122章 邦楽
秀一はジェシーの元を訪ねた。
「またアニソンばっかり聞いているのか。」
「はい。アニソンは他の邦楽にはない良さがあります。」
「例えばどんな?」
「アニソンにしかない高揚感があります。」
「他の邦楽の高揚感とはどう違うんだ?」
「湧き上がる興奮度が違います!」
「全く分からん。」
秀一はCDを取り出した。
「たまにはアニソン以外の曲を聞いて見たらどうだ?」
「なんのCDですか?」
「『SEX‐MAP』の『世界に一つだけのペニス』だ。」
「私でも聞いた事があります。一人一人が違う子種を持っているって言うのを歌った曲ですよね。」
「そうだ。良い曲だと思わないか。」
「いいえ。全く。」
「わからん奴だな!」
ドンッ!
秀一は、金属でできたモヤっとボールに電撃を流してジェシーの顔面に投げつけた。
「いたた!ありがとうございます!」
秀一はさらに別のCDを何枚か取り出した。
「じゃあ、『荒らし』の曲なんかどうだ?『SEX‐MAP』と同じ邪二ーズ事務所のアイドルグループの。」
「興味ありません。」
「じゃあ『ゲスの極みオカメ。』の曲なんかどうだ?」
「最近の曲は興味ありません。」
「じゃあちょっと古い『モーニング乙女。』の『オナニーマシーン』なんてどうだ?一世を風靡した曲だぞ。」
「興味ないです。」
「じゃあ一昔前の『レッドレディ』や『おンニャの子クラブ』とかは?昭和の名曲をいっぱい歌っているグループだぞ。」
「知らないです。」
「じゃあなんの曲なら良いんだあああ!!!」
秀一はジェシーの顔を何度も何度も満遍なく引っ掻き回した。
「ああん!私の美貌がぁん!ありがとうございます!!!」
「逆にどんな曲ならオススメなんだ?」
「『魔女っ子まぎか☆マドカ』のOPの『コンタクト』とか『旧世紀エヴァソゲリオソ』のOPの『冷酷な悪魔のテーゼ』とか。」
「ふーん。」
秀一は興味なさそうに耳を掻いた。
「興味ないんですか?」
「ない。ない。ありません。」
「どうしてですか?良い曲なのに。」
「そもそも僕は音楽を聴かないんだ。集中力がないから20秒以上の曲は頭に入らない。」
「じゃあどうして邦楽のCDなんて持っているんですか?」
「アニソンを卒業すれば少しは真人間になるかと思ってわざわざ買って来たんだ。」
「わざ。わざ。」
「しかし、お前が聴く気がないんじゃ仕方がないな。フリスビー代わりにでもするか。」
秀一は呆れて帰って行った。