40章 マルチ商法
秀一はイチゴの元を訪ねた。
「いらっしゃい神主さん。」
「少しはニートを辞めて働く気になったか?」
「全然。働くのなんて面倒臭いもの。」
「そう言うと思って良い話を持ってきた。楽して儲けられる話だぞ!」
「本当!?」
「勿論!簡単なルーチンだ。
まず商品を一定数仕入れる。この仕入れだが一度に大量に仕入れるため単価が安く済む。そして、この仕入れる商品だが安価で捌きやすい。しかも、消耗品だから毎回安定して売れる。だが肝心なのはそこじゃない。重要なのはこの商品を仕入れる人を勧誘する事だ。商品を仕入れる人の勧誘に成功すればその分紹介料として報酬が貰える!」
(これってもしかして…。)
「それだけじゃない!自分が勧誘した人が別の人を勧誘に成功した場合も勿論報酬が貰える!さらにそこでも勧誘された人がまた別の人を勧誘に成功した場合もやはり報酬が貰える。そしてそこで勧誘された人が別の人を勧誘に成功した場合も…と言うようなループが作られるという仕組みだ。勧誘した人が新たに勧誘していけば勧誘していくほど芋ずる式に儲かっていくとういう寸法だ。」
(やっぱり!)
「しかもこのループの良い所は勧誘しやすいという所だ。最初に言った通り捌く商品は安価な消耗品だ。だれでも使う日用品だ。だから気軽に勧誘しやすい。それは勧誘される側も同じだ。勧誘が芋ズル式に成功すれば月収100万200万も…。」
「あの・・・。」
「ん?」
「それってねずみ講でしょう?」
「ちがーう!!!!違う違うちがーう!
ねずみ講は自転車操業!でもマルチ商法は違う!ねずみ講は収益を上げる手段が確立されていないが、マルチ商法は商品を媒介としているからそれによって収益を確立させている。ねずみ講は自転車操業だからいずれ崩壊するビジネスモデルだが、マルチ商法は収益を上げる方法が確立しているから永続的に継続させる事ができる画期的なビジネススキームなんだ!」
「ねずみ講とマルチとどこが違うの?」
「ねずみ講は違法!ねずみ講は違法的だがマルチ商法は合法的!そこが決定的に違う。ねずみ講は破滅の未来しかない虚業だが、マルチは実業!安定した収益を将来的に上げ続ける事ができる!」
「楽して儲けようなんてそんな美味しい話があるわけが…。」
「確かに。最低限の努力は必要だ。だが、必要な努力は最低限だけで良い!ただ友達に勧誘するだけ!勧誘上手な人を勧誘していくだけ!」
「私友達なんて居ないわ。話し相手は髪の毛だけだったもの。」
「お前は運が良い。一番最初にこの話をしたのはお前だからだ。お前が他の七人の勧誘に成功すればそれだけ報酬が貰える!」
「他の七人とは別に友達じゃないし…。」
「他の七人が誰かを勧誘すればそれだけ報酬が貰える!」
「他の七人も一緒よ。勧誘できる人脈なんてないわ。それに…。」
「それに?」
「やっぱりグレーなマルチ商法はやりたくないわ。なんかずるいもの。」
「偉い!よく言った!」
「それにマルチ商法の勧誘員になるよりももっと良い方法を思いついたわ!起業するのよ!」
「おお!」
「会費を取って会員を作るの。そして、その会費から、会員を増やせば増やすほど会員に還元するの!そうすればどんどん会員が増えていくわ!」
「収益はどうやって上げるんだ?どれくらい還元するんだ?」
「収益は全て会費よ!そして、報酬は会費の2倍のキャッシュバッグよ!」
「それってねずみ講だろうが!!!」
秀一はイチゴを投げつけた。イチゴは室内に飾ってあったサボテンに顔面から激突した。
「いたああああ!!!」
イチゴの顔はサボテンの棘が刺さってトゲだらけになった。
さらに秀一はイチゴにサボテンを投げつけた!サボテンはイチゴの髪の毛に絡まってしまった。
「いやあああ!!私の赤髪がああああ!!」
イチゴはサボテンから髪を解こうとするが、トゲが邪魔して解けない。イチゴの髪の毛全体がサボテンにしっかり絡みついてしまっている。
「あーん!神主さん!なんてかして~!」
「手のつけようが無いな。」
「そんな事言わないで助けて~!」
「切断するしかないな。」
「せ、切断!?」
秀一は大きなハサミをイチゴに見せつけた。イチゴはショックで気絶してしまった。
「じゃあ切るぞ。」
ヂョキヂョキヂョキ!
ヂョキヂョキヂョキ!!
ヂョキヂョキヂョキ!!!
秀一はサボテンをハサミでバラバラに切断しイチゴの髪の毛を解いた。
「せっかく解いたのに寝ているのかよー。」