29章 宝さがし
秀一はローサの元を訪ねた。
「いらっしゃい、秀一君!」
「ローサ、スコップなんて持ってどうしたんだ?」
「庭でサバイバルごっこをしたいと思うの!秀一君も一緒にやりましょう!」
「付き合ってやるか。」
秀一とローサは庭で落とし穴を掘り始めた。
「あら、何か埋まってるわ。」
ローサが掘り出したのはルビーであった。
ローサに悪魔の声が聞こえた。
(このまま猫ババしちゃいましょうよ!)
ローサに天使の声も聞こえた。
(いいえ!駄目よ~駄目駄目~!ちゃんと交番に届けるべきよ~!)
ローサの心の中で悪魔と天使が喧嘩を始めた。
(交番なんて人目が付く場所にあたしが行けるわけないでしょう!)
(いいえ!秀一君に渡して交番に届けて貰えばいいわ!)
(交番に届けても良い事なんて何もないわよ!)
(いいえ!お礼として1割貰えるわ!)
「なにやっているんだ、ローサ!」
「きゃああ!!!」
ローサは背後から秀一に話しかけられてびっくりした。
「なにそんなに驚いているんだ。」
「あの…これ…。」
「ルビーのおもちゃじゃないか。」
「オモチャだったの?!なーんだ、心配して損しちゃったわ。」
「本物だと思ったのか。」
「てへへ。」
秀一とローサはまた穴堀を続けた。
「あら?」
ローサはまた何かを見つけた。
「土器だわ!これは歴史的発見だわ!」
「ローサ、悪いがそれはただの植木鉢の破片だと思うぞ。」
秀一が冷静に教えた。
「分かってるわ!そのつもりよ。つもり。」
「ああ、ごっこだもんな。」
秀一とローサはまた穴堀を続けた。
「あら!お湯が沸いたわ!」
「おお!こっちもだ!」
「ここから温泉が出るなんて知らなかったわ!」
ローサは温泉に入ろうとした。
「いきなり服を脱ぐな!」
秀一はローサの顔にサッカーボールをシュートした。
「いったーいぃ!!
あたしと秀一君の仲でしょう。」
「親しき中にも礼儀ありだ。」
「混浴よ!混浴!混浴は日本の伝統文化よ。」
「そうか。混浴か。そうだな。」
ローサと秀一は一緒に温泉に入浴した。
「良い湯だな。」
「そうね。良いお湯だわ。」
ローサは歌い出そうとした。
「バ…。」
「歌は駄目―!!!」
秀一はローサの顔を引っ掻き回して蹴り飛ばした。
「あーん!お湯が傷にしみるわー!」
「良い湯だからってあの歌を歌おうとしただろう!」
「そうね。歌は大人の事情で駄目だったわね。」
二人は本来の目的も忘れ温泉で寛いだ。