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第6話 ヌルヌルの才能





 ハゲで太って小汚い感じで全身がヌルヌルしたオッサンは、偉そうな態度でこんなことを言った。



『は~最近の若い連中はワシのことも知らんのか』

「いや、若い連中て。このジジイも驚いた顔してんの見えてねえの?」

「お前ナチュラルにジジイって言うんじゃないわ!!」

「あっ、メンゴ」



 流れで神官の老人をジジイって呼んでしまった。



「いや、しかし……長くこの仕事をしてきた私もヌルヌルの精霊の精霊というのは初めて聞いたのですが」

『そうかね。まあ仕方あるまい。ワシが現世に顕現したのは今回が初めてだからな。フォッフォッフォ!』

「このデブ、腹立つな。バルタ〇星人みたいな笑い方しやがって」



 何だコイツ、よく分からんがヌルヌルの精霊とか絶対外れだろう。

 だが、神官の老人の反応は違った。



「今回が初めて……? まさか! そんなことが! つまり、貴方は現世に顕現した新たな精霊と言うことなのですか!?」

『そうなるな』

「おお!! これは素晴らしい!!」

「……なんかテンション高いけど、それってそんなにすごいんですか?」

「当たり前だ! 新たな精霊の顕現など、軽く一世紀ぶりだぞ!!」

「マジで!! すげえじゃん!!」

「「「「おおおおおおおお!!」」」」



 神官の老人の言葉に、周囲もざわつくが、翠だけ「完全にモブおじさんじゃないですか」などと言っている。

 はい、そこ静かにして。



「……で、なんでヌルヌルの精霊は俺の精霊になってくれたの?」

『フン、決まっておる。お前にヌルヌルの才能があったからだ!』

「イヤねえよ!! そんな才能!!」



 つうかヌルヌルの才能って何!?



『忘れているだけであろう。何かあろう、ヌルヌルにまつわる才能が』

「あってたまるかそんなもん!!」

「お兄ちゃん、何かそんなことありましたっけ? 私も知りませんよ」

「ああ、だよな。…………いや、一個だけあったわ」



 翠と話していると、思い出してしまった。

 ……あー。そういやあったわ、ヌルヌルに関する記憶。



「えっ? 何ですか?」

「……学生時代に悪友に誘われてな、一回だけローション相撲したことあったんだけど、俺マジで尋常じゃないくらいにローション相撲 強くて全員ボッコボコにしたことあったわ」

『それじゃな、お主の才能』

「嫌だぁああああああああああ何で異世界に来てからローション相撲の才能に気付かないといけないんだ!!」



 意味わかんねえよ!!



「えっ? マジですか? お兄ちゃんって学生時代までは真面目でしたよね? そんなことしてたんですか?」

「だから悪友に誘われたんだって。そいつにどうしてもって頼まれたの!」

『ふふん! ワシはな、待っておったのだ!! ヌルヌルの才能を持つ、お主のような男をな!!』

「いやマジで勘弁しろよ!! 魔王相手にローション相撲で戦えってのか!?」

「うむ。ヌルヌルの才能をどう使うかは お主次第じゃ。ローション相撲で魔王と戦うもよし、ソープランドのボーイとして働くもよし」

「何も良くねえよ!! ロクな選択肢ねーじゃねーか!! 頭いかれてんのか!?」



 異世界ほぼ関係ねーだろ!!

 何で異世界に来てまで異世界のソープランドで働くの!?

 馬鹿すぎるだろ!!



『ま、じゃあ そういうワケでな。ヌルヌルの才能で世界を変えるのだ!!』

「どういうワケだよハゲ!! つうかヌルヌルの才能で変わる世界って何? 風俗業界でも変えろってか!?」



『――加護を』


 そう言ってヌルヌルの精霊は俺に人差し指を向けた。

 指を向けんな、へし折るぞデブ。

 などと考えていると、俺の身体が淡いピンクの光に包まれた。



『それじゃあ、達者でな~』



 そう言ってヌルヌルの精霊が消えるとともに、俺の光も消えた。

 これは俺の外見も変化しているのか? と思って噴水の水面を覗くと、瞳がピンク色の混じったような色になり、髪は一部だけピンク色になっている。

 ピンクか、ちょっと派手だが これくらいなら良いだろうか。

 もしも髪の毛が全体的にピンク色になっていたらト〇コのト〇ー・ロッドみたいになってたところだな。ほら、あの口から虫とか出してくるヤバいグルメの人。


 そんなこと考えながら、他の連中は何をしているのか見てみると。



「うおおおおおお!! 新たな精霊の顕現に立ち会ったぞワシはー!!」

「えっ? 結局ヌルヌルの精霊って何よ?」

「わっかんねえ。俺に聞くなって」

「これどうやって記録すんの?」

「うーむ、我が王に何と報告しましょうか?」

「終わりました? じゃあ早速 魔法の練習をしましょうよ!!」


 神官の老人は一人で はしゃぎ、助手の神官達は困惑し、大臣のナンカは首をかしげ、翠は相変わらずマイペースだった。

 ……なんというか、俺はどうしたら良いんだ。












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