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弟チートで兄ニート!! ~異世界に来たくらいで働くなんて甘え~  作者: 水道代12万円の人
第二章 ヒューマン英雄王国・ベイリーズ激戦
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第40話 ネゴシエーション④







 その言葉に、俺は目を丸くした。

 一方でイユさんは。



「……」



 その言葉を聞いても何も言わなかった。



「あんとき、俺は魔王軍と人類軍の境界を越えてこっそり偵察任務に行く途中だったんだがな。なーんか悲劇の最中っぽいババアと孫を見つけたからよォ。ちょっと利用したんだわ。いやメンゴ。石化する奇病とか魔王軍にもどうにもできねえわ。ぎゃはは!! 俺もあんなん初めて見たわ!!」



 ――正直、その可能性は俺も考えていた。

 人間に治せないからと言って、魔王軍なら治せるもんか? とは思っていた。

 だが、()()()()()()()()()()()()、俺は何も言わなかった。

 しかし、それを。



「それを、今更この場で喋ってどうすんだよ!! ボケが!!」

「いやあ、ハハッ! ウソついてて悪いなと思ってよォ」



 そう言って笑いながら、エコーと部下の2人は、家の屋根の上から飛び降り、俺の目の前に立った。



「さて、じゃあテメェの反抗心をへし折るために――腕の一本くらい落とすか」

「……ッ!!」



 そう言ってエコーは鎌を振り上げた。

 やべえ。


 ――振り下ろされる鎌の刃先がスローモーションに見える。

 その刃先は俺の肩口に向かってきている。

 マジで俺の腕を落とすつもりだ。



「――ああああああッ!!」



 咄嗟に、俺は先ほど飲み終えた中級ポーションの瓶を刃先に叩きつけた。



「バカが!! そんなんで俺の鎌が防げるか!!」



 言葉通り、エコーの刃は空き瓶を叩き割り、そのまま俺の肩に振り下ろされ――()()()()()()()



「……は?」



 エコーが自分の鎌に視線を落とすと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「――固有魔法・展開ッ!!」



 そして連中が呆気に取られている隙に、俺は固有魔法を発動!!

 同時に手から大量の粘液をブチ撒けながら、腕を振り抜くことで、エコー達に大量のヌルヌルをぶっかけた。

 それによって――。



「うおおおおお!? すべッ、滑る!!」

「ぬううう!? 何だこれは、立てんぞ!? エコー!!」

「ちょっと、何よコレ!? エコーどうすんの!?」



 三人は滑って転んで、ヌルヌルと地面に這いつくばっている。

 作戦は大成功だ!!



「中級以上のポーションの瓶には薬剤の品質を維持する機能がある。固有魔法で作った薬だってあるからな。だから固有魔法を解除しても瓶に入れておけば霧散せずに残ることも場合もある。――賭けだったが、うまくいったぜ!!」



 本来、固有魔法を解除すると生み出したものも消える。

 だから俺のヌルヌルは解除され、ヌルヌルで固定していた音響閃光弾は発射された。

 しかし、ポーション瓶の中に入るものであれば、維持することができる場合もある。

 その場合、瓶から出した数秒後には霧散するが、一瞬だけ利用するのなら問題はない。

 咄嗟の思い付きだったが、うまくいったぜ。


 俺は地面でヌルヌル塗れになって転がる蟲どもを相手に、口の端を持ち上げるようにして笑みを浮かべた。



「ハハハハハッ!! おいおい、どうしたどうした!? さっきまで調子こいてたのによぉ!! ローションにまみれて地面にキスして、ねえ今どんな気持ち!? ねえ今どんな気持ち!?」

「このッ!! 眼鏡野郎!! 調子こいてんじゃ――うおお!? 立てねえ!?」



 地面をヌルヌルと滑っているエコーを相手に、俺は散々 煽りに煽る。

 頭に血が上ってくれた方がこっちもやりやすい。

 口だけでなく手も動かし、俺はイユさんの腹と背の傷口に手をやり、手のひらからヌルヌルを出して傷を覆い、すぐさま乾燥・固定させる。これによって多少は止血になるはずだ。



「イユさん!! ここから逃げます!! ちょっと痛くても我慢して下さいね!!」



 俺はイユさんの太ももの下と背中に手を回して抱き上げると、地面を蹴って駆けだした。

 ベイリーズの周辺には冒険者と勇者達が居る。

 彼らと合流できれば、あいつらを倒せるかもしれない!!



「ウチは……置いていけ。重いやろうが。ウチを抱えたままでは逃げ切れへんやろ」



 抱きかかえられたイユさんが、そんなことを言い始めた。

 なーに言ってんだ、この人は。



「今更そんなん言われても困りますよ!! せっかくアンタを助けに来たんだ!! っていうかイユさん細いから全然 重くないし? 軽いよ軽いよ!! こんなんじゃトレーニングにもならないよ!!」

「お前は……、本当にしょうがない性格やな。ふふっ」



 そう言って、イユさんは少しだけ笑った。

 よっしゃ、ウケた!!

 しかし、正直なところ走って逃げる時間はない。

 走って逃げたら、な。


 だから、俺はイユさんを抱えたまま少し走って、山から突き出た大岩の上に立った。

 この下は急斜面になっており、そのままでは滑り落ちてしまうだろう。

 だが、俺にとってはその方が、都合が良い。


 地面の下を見ながら、俺は全身からヌルヌルを流れさせ、イユさんにもべったりと液体を付着させる。

 ここだけ見ると、青空の下でソープ嬢ごっこでもすんのかなって感じだ。

 ……エロ同人誌でもそうそう見ない展開だな。 



「ねえ、イユさん。イユさんって、全身ヌルヌル塗れになって崖から滑り降りたことあります」

「あるわけ……ないやろ。そんなの……」

「奇遇ですね、実は俺もですよ」

「お前、まさか――」



 俺はイユさんを抱えたまま、崖から飛び降りた。





今話が最新話である場合、下部に評価欄があると思います。

もし、本作品を読んで面白いと思って頂けたなら、ぜひ評価ポイントを入れていただければと思います。

差し出がましいこととは思いますが、作者のやる気に繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

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