57章 食べ合わせ
秀一はチェリーの元を訪ねた。
「いらっしゃい神主さん!」
「スイカを買って来たぞ。ほれぇ!」
「まぁ!美味しそう!さっそく頂きましょう!」
チェリーは調味料を持ってきた。
「塩だと?何をする気だ?」
「何ってスイカに掛けるのよ。甘くなるのよ。」
「いつの時代の話だよ。昔のスイカと違って今のスイカは最初から甘いから塩なんてかける必要がない。」
「でもスイカにはお塩をかけて食べるのが昔からの習わしなのよ。」
チェリーは調味料を振りかけて、スイカを食べた。
「あま~い!!」
「どれどれ?
ん?
これ砂糖じゃないか!甘くて当たり前だよ!」
「あら?砂糖とお塩を間違えたみたい!でもちゃんと甘くなったわ!」
「砂糖をかければどんなものでも甘くなるに決まっているだろ!!!」
秀一は魔法の壺から生きた蛸を取り出し、チェリーの顔に向かって墨を吐かせた。
ビシャア!
チェリーの顔は墨で真っ黒に汚れた。
「あ~ん、私の美貌が台無しよ~!」
「スイカに掛けると言ったらやっぱり蜂蜜だろ。」
「蜂蜜!?砂糖と同じで甘くなるの当たり前じゃない!」
「甘くなるだけじゃない!スイカに蜂蜜を掛けるとメロンみたいな味になるんだ。」
「きゅうりに蜂蜜をかけるとメロンの味になるのは聞いたことがあるけれど…。」
「そんなの迷信だよ。スイカにはやっぱり蜂蜜だな。他にもシナモンもスイカに合うぞ。」
「なんだか非伝統的な食べ合わせね…。
食べ合わせと言えばトマトに砂糖を書けるとイチゴの味がすると聞いたことがあるわ。」
「そんなの迷信だよ。砂糖はイチゴに掛けた方が美味しいんだ。」
「試してみましょう!」
チェリーは切ったトマトの断面に砂糖を振りかけた。
(うう…僕、トマトは嫌いなんだよなぁ…。)
秀一は勇気を振り絞って砂糖のかかったトマトを食べた。
「どう?!イチゴの味になった!?」
「ぶーー!!
トマトのまんまじゃないか!」
秀一はチェリーの真っ黒に染まった顔を引っ掻き回した。
「痛い痛い痛い!!!」
「…たくっ!」
「じゃあプリンに醤油は?ウニの味になるって聞いたことがあるわ!」
「迷信だよ迷信!」
「試してみましょう!」
チェリーはプリンに醤油をかけて混ぜ合わせた。
「はい、アーンして!」
「アーン」
秀一はつられて口を開けてしまった。
モグッ!
「う!う!う!」
「どう?ウニの味になった!?」
「しょっぱいプリンじゃないかよ!!!」
秀一は生きた蛸をチェリーの顔面に投げつけた。蛸はチェリーの顔に絡みついた。
「きゃあ!離して!離して!離して!」
チェリーは顔を振り回した。しかし蛸は吸盤でしっかりチェリーの顔に張り付いている。
「あーん!疲れた…。
神主さんたすけてぇ~!」
「知らん!もう知らん!」
秀一は蛸を放置して帰ってしまった。