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弟チートで兄ニート!! ~異世界に来たくらいで働くなんて甘え~  作者: 水道代12万円の人
第二章 ヒューマン英雄王国・ベイリーズ激戦
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第27話 新勇者一行(前半)






「いや悪い悪い。何かあるとふざけるのが俺の性格なもんでね。真面目な話、助かったよ。ありがとう」



 俺は馬車から降りると、『聖剣』の勇者である江土井(えどい) 青一(せいいち)に微笑みかけた。

 助けられたのはマジだしな。



「ああ、いえ。このくらいでは怒りませんよ」



 俺の言葉に、青一は柔和な笑みを浮かべた。

 本当に怒ってはいなさそうだ。

 人格者だな。



「お兄ちゃんより人間ができてますね」

「何を言う。俺ほど人格のできた人間は居ないぞ」

「じゃあ、お兄ちゃんが舐められたことを言われたらどうするんです?」

「舐められたら殺す。それがジャパニーズ侍スピリッツだからだ」

「ウチの先祖は お百姓でしょ。お爺ちゃんが洋服の仕立て屋になったからそれまででしたけど」



 うむ、その通りである。

 武士道精神なんぞ ほとんどの日本人にはない。

 なぜならば大半の日本字に流れるのは お百姓の血だからだ。

 俺も侍ではない。

 言ってみただけである。



「で、ええと。新たな勇者様はどちらです?」



 青一の言葉に応じ、翠が一歩ずいと前に出る。



「はい、私です。私が新しい勇者・瀞江翠(とろえみどり)です」

「初めまして、補佐神官のイユ・トラヴィオルです。よろしくお願い致します」

「同じく初めまして、勇者の兄でニートやってます。瀞江桃吾(とろえとうご)です。好きなフルーツは名前の通り桃です」


「ええ、こちらこそ――。あれ!? いま何か変わった自己紹介がありませんでした!?」

「ああ、補佐神官とか初めて聞いたッスね。そんなんあるんスか? イユさん」

「違いますよ!! アナタですよ!! ニートって何ですか!?」

「ああ、ニートと言うのは『Not in Education, Employment or Training』の略で、『教育を受けても居ないし、就労してもいないし、訓練も受けていない』人のことだよ。一つ賢くなったね」

「違います!! ニートと言う言葉の意味が分からなかったのではありません!! なぜ異世界でニートをやっているんですか!?」


「いやまあ、俺は筋トレしてるから厳密にはニートではないけど」

「お兄ちゃんはニーですよね、ニー」

「どっちだっていいですよ、そんなの!! 異世界に折角来たんですよ!! 頑張って活躍して世界を救おうとはしないんですか!?」

「なんで?」



 俺の言葉に、青一は目を見開いた。



「何でってどういうことです!? だ、だって異世界に来たでしょう!?」

「うん」

「魔法の力を得たでしょう!?」

「うん」

「世界が魔王と戦っていることを知ったんでしょう!?」

「うん」

「なら何故 戦わないんです!?」

「え? だって俺は勇者の付き添いだし。別に戦うべくやってきたわけではないし」

「なっ、付き添いってそのままの意味なんですか!?」

「そのままの意味だよ」

「じゃ、じゃあ異世界のために立ち上がろうとは思わないんですか!? 魔王の脅威に脅かされてるんですよ!!」

「俺たちの世界だって貧困、飢餓、環境問題、宗教間の争い、人種差別、その他もろもろ問題はあったじゃん。それが分かりやすい魔王という脅威になったくらいで『よーしじゃあ世界を救うか』ってなるほど俺のケツは青くないよ。ところでケツって青いもんなの?」

「知りませんよ!! えっ、じゃああなたは普段何をしてるんですか!?」

「筋トレしたりご飯食べたりオヤツ食べたり酒飲んだり本を読んだりそこらへんの人と お喋りとかしてます」

「……な、なんで働かないんですか? 異世界に来て、心機一転! とはならないんですか? 僕も……正直な話、元々は引きこもりだったんです。でも、異世界に来て変わりました!! この世界のためになら、僕だって頑張れると思ったんです!! この世界に来たから、僕は変われたんです!!」

「良かったじゃん」

「良かったじゃん、じゃないですよ!! ほ、本当に働く気が無いんですか!? 別に勇者じゃなくても良いじゃないですか!! 現代知識で内政チートとか商売人ルートだってあるでしょう!? なのに何で、働かないんですか!?」

「はぁ~、愚問だなあ。江土井 青一君」



 俺はやれやれと肩をすくめると、スッと空を指さした。



「君は雲に向かって『何で空を漂っているんだ?』とでも訊くつもりかい?」

「いや何カッコ良さげな雰囲気で誤魔化してるんですか!?」



 チッ、騙されなかったか。


「良いじゃないですか。俺の代わりに弟の翠ちゃんが働くんだから」

「弟のスネを齧るんですか!? 正気ですか!?」

「良いじゃん別に。ねっ、翠ちゃん。代わりにウンコ食べる以外なら何でもするよ」

「じゃあ、お兄ちゃん。おしっこは?」

「飲むよ」

「何ですか その異端児の会話のキャッチボール!?」

「あー、聖剣の勇者様。この二人のこの会話に付いて行くとキリがないので、この辺で切ったほうが良いですよ」


 

 面倒くさくなったのか、イユさんが口を挟んできた。

 ちなみに、この間 騎士たちは『異世界人は頭がおかしいのか?』みたいなヒソヒソ話をしていた。

 何を言っているのか。

 人間なんか全員頭イかれてるに決まってんじゃん。




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