第42話 闘争②
冷や汗を掻く俺に対し、エコーは上機嫌に言った。
「ははは!! ビビったろ? このハンドベルを入手するのも苦労したんだぜ? ま、これもあの いけすかねえクソ蝶ババアを潰すためだがなァ」
「……クソ蝶ババア?」
「はッ!! お前、魔王軍の幹部連中のことも調べてねえのかよ!! 俺の上司の蝶の魔族で魔王軍の幹部だよッ!! 勇者の兄の癖にモノを知らねえなァ!!」
「だって俺、勇者の兄であって勇者じゃねえもん」
しかし、コイツやけに饒舌だな。
勝利を前に饒舌になるのはどこの世界でも一緒なのか。
「俺はテメエを使って勇者であるテメエの弟をブチのめす。その後に『聖剣』の勇者も殺してやる!! その功績であの蝶女を蹴落として俺が次の魔王軍幹部だ!!!」
野心家カマキリめ。
略して野心家マキリめ。
調子こいたことばっか言ってんじゃねーぞ。
……と言ってやりたいが、しかし今の俺たちは割とマジでピンチだ。
どうすれば良い?
どうすれば、この状況を打破できる?
「ハァ、でもエコーが派手に森を吹っ飛ばした所為で、森に潜伏させたモンスターが幾らか細切れになってしまったわ。モンスターを集めるだけでも一苦労だったのに」
俺がそんなことを考えていると、カナブンの魔族がそんなことを言った。
「うるせえなァ!! これが終われば俺らは昇進だぞ!? そんな下らねえこと気にしてんじゃねえよ!! だいたい、こいつらがカスの癖に調子こくのが悪いんだよ!!」
カナブンの魔族の言葉に、エコーは苛立ったようにそう返した。
その言葉を聞いた俺は、ふと思い出したことがあった。
……行けるか?
可能性は薄いが、この状況を打破できるアイデアが、一つだけ思いついた。
「ああああああ~~~~!! マジ怖え~~~~!! マジで怖えけどよぉ、俺が頑張らないと翠も危ないもんなぁ」
そう言って頭を抱えると、俺は後ろで寝そべったままのイユさんの眼を見た。
「イユさん、すげえ怖いんで。なんかこう、やる気の出ること言ってもらえないッスか?」
「……ハァ。お前、カッコつけるなら最初から最後までカッコつけ通せよ」
「すんません。こういう性格なもんで」
「しょうがないなぁ、お前はホント」
そこで言葉を切ったイユさんは。
「生きて帰れたら――お前の望むプレイ全部やってあげたるわ」
「よっしゃ元気出たァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
上半身も下半身もすっごく元気出ました!!
まだイケるか息子よ!!
当然です お父さん!!
みたいな気分です。
「ああ? 何だァ? 死ぬ前にお祈りでもすんのか? ……まあ、良い。お前らは虫の餌だ。人間の方は、死なない程度にだが――」
そんなことを言うエコーに対し、俺は。
「結局は蟲が最後 仕事すんのかよ。お前の仕事 森を耕しただけじゃん。ハハッ。魔王の副官なんぞ辞めて農家に転職しろよ」
と言って、口角の端を持ち上げて笑った。
「あ? 何だよ、お前?」
「元気な内に煽ってんだよバカ。説明されないと分かんなかったか? 身体はデカいがオツムの出来はカマキリと変わんねえな? どうしたどうした? 脳ミソまでハリガネムシに浸食されたか? で、どうすんの? 農家に転職すんの? YESか農家でお答えください」
「オイ、テメェ……。楽に死ねると思うなよ? お前の顔面を潰れたトマトみたいにしてから弟の前に晒してやろうかァ!?!?」
「ハハッ、そりゃおっかないな。なにせ腐ったアボカドみてえな顔した奴が言うんだ。説得力が違うぜ」
「お前よォ!! マジで今ここで殺――」
そう怒鳴り上げるエコーに対し、俺は耳の穴を小指で掻きながら。
「ああ、そういやお前。固有魔法を覚えるよりも派手な魔法を覚えたほうが良いとか言ってたけどよぉ、どーせ覚えられなかったんだろ? 固有魔法を。俺は1日で覚えたのにさぁ。だーかーら、お前は副官止まりなんだよ。ハハハハハッ!!」
そんなことを言った。
そして、俺のその言葉は――予想通りエコーの地雷をぶち抜いたらしい。
「テメェええええええええ!!!! ぶち殺してやるァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
エコーの身体が何か輝くオーラのようなものに包まれる。
魔力だ。
あまりに濃い魔力が体内から漏れ出たため、魔力が可視化されてオーラのように身体から溢れているのだ。
イユさんから以前に話を聞いた通りだ。
濃い魔力は見えるようになると。
「ちょ!? エコー落ち着いて!!」
「待てエコー!! 挑発になるな!!」
そんな風に何とか2人の仲間がエコーを収めようとするが。
「んにゅう~~~? さんざんイキってケガ人と素人も倒せないんでちゅか~~~? 魔王軍の皆さん雑魚すぎて可愛いでちゅね~~~? いい子いい子してあげまちょうか~~~~?」
「こっ、こいつマジで腹立つ!!」
「流石に腹立つわねアンタ!! 私達もブチ切れそうよ!!」
俺がそんなことをさせるものか。
煽りに煽ってやるぜ。
「カブトムシ君はさぁ、そ~んなに大きい角 持ってるけど俺の前で何かしたっけ? 角だけデカいの? 角だけデカ男なの? 使いどころないなら俺のケツにブッ挿してみろよ。ほ~れほれ」
そう言いながら、俺は自分のケツをぺちんぺちんと叩いてカブトムシの魔族を挑発する。
彼のコメカミから『びきっ』と音がして青筋が立つのがはっきりと見て取れる。
そして次にカナブンの女の魔族に対しては。
「カナブンはさあ」
「な、なんだよ! 何が良いたい!!」
「……カナブンって特徴がないから何とも言えないよね」
今度はカナブンの魔族から『ブチッ』と何かが切れるような音がした。
そして俺は更に煽る。
「で~~~~? 結局みなさん何するの? あっ、『俺キレると記憶失くすんだよねwwww』とか定番のイキリとか かますんですかぁ? 別に俺はどうでもいいんですけど~。だって皆さんの攻撃は俺のヌルヌルに効きませんもんね。やることなくてⅯ字開脚とかしちゃうわ~。ペロペロペロロ~~~ン」
舌をベロベロと出しながら、俺は足をパカパカ開いたり閉じたりしてⅯ字開脚をして魔族どもを小馬鹿にする。
そして最後に、自分の両足を持ち上げて股間をおっぴろげるようにして。
「ロマンティック❤Ⅴ字開脚」
そう言ってウィンクした。
俺の言動に、魔族が3人とも完全にブチ切れたのがハッキリ見て取れた。
はは、ウケる。




