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第7話 魔法 使おうぜ







「『ファイアショット』!!」



 翠が声を上げると、大きな火球が放たれ、10メートルほど先の丸太で作られた的を一瞬で粉々にしてしまった。



「おお! 流石は勇者様!!」

「たったこれだけの時間で中級魔法をマスターするなんて!!」

「これなら『固有魔法』もすぐに覚えられますぞ!!」



 その様子を見て、周囲の神官達も大騒ぎしている。



「いーなー、あっちは楽しそうで」

「ま、まあ。こちらはこちらで頑張って練習しましょう? 桃吾様」



 俺が愚痴をこぼすと、隣の女性神官が そう言って励ましてきた。

 彼女の名前はイユ・トラヴィオルさん。

 俺に魔法を教えてくれることになった神官さんである。

 教えてくれることになったというか、他の連中が翠の方に行ったというか。


 なので、イユさんが仕方なく俺に魔法を教えてくれることになってしまったのだ。そりゃ皆 付き添いの俺よりも、勇者の修行が見てえよな。



 イユさんは、艶やかなブロンドを三つ編みにして肩から前に垂らしている、糸目の美人なお姉さんだ。

 眉毛が ちょっと太めなのがチャーミングである。

 異世界の女性としてどうかは知らないが、現代日本人の感覚では背の高い女性で、軽く170センチくらいあるだろう。

 神官の服装は露出度はかなり少なく、手袋もつけているのだが、タイトなデザインなのでボディラインがハッキリ出る。そのため、むしろ彼女の美しいボディラインが強調される。

 ――こう考えるとスケベ親父っぽいな。

 こういうのはイユさんにも失礼だから考えるのはよそう。

 というか、異世界に来て最初に出会った異世界っぽい名前の人だな、イユさん。


 ちなみに大臣のナンカは、ここでは仕事を神官に任せて王のところに戻り、神官の老人は「新たな精霊との出会いを記録しなくては!」と何処かに駆けていった。

 さっきイユさんに聞いたが、あの老人は精霊について調べるのが趣味らしい。

 まあ確かに そんな雰囲気ではあったな。



「はー、でも俺は才能ないしなぁ。せめて固有魔法をさっさと覚えられるといいんスけど」

「そうなんですけどね。ただ、普通の魔法を覚えてからでないと固有魔法は難しいんですよ。感覚をつかまないといけないので」



 彼女の言葉に、俺はうーんと唸る。





 固有魔法。




 俺たちがさっきから口にしているのは、一人一人オリジナルの魔法のことだ。

 この世界では、誰にも精霊が付く。

 そして自分の加護精霊の能力を元に、オリジナルの魔法を作れるそうなのだ。

 ただ、オリジナルの魔法というのは やはり作るのが難しい。


 加護精霊が炎系だからと言って、普通に炎を出すだけならわざわざ固有魔法にしなくても、普通の炎属性魔法として使用できる。

 今の翠のファイアショットとかみたいなもんだな。

 オリジナルで作らなくても、既に誰かが作って体系化した魔法があるなら それを習得したほうが早いのだ。


 そのため、例えば『熱を与える』魔法にしたり、あるいは『特定のものだけ燃やす』魔法にしたりするらしい。

 ただ幾らオリジナルと言っても多少は被るんじゃないか? とイユさんに聞いたところ。



「固有魔法はイメージ通りのものになるわけではありません。先天的要因、後天的要因、その人の潜在的な嗜好など様々な影響を受けて作られるので。なので、イメージはあくまで方向性を定めるくらいのもので、固有魔法がどんなものになるかは修行して完成するまでは本人にも分かりません。ですので、他人と被るということはまずないですね。あと、みんながみんな固有魔法を習得するわけでもないんです。習得するのも普通は数年かかるので、結構な確率でみんな途中で投げちゃうんです」



 とのことだった。

 ちなみに加護精霊に多いのは、炎や水、大地に風と言った自然属性、次いで雷や氷に溶岩と言った派生自然属性、他は治癒であったり空間系であったりがいろいろだそうだ。

 翠の鋼鉄の精霊も、普通は下位互換の『鉄の精霊』が加護に付くことが多いらしく、翠以外の鋼鉄の精霊の加護持ちはマジで伝説の勇者クラスだけらしい。



「普通の魔法の才能がないなら、ネタでも良いから固有魔法で遊びたいなぁ」

「だ、大丈夫ですよ! きっと成長しますよ! 一緒に頑張りましょう、桃吾さん!!」



 イユさんが頑張ってほめてくれるが、額の冷や汗を隠しきれていない。

 まあ固有魔法を覚えたところで、ヌルヌルの精霊の加護って何すりゃいいんだろうな。

 スライムでも作って遊ぶか?

 はー、異世界マジでクソ。


 そんなことを考えながら魔法の修行をしているうちに、今日の修行時間が終わった。

 翠は、今日一日の、しかも2時間程度の修行で中級炎魔法と中級地魔法、更に初級身体強化魔法まで覚えたらしい。

 つよつよじゃん。

 普通は2年くらいかかるそうだ。

 チートじゃん。


 ちなみに俺は指先から水を出す程度の初級水魔法を覚えた。

 成人男性なら2時間くらいで覚えるそうだ。

 平均じゃん。

 つかえねー。

 何? 指先から水って? 

 チ〇コの先なら修行せずに出るっつーの。

 いっそ落第レベルならどっかのタイミングで逆転! みたいな展開がありそうなのに、平均って一番おもんないな。


 仕方ない。

 俺は異世界では弟のスネを齧って生きることを決めた。




今話が最新話である場合、下部に評価欄があると思います。

もし、本作品を読んで面白いと思って頂けたなら、ぜひ評価ポイントを入れていただければと思います。

差し出がましいこととは思いますが、作者のやる気に繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

なにとぞ~~~なにとぞ~~~!!!!!

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