27章 職業
秀一はイチゴの元を訪ねた。
「あら、いらっしゃい神主さん。」
「うん。突然だがお前の将来の夢はなんだ。」
「え?」
「ずっとひきこもりのニートで良いと思っているのか?将来の夢は無いのか。」
「ありません!」
「即答かよ!」
秀一はイチゴの顔を引っ掻きまして突っ込んだ。
「ひ~ん!」
「じゃあさ。趣味とかないのか?他のひきこもり娘たちは皆趣味があるぞ。」
「趣味ねえ。ほんの手慰みだけれど将棋は得意よ。」
「将棋か!じゃあ棋士を目指せばいいんじゃないか?」
「そうね。女流棋士…いいかも知れないわね!」
「じゃあ早速一局やってみるか。」
二人は将棋を用意した。そして対局を始めた。
「ほう、振り飛車か。」
「じっくり攻めていくわよ!」
「ほう、囲いは穴熊か。」
二人の対局はどんどん進んでいく。イチゴの実力は確かなもので秀一は次第に追い詰められていく。
「ぐぬぬ。得意と言うだけあってなかなかやるな。」
「角とり!フフフ盤の上で角が泣いてるわよ。」
「お前の負けだな。」
「え?まだ詰んでないじゃない!」
「二歩だよ。」
イチゴは二歩という初歩的な禁じ手を打ってしまった。
「しまったわ!」
「凡ミスだな。」
「待って!今の無し無し無し!」
「プロの将棋に待ったは無い。」
「そんな~。今のはノーカンにして!ノーカン!ノーカン!ノーカン!」
「プロの将棋に待ったはないと言っているだろう!」
秀一はイチゴの顔に丸い岩を投げつけた。
バキッ!
イチゴの顔には痣が残った。
「いた~いぃ!」
「反則はノーカウントにはできないが、感想戦っていうなら良いぜ。」
「感想戦?……そうね、良いわ!やりましょう!」
イチゴと秀一は感想戦で勝負の続きを仕切り直した。
「参りました。」
「うーん。やっぱりあの二歩がなければ私の勝ちだったのね~。」
「そのようだな。まぁこれからもプロを目指して将棋に励むんだな。」
「ええ頑張るわ!」
イチゴは詰め将棋を始めた。秀一は温かい目で見守りながら自分の部屋に戻って行った。
次の日、秀一はまたイチゴの部屋を訪ねた。
「将棋の練習は進んでいるか?」
ところがイチゴは麻雀牌を見つめていた。
「あら、いらっしゃい神主さん!私女流雀士になろうと思うの!」
「棋士は?」
「やめたわ!」
「移り気が早すぎるだろおおお!!!」
秀一はイチゴを電撃出痺れさせた。
イチゴは移り気が激しいのであった。