62章 王
秀一はロサの元を訪ねた。
「いらっしゃいませ、神主さま。」
「うん。相変わらず暇そうだな。」
「そんな事ありませんの。
わたくしも結構忙しいのですわ!」
「お前は将来成りたいものとか無いのかよ?」
「ありますわ。わたくしもようやく将来の夢を見つけましたの。」
「ほぉー。
それはなんだ?」
「お妃様ですの!」
「へ?」
「私の夢はお妃様ですわ。」
「真面目に考えろ!」
秀一はロサの顔を引っ掻き回し、その顔にワサビを塗りたくった。
「きぃああああああ!!!!沁みますわぁ~!!!」
「第一お妃様になるには王様と結婚しなきゃ行けないんだぞ。」
「王様はあなたですわ!」
「ひ?僕が王様だって?」
「そうですわ!イタリア語ではレッ!レレレのレッ!ですわ!!
神主さまが王様になってわたくしと結婚するのですわ!」
「勝手に決めるな!」
秀一はロサの顔面にたらいを落とした。
ガーン!!!
「いった~いぃ!」
「第一日本には天皇陛下がいらっしゃるじゃないか。」
「天皇陛下は英語でエンペラー、王はキングですわ!」
「そうだが…日本には将軍は居ても王はいないだろう。日本の場合は元々王から天皇と呼ばれる様になったのだから。」
「だったら外国へ行って王様になればいいのですわ!」
「きがるにいってくれるなあ。」
秀一は汗だくになった。
「王様っていうのも大変なんだぞ。
王様はその国の国家元首だ。つまり日本でいう天皇陛下と同じなんだぞ。
天皇陛下がどんなに大変な公務をなさっているのか知らないだろう。」
「公務?」
「右翼が怖いからあんまり積極的には話したくないが、天皇陛下がいかに大変な仕事をなさっているか。」
「そんなに大変ですの?」
「右翼がうるさいからか学校ではあまり教えないからな。テレビや新聞でも天皇陛下の公務については一部しか報道されていないが、毎日のように公務をこなされている。
閣議決定された書類への署名や押印を2万回以上行われ、外国の国王や国家元首・首相などとの面会を1000回以上こなされ、さらに着任した外国大使から書状を受け取る儀式を数百回こなされ、さらにさらに様々な功績者との面会を1000回以上こなされ…」
「まだありますの?!」
「まだまだ沢山あるぞ!国王になるという事は天皇陛下同様これだけの激務を1年間で毎日のようにこなさなければならない!当然お妃様もだ。
お前はそれに耐えられるのか!?それだけの公務をこなせるだけの根気と忍耐力があるのか?!」
「あうぅ…。
やっぱり無理そうですわ……。」
「身の程をしれ!!」
ロサは己の軽率を恥じるのであった。