65章 刑務所カレー
秀一はアキリサの元を訪ねた。
「お帰りなさい。お兄ちゃん。」
「またたこ焼きを作っていたのか。たこ焼きばかりで他の料理はできないのか。」
「あら?他の料理もちゃんとしてるわよ!今カレーを作ってるところよ!」
アキリサが指さした鍋にはカレーの入った袋がグツグツ煮られているのであった。
「レトルトかよ!」
秀一はアキリサを投げ飛ばした。アキリサは外に飛び出し顔面を地面に擦り付けながら数m飛ばされた。
「あん!アキリサのかわいい顔が台無しだわ!」
「なんだこのレトルトカレー?『刑務所カレー』?」
「そうよ!ムショ飯シリーズで今流行ってるの!」
「そういえば頼まれて買ったものの中にこんなものもあったような。」
「お兄ちゃんは皆から頼まれて買物に行ってるからいちいち覚えてないのもむりないわ。
このカレーは銅鑼江貴文さんが刑務所で食べてたカレーを再現したものよ!」
「銅鑼江貴文って逮捕されたエニウェアドアの元社長の!?」
「そうよ!塩分も少ないし、具も量も少なくてダイエットにも良いって専らの評判よ!薄味でスパイスの風味も少ないの。これでも刑務所では大人気のメニューだったのよ!」
「へえー。」
「しかも値段も税込みでたった60円!ムショ飯シリーズは子どもに食べさせる事で『刑務所ではこんなのしか食べられないんだ』と思わせる事ができて教育にも良いのよ!」
「でもレトルトなんて料理と言えない。」
「料理という定義は学界的にも国際的にも定まってないわ!」
「お前はどこの総理大臣だよ!」
秀一はアキリサの頭の上にたらいを落とした。
「いたた!!!」
「少しは料理くらい覚えろよ。」