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弟チートで兄ニート!! ~異世界に来たくらいで働くなんて甘え~  作者: 水道代12万円の人
第二章 ヒューマン英雄王国・ベイリーズ激戦
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第31話 一歩前進(前半)





 あれから数日。

 翠たち勇者は着実にモンスターを屠り続けていた。

 そして そのお陰か、この数日の間で、明らかに翠の固有魔法は成長していた。



「『戦艦(バトルシップ)」ッ!!」

「おお、翠さん。前よりも魔法の使い方が上手くなってきましたね!!」



 モンスターを蹴散らしながら、青一が翠に褒め言葉を掛ける。



 以前のように高火力でぶっ放して吹っ飛ばす、という雑な戦い方ではなく、高火力での攻撃と戦艦に搭載した機関銃による攻撃を使い分け、以前よりも確実かつ丁寧にモンスターを打ち倒せるようになっていた。

 勇者っていうのは凄いもんだな。

 俺には真似できん。



「本当ですか!? よーし、もっと頑張ります!!」



 お陰で翠のやる気もドンドン増していく。

 仕事が楽しくて仕方ないのだろう。


 そんな調子なので、クエスト自体は問題ない。

 これなら2~3日で問題なくクエストを終えて帰れるだろう。

 しかし、……やはりイユさんの調子がおかしい気がする。



「……」

「イユさん、何か考え事ですか?」

「あ、……ああ。いえ、ちょっと報告書を出さないといけないので、それについて考えていただけです。気になさらなくても大丈夫ですよ、桃吾様」



 俺が声を掛けると、彼女は笑ってそう答えるが、やはり気になる。

 何か物思いに耽ったり、考え込むことが増えてきた気がする。

 他の人は気にしていないようなので、それほど頻回なわけではないらしいが。


 ……俺のセクハラに悩んでいたらどうしよう。

 そろそろ自重しようかな。

 このクエストが始まってからは風呂の残り湯も要求してないし、最近はあんまり やり過ぎないようにしてるんだけどな。




 そして、今日も今日とてモンスター退治を終えて――といっても俺は戦闘に参加していないので、料理を作って持って行ったり、戦いの様子を観戦したり、マジで暇なときは珍しいキノコ探しやドングリ集めをしていたのだが――帰路につき、あとは各々に宛がわれた宿で休むなり、仲間と雑談したり、自由な時間を過ごしていた。

 俺も宿の自室でこの世界の料理本を眺めて過ごしていたのだが、すると誰かが部屋をノックしてきた。




「はーい、どうぞ」



 俺が応えると、彼女は無言で部屋に入ってきた。



「ああ、イユさん。どうしたんですか?」



 部屋にやってきたのは、イユさんだった。

 ただ、やはり何か考え込んでいる様子だった。



「……何かあったんですか? ここ最近、ずっと浮かない顔ですよね」

「はは……。やっぱり、バレてたんやな。……実は、頼みがあんねん」



 俺と二人きりだからか、彼女は方言を隠していなかった。



「頼み? まあ俺に出来る範囲なら良いですよ。あっ、俺の童貞とか要ります?」

「要らんわアホ! ……ちょっとだけ、真面目な話やねん。アンタ以外に頼める奴が居らん。せやから……頼む」

「分かりました。やりましょう」

「……まだ内容 言ってないで?」

「そうっスね。でも、俺以外に頼める人いないんでしょ? じゃあ、やりますよ。それくらい」

「お前……時々かっこいいこと言うのやめへん? ちょっとドキッとするやろ」

「あっ、でも就労はしませんよ」

「そんで一瞬カッコいい感じの雰囲気だすのに すぐぶっ壊すのはマジでやめろ」



 と、イユさんは溜息を吐いていた。

 自分でも分かんないけど ついボケちゃうんだよな。



「……ハァ。まあ、ええわ。お前と出会ってもう一ヵ月経つし、そういう性格なんは分かってるしな。……で、頼み事なんやけど、ちょっとついてきて欲しいとこがあんねん。この街の外なんやけど、馬を借りていけば30分もあれば着くと思う」

「分かりました。これから日も暮れるし、さっさと行きましょうか」


 俺は本を閉じると、ポンチョを羽織った。

 ジャケットだと流石に冒険してる感が薄いし、汚れても困るので、街の外での活動のためにとナンカ大臣に用意してもらったのである。



「行動 早いな。……働きはせんのに」

「労働以外のフットワークは軽いんですよ」



 そんな軽口を叩きながら、俺達は宿の外に出た。

 すると、そこで。



「あれ? イユさんに桃吾さん、どうしたんですか? こんな時間にお出かけですか?」

「よお、青一君じゃん」



 江土井青一とその御一行に出くわしてしまった。

 『聖剣』の精霊も人間の姿である。

 ……マズいな。

 イユさんが()()()()()()()()って言ったってことは、たぶん他の連中には俺らがこれからどこに行くかも伏せるべきなんだろう。

 


「あれ、お兄ちゃん。お出掛けですか?」

「あっ、翠も一緒だったんだ」


 

 おっと、翠まで居た。

 青一とは最近ずっと一緒に戦っているし、その中で良く会話もしていたからな、仲良くなったんだろう。

 青一も良い奴だし、翠も人見知りするタイプではないので、この中では年齢も近い。

 そういう意味では仲良くなりやすい状況だったんだろうな。



「翠は青一君たちと出かけてたの?」

「はい、お友達になったので。『聖剣』の精霊ちゃんがパンケーキが好きなので、みんなで食べに行ったんです。ねー!」

『うん、美味しかったわ……』


 『聖剣』の精霊も薄く笑みを浮かべる。

 表情はあまり動かないが、感情は豊かだよな、『聖剣』の精霊ちゃん。



「おいおい、良いなあ。俺も誘ってよ」

「あんたはダメよ! 青一が良くない影響を受けるでしょ!」

「そうですよ! 青一様の純粋な心が汚れます!」

「すげー言われようだなオイ」


 

 まあ最初ほどは険悪じゃないけどな、俺と青一の取り巻きちゃんズの関係性も。

 ランチを作って持って行ったのが良かったようだ。

 あれで多少は俺に対する評価が上がってきたらしい。

 


「で。そっちこそ何してるわけ? ……ひょっとしてデート? ニート相手にぃ?」

「うっそ!? イユさん、そんな人が良いんですか!?」



 取り巻き共がきゃいきゃいと騒いでいる。

 と言うかさらっと失礼なこと言ったな、お前ら。

 流石ティーンエイジャー・ガールだ。

 色恋の匂いがすると食いつきが良い。



「ああ、その……」



 しかし食いついてくる二人に、イユさんは言い淀んでいる様子だった。

 ここで下手なことをすると、これからの行動が阻害されかねないからな。

 ならば――。



「二人とも! 失礼だよ。お出掛けなら――」

「ああ、実はこれからデートなんだ。そういうわけで、邪魔しないでくれるか?」



 青一の言葉を遮って、俺はイユさんの腰に手を回すと彼女を抱き寄せ、そのまま彼女の首元に顔をうずめるようにしてから、俺が思う最大限にカッコいい笑みを浮かべた。





今回のシーンを描きながら、僕も甘酸っぱい記憶を思い出していました。


みたいなことを言いたかったんですけど、そんな思い出が全く浮かばなかったので、普通に尿意を我慢しながら書いてました。

イラストレーターの岸田メル先生がTwitterで「おしっこ我慢しながら作業するとめちゃくちゃ捗る」って言ってたのでそうしたんですけど、本当だなって思いました。

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