第66話 ダイヤ王子とちょっとだけ仲良くなったよ!
エルフ千年王国に来て数日たったが、今日も今日とて挨拶回りである。
「まあ、貴方が新しい勇者様ですか! お話は聞いていますよ!!」
良く知らないエルフの貴族を相手に翠はにこやかに応対している。
面倒くせえことやってんな。
ただ日当はかなりの額が出るらしく、翠は時間の合間を見つけてウキウキで服を買ったりアクセサリーを集めたり、可愛いぬいぐるみを集めたりして遊んでいるほか、たまに俺にお小遣いをくれる。
……え? 弟に小遣い貰って恥ずかしくないかだって?
いや全く。
そもそも俺だって翠に付き合ってあげているんだから、俺にも給与が生じてしかるべきなのだ。
しかし、あっちこっちでへーこらへーこら頭を下げて、異世界に来ても社会的地位が上がっても、俺たちは結局こういうしがらみからは逃れられないんだなあ。
ただ、逆に言えば今はこういうことをするだけで美味いものが毎日食えるので、普通に日本で働いていたよりはマシだが。
……というか、実質的に何かしているのは翠で俺は後ろで何かそれっぽい顔をしながら頷いているだけだが。
何かアイドルファンにおける後方彼氏面っぽさあるな、この説明だと。
いわゆる「うんうん、お前が売れてくれて俺も鼻が高いよ」とか勝手に思ってる一般人みたいな感じだ。
そういうわけで、まあ俺は別に仕事してると言うよりも何か付き添っているというだけなのだが、しかしまあ当然のことながら、前に立たされる翠の方は。
「ちょーめんどいです」
疲れた顔をしていた。
今はやっと休憩の時間が取れたので、お茶を飲んでお菓子を食べてダラダラしている。
俺はソファに座り、翠がソファに寝転がって俺の太ももの上に頭を乗せて休み、同じく挨拶回りに来ているダイヤは一人掛けの椅子に身体を沈めている。
「お疲れ、翠。いや~変わってやれるもんなら変わってあげたいけどねえ」
「な~にを言ってるんですか、お兄ちゃん。お兄ちゃんがバレないようこっそり変顔してたの、私 気付いてたんですからね」
やっべ、バレてた。
流石は我が弟。
「イユさんがいないとツッコミ役が少ないですからね。困ったものです」
「仕方ないだろ、イユさんは見た目で悪目立ちしかねないし、それであの人が困るのは良くない。……あとなーんかやってるみたいなんだよな、あの人。シャネリアス長官絡みかは知らんけど」
イユさんとは現在 別行動中だ。
何をしているのかは聞けていないのでイマイチよくわからん。
と、そこでダイヤが口を挟んでくる。
「そんなことをしていたのかい、君は? 本当にくだらないことしかしないね」
「良いじゃん。下らねえことを楽しまない人生に意味はないんだぞ、若き王子よ。そもそも人生に意味なんて無いんだしな」
「君に人生を説かれる筋合いはないね」
「か~~~。何を『ボクはクールキャラですけど?』みたいな顔してんだお前。フリフリのドレスとか着せちゃうぞ」
「う、五月蠅い!! その話はするな!!」
「いいじゃん、俺ら以外ここにはいないし」
いま、この休憩室には俺達3人だけだ。
挨拶回りにはスゴクも付いていたのだが、別の仕事もあるとかでどこかに行ってしまった。
なので彼が戻ってくるまでの暫くの間は俺達だけでダラダラしていればいい。
執事たちは隣のスタッフ用の待機室に控えており、俺達がベルを鳴らすとすぐに駆け付けて応えてくれる。
貴族ってスゲー快適な生活してんな。
「た、確かにスゴクはここにはいないが、……その、恥ずかしいだろう」
「そうですよ、お兄ちゃん! 他人の趣味を揶揄するのは品がないですよ! あとフリフリのドレスも悪くはないですが、ダイヤ君にはガーリー感を出しつつゴテゴテしてないくらいのファッションが一番だと思いますよ、私は!」
「それは確かにそうだな、すまん」
「何の話をしているんだい!?」
「何って、今日のコーデの話に決まってるじゃないですかぁ」
「うっ……。今日もするのかい?」
「逆に訊くんですけど、『しない』って発想があります?」
「いやあるだろう!! 何で毎日毎日ファッションショーの真似事をしないといけないんだ!!」
「え? 楽しいからですけど? っていうか、ダイヤ王子だって満更じゃないんでしょ?」
「い、いやボクは別に……。そんなことは……」
「え~? じゃあ何で目を逸らすんですかぁ? 本当は楽しんでるんじゃないんですかぁ?」
「う、うるさいバーーーカ!!」
「王子、あんまでっけー声だすと隣の執事さん達に聞こえますよ」
「わかっているよ!! フン!!」
そういって、ダイヤ王子は耳を赤くしてプイっと顔を逸らした。
「やあ皆さん! お待たせしました! そろそろ次のところに挨拶に伺っても構いませんか?」
と、そこで部屋をノックして入ってきたスゴクを見ると、ダイヤは。
「問題ない!」
そう言ってツカツカと歩いて部屋の外に出ていった。
「……あのう、ひょっとしてダイヤがまた何か粗相でも?」
そんな彼の様子を見て、心配げにスゴクがそう言ってくるが、俺たちは笑みとともに答えた。
「いいえ、仲良くなってただけっスよ」
「スゴクさんは心配しなくて大丈夫ですよ! 私、けっこうダイヤ君と仲良くなりましたから!」
「は、はあ。それなら良いのですが……」
スゴクは何が何やらよく分からない、と言った調子だったが、まあダイヤ王子の秘密を俺達がペラペラ話すわけにもいかない。
あとは今晩のお楽しみだな。
……っていうと淫らな雰囲気があるが、当然そういうことはなく着せ替えっこして遊ぶだけなのだが。




