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弟チートで兄ニート!! ~異世界に来たくらいで働くなんて甘え~  作者: 水道代12万円の人
第二章 ヒューマン英雄王国・ベイリーズ激戦
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第52話 目覚めと新たな出会い①






 目が覚めると、俺は病院のベッドの上にいるらしかった。

 ベッドは窓際に置かれていて、温かい日差しが差し込み、軽く開けられた窓の隙間を通ってきた そよ風がカーテンを揺らしている。

 腹の辺りが重くて視線を向けてみると、椅子に座った翠が前のめりになって俺の腹の上に頭を乗せて、寝息を立てていた。

 俺は上体を起こそうと、腹筋に力を入れて身体を持ち上げつつ、右手をついて身体を支えて――。



「いってえ!!」



 右脇腹に走った痛みに苦悶の声を上げた。

 ……あー、クソ。

 エコーの野郎が俺の脇腹をへし折ってくれたんだったな。

 死ねアイツ。

 ケツからハリガネムシが出てくるところを見て『おいおい斬新なアナニーだなぁギャハハ!!』とか言ってやりたい。



「……お兄ちゃん?」



 俺の声を聞いて、翠が目を覚ました様子だった。

 ぼんやりした様子の彼女と目が合う。



「おお、おはよう。奇遇だね、こんなところで会うなんて」


 

 そんな冗談めいたことをいう俺に対し、しばし翠は呆然としていたが。



「お兄ちゃぁあああああああああん!!!!」



 そう叫んで俺の胸元に飛び込んで、頭を押し付けてきた。



「おいおい、落ち着けって。我、怪我人ぞ?」

「何ふざけたこと言ってるんですか!? お兄ちゃん3日も目を覚まさなかったんですよ!?」

「マジ!? 3日も寝たきり!? うっそ絶対に筋肉落ちてんじゃん!! 勘弁しろよマジで~~~!!」

「この状況で何をふざけたこと言ってるんですか!! 心配したんですよ!!」




 そう言って俺を見上げる翠の目からは、大粒の涙が()()()()と零れていた。

 ああ、そういえば、この子は俺の隣で寝ていた。

 寝にくそうな姿勢でさあ。

 ……そうなるまで、この子はどれだけ俺の傍にいてくれたんだろう。

 


「ごめん。……ごめん、翠。マジでごめん。心配かけたよな、頼りない兄ちゃんでごめんな」

「……今度からは、何かあればまず私に相談するんですよ?」

「ああ、約束する。ごめんな、隠し事してて」

「異世界に行ってもどこに行っても、私のお兄ちゃんはお兄ちゃんしかいないんですからね。分かってるんですか?」

「ああ、そうだな。痛感したよ。……これからはもっと本格的に何もせずにひたすら翠のスネを齧っていくからね」

「なんで そうやってすぐにパラメータ極振りするんですか!! もっとグレーゾーンを有効活用していきましょうよ!!」

「なーんだ、とうとうニートとして生きる許可を貰ったかと思ったのに。ハハハッ!」 


 

 そう言って、俺は笑った。

 翠は少しだけ不満そうにムスッとした様子だったが、やがて小さく微笑んで、また俺の胸元に頭を預けてきた。

 俺も翠の髪に頭を埋めて、彼の匂いを感じる。

 ああ、本当に可愛い弟だ。

 柔らかくて、太陽のような心地いい匂いがする。

 本当に、本当に可愛いよ翠。

 こんなに可愛い……翠……。



「弟でさえ……実の弟でさえなかったら……ハァハァ」

「え? 何ですか?」

「おおっと、何でもないよ」



 あぶねー、この雰囲気で今の発言を聞かれてると危なかったな。


 

「……ところで、イユさんは今どうなってる?」


 

 俺の言葉に、翠の眉根がピクッと動いた。

 すると彼は一度 俺から離れて病室のドアの鍵を閉めてから、部屋の窓も締めて俺のすぐ近くに座りなおした。



「やっぱりその質問ですか。……今回の一件、全部あの人のためだったんですよね?」

「いや全部ではないよ。俺もあの人の風呂の残り湯もらってたからギブアンドテイクの関係だよ」

「ちょっと待ってくださいよ!! 明らかにテイクがおかしいでしょ!! 報酬が風呂の残り湯ってどうなってるんですか!?」

「いや、ほら。コメントの出るタイプの動画サイトでアニメ見てたら、女の子の入浴シーンで『ごくごくごくごく』みたいなコメント入るじゃん? ああいう感じで美人の風呂の残り湯を飲んでみたいなって思って」

「全力投球クレイジーやめてくださいよ!! ツッコミのハードルが上がるでしょ!!」

「へえ、まるで人生みたいだね」

「哲学的な雰囲気のボケもダメ!! ……ハァ、ちょっと真面目な話をしますよ」



 そう言って、翠は一つ咳払いしてから続けた。



「イユさんは、お兄ちゃんの言った通り『お兄ちゃんを庇って呪いを受けた』ことになりました。青一さんが証言してくれたので、かなり信頼度も高かったみたいです。……ただ、やっぱり何か変な感じがします。イユさんは重傷だったからと言う理由で病院の別棟に入れられたことになってるんですが、私も面会できてません。表向きはまだ容体が安定しないから、ということにはなってますけど」

「ふぅん、きな臭いね」



 イユさんは無事だろうか。

 ……何事もないといいが。



「なのでイユさんのことは良く分かってません。それとナンカ大臣が、お兄ちゃんが目を覚ましたら面会に来ると言っていました。私達が来る前のことを訊きたいとか何とか」

「そうか。まあ、そうだろうね」



 何を訊かれるかな。

 まあイユさんのことだろうが。

 やっべーな、俺は嘘つくのあんま上手くないんだよな。

 適当なこと言うのはすぐ思いつくんだけど。


 そんな話をしていると。



 コンコンコン。

 と、部屋のドアが3回ノックされた






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