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弟チートで兄ニート!! ~異世界に来たくらいで働くなんて甘え~  作者: 水道代12万円の人
第二章 ヒューマン英雄王国・ベイリーズ激戦
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第45話 決着②



 しかし俺が困惑していると、イユさんが傷を抑えながら応えてくれた。



「魔力切れ、やな。……緊張感で今まで気づいてなかったみたいやけど、魔力を使い過ぎると身体の機能も低下する。以前に話したやろ? ……大丈夫か?」 



 俺の様子を見てイユさんがそう声をかけてきた。

 そうか……。

 通りで身体が重いわけだ。

 これが魔力切れか。



「……二日酔いで最悪だった日を思い出しましたよ」

「それくらいで済んでよかったな。ただ、……もう魔法は使うな。最悪、マジで死ぬで」

「分かってますよ……ブッ!」



 そう言ってから、口の中の胃酸と唾液を吐き捨てた。

 これが魔力切れか。

 最悪だな。



「あー、クソ! ……しばらくは動けそうにないですね。翠ちゃん達が助けに来てくれるのを待ちましょう」

「ああ、せやな」




 俺は地面に座り込んだまま、俺は冷や汗を拭った。



「しっかし勇者ってマジで凄いんすね、イユさん。アイツら瞬殺ですよ」

「……相性もあるけどな。あの子の固有魔法は高火力の遠距離攻撃特化やから。至近距離でスピード特化の相手とは相性悪いんちゃう?」

「ああ、確かに。そうかもしれないですね」

「ただ今回はそれで助けら――ごほっ!? げほっ!?」



 いきなりイユさんがせき込み、口元抑えた。

 せき込むと彼女の手のひらにベチャッと血がこぼれ出る。



「うっわ!? 大丈夫ですか!? イユさん!?」

「……あんまり大丈夫ちゃうな。腹の中がグチャグチャや。それに魔力も……あと5%くらいしかない。これじゃ変身魔法も使われへんな」



 そう言いながら、彼女は口元の血を拭った。

 まいったな、早く医者に見せないとあぶねえな。


 ……うん?

 ということは、イユさんはこの姿のままってことか?



「えっ!? じゃあヤバくないっすか!? イユさんの本当の姿が俺以外の人に見られるのはマズいでしょ!?」

「ああ……。そのことやねんけど。ウチは……。――残念やけど桃吾、呑気にお喋りしてるわけにはいかへんみたいやで」



 そう言って彼女は顎をしゃくって示した。

 その先には――。



「おいおいマジか。……生きてたのか、カマキリ野郎」



 爆風で吹き飛んだ地面の中から、エコーが姿を現した。

 恐らくだが、攻撃の瞬間に地面に潜ったのだろう。

 彼の近くには、仲間のカブトムシとカナブンの魔族がそれぞれ地面に半分埋まるようにして倒れている。


 前言撤回。

 大人しく死んでてくれてよかったのに。


 ただ何か、様子が違う。


「……お前ら、俺を守ったのか?」



 愕然としたように、エコーは自らの部下にそう訊ねた。



「あんたは……私らの上司……だからね。守……るのは、当然よ」

「だから、お前……だけで……も……逃げろ」

「……すまない。本当にありがとう」



 倒れる2人にエコーがそう答えると、彼らがそのまま目を閉じた。

 死んだのか、気を失っただけかは分からない。



「……だが、助けられたからこそ、このまままじゃ引き下がれねえよ」


 

 エコーはそう言って立ち上がった。

 そこで気付いたのだが、エコーの右下腕と、手の代わりに鎌のついた右上腕が、それぞれ肘の辺りから吹き飛んで無くなっており、傷口から緑色の血液がボタボタと流れているのが見える。

 そのため、奴には左上腕と左下腕しか残っていない。



「おいおい、お前! 腕と鎌ねえじゃん!! もう帰れよ」



 マジかよ。

 勘弁しろよ。

 そう思いながら、俺は疲れ切った身体を立ち上がらせる。



「俺をこんな風にしたのはお前の弟だろうが!! 瀞江桃吾ォ!!」



 何とか時間を稼がなくては。

 翠がここに砲撃してきたということは、この状況が彼には見えているということだ。

 ならばあの子が何とか――。



「がぁああああああ!!!!」



 しかしそこで、エコーはこちらに猛然と突っ込んできた。

 俺の首に、残った左の鎌を振り下ろされる。


 咄嗟にヌルヌルを出して身を守ろうとしたが。




 ――ヌルヌルが出ない。



「うおッ!? マジかよ!!」



 魔力切れの所為か。

 これは思った以上に――マズい!!


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