の硬さを痛感した。
しかし、一方で高齢者の中にはSF商法を歓迎する変わり者もいるということを知った。
次代を担う若者の為ならお金を払ってもいい、というのは美談にも聞こえるが。
彼女はそれが合法詐欺の拡大に繋がってもいいらしい。まるでカルトにでも騙されたように、そこに知人を連れて行くことを、いいことをしていると本人は考えているようだ。寂しい年寄りを楽しませて、タダでお菓子とトイレットペーパーがもらえると。
まるで違法で無ければ高齢者を騙すのもビジネスの内だと。この言葉を高齢者から聞くことになるとは思わなかった。
■金を稼ぐ方法
短期的に金を稼ぐには、騙す、奪う、盗む、といった手段が効果的となる。これが長期的に見れば社会治安を悪化させるので、法律で縛り違法な物は犯罪として取り締まる。
合法詐欺は、この騙す手法をなんとか法律の中に落とし込むことで、犯罪としては取り締まれない。
売買は両者が納得すれば、合法となる。
そのために判断力が怪しい痴呆老人や知能障害者にハンコを押させることで、合法化とする。高齢化社会で老人が増えると、ターゲットとされる客が増えることになる。
■老人食いビジネスに乗り出す銀行
理想の銀行の仕事とは、技術はあるが経営が苦しい人、新しいアイデアがあっても起業の仕方がわからない人をサポートすること。
新たなビジネスが誕生し、利益が生まれたときに銀行も利益を得られるようになること。
しかし、銀行の現状は本業(貸し出しや手数料)で赤字になっている地域金融機関は4割、これが2025年度にはさらに増えて、6割超で本業が赤字になるという予測がある。
信金や地銀など中小金融機関は人口減少で、融資や手数料収入は増えない。金利の低下で利ざやも減り、新しいサービスを始める地力すら無い。
これからの銀行は顧客から手数料を搾り取ることで生き残りを図ろうとしている。
銀行は投資信託や保険を売る『手数料ビジネス』に切り替えているが、これもなかなか売れない。
そこで商品内容を理解していない老人に、リスクの高い商品を強引に買わせるやり方が増えている。
手数料が高く損をする商品は、正常な判断力を持っている客には売れない。ならば、正常な判断力が衰えた客に売る。
これは違法にならず、老人食いビジネスは銀行からも始まっている。銀行が率先して行うことで、老人食いビジネスは市場として確立されてきている。
■フェイクニュース
マケドニア・ヴェレス。フェイクニュース工場の異名を持つ町。
平均月収約5万円とされる町で、ネットに強い若者がフェイクニュースを作る。
上手くいけばフェイクニュースを作ることで、月に50万円、60万円と稼げるとなる。
ネットに詳しい若者があっさりと親の年収を越える稼ぎを出せてしまう。コンピューターに弱い親はフェイクニュースを作る我が子を応援する。
そうしてフェイクニュースを作る人が増えてひとつの産業となった町。
■高齢化先進国、日本
日本は形は違えど、このマケドニアのヴェレスのようになるのかもしれない。
以前に私は、とある引きこもりの子供に悩むひとりの親の愚痴を聞いたことがある。
『いつまでも親の金で暮らしてないで、働いてほしい。空き巣でも万引きでもいいからちゃんと働いて、ひとりで生きていけるようになって欲しい』
かなり追い込まれていたようだが、引きこもりから脱却するのに、子供に捕まらない犯罪者になって欲しい、という切実な親の願いだった。空き巣をちゃんと働く仕事と言うのが、なんとも言えない。
だが、ハングリー精神を持て、という世代から見れば、引きこもりよりも空き巣や万引きといった犯罪者の方が、犯罪という行為で社会と関われる。
社会と無縁となる引きこもりよりは犯罪者の方が社会に関わるだけマシ、という年輩の方が意外といる。
犯罪者となるよりは引きこもりの方がマシ、という世代とは公益の為の市民道徳というものが、世代間で違うようだ。
前述のSF商法を良しとする年輩の女性もそうだが、合法詐欺や老人食いビジネスを応援しよう、という高齢者に会ったのは私には驚きだった。特殊詐欺がなかなか減らないのもこういう人達がいるからかもしれない。
日本は高齢化社会の先進国であり、今後さらに、老人食いビジネスの市場が拡大すると思われる。年を取り高齢化から判断力が鈍る老人をターゲットにする老人食いビジネス。
資産を持つ高齢者が増える程にそれは都合のいい客が増えることになる。
格差は増大し若者の貧困が問題となり、結果的にハングリー精神を持つ者が増えてくるだろう。
そこで年寄りを騙しても違法にはならずに稼げる、という風潮が広まれば、日本もマケドニアのヴェレスのようになるのではないだろうか。
老人食いビジネスの国、日本として。
「この世から詐欺が無くなることは無いし、騙す人がいて、騙される人がいて、それで昔から人の世は回ってきてるの。騙してもお金が欲しいって人がいるなら好きにさせたらいいじゃない。どうせあの世にお金は持っていけないんだから」
だからと言って合法詐欺を肯定し、その活動を応援することに、どう思うのか、私は彼女に聞いてみた。
「私は楽しんでやっているし、私は悪くない」
誰が何を言おうとも、彼女はSF商法通いはやめる気は無いらしい。公的な倫理観といった話もしてみたが、理解はされなかった。何より彼女のしていることは違法には当たらない。
人は騙されるのが当たり前だ、という信念があるようで、騙すことも騙されることも悪では無いのだという。
こうした高齢者が詐欺の増加の一助となっているのだろうか。
謎理論に付き合わされ時間を無駄に費やし、更にはこの年配の女性がSF商法に知人を連れていくという、やる気が加熱してしまった。
本人は人が騙されることも人生に必要な幸せなこと、という持論を信じ、自らも損をしながら知り合いを呼び犠牲者を増やしている。
これを書いている今、私はかなりの徒労感に苛まれている。相手がちょっとボケかけているのかもしれないが、話の通じなかった相手との会話というのは疲れる。
もしや私が知らないだけで、騙されてもいいというお年寄りは意外に多いのだろうか? それが老人食いビジネスを助長しているのだろうか?
高齢化社会の先進国、日本は老人食いビジネスにおいても先進国となり、高齢者を狙う合法詐欺は増加している。
法律の整備は遅れ、限りなくグレーなビジネスの市場が拡大している。
日本は貯金を持つ高齢者がいなくなるまで、老人食いビジネスの国、となってしまうのかもしれない。そんな嫌な未来を想像した。
社会は悪徳に利するものでは無く、罰するもの。公益の為に犠牲を分かち合う道徳心を尊重することが、社会の理想。
しかし衣食満ち足りて礼節を知る、と言うように貧困から産まれるハングリー精神は、あらゆる手段でもって利益を上げることを喜ぶ。
誰もが少ない収入よりも多い収入を選ぶとなれば、合法の内であり犯罪とならない合法詐欺は、これからも増えていくのだろう。
2019年の振り込め詐欺など特殊詐欺の被害額は301億5000万円(前年比21・3%減)。
減少は5年連続。認知件数も1万6836件(5・6%減)で2年連続の減少だった。
被害額は8年連続で300億円を超えており、警察庁は『依然として深刻な情勢』としている。
これは警察が取り締まりに力を入れたこともあるが、特殊詐欺が合法詐欺に進歩し、犯罪とならないものが増えたからではないだろうか?
増加する合法詐欺に気をつけて。