うちゅう人の独り言 隣の芝は、青く見える
変わったモノの見かた、心理的に今措かれている状況より、すぐ隣にある、中々行く事の出来ないものが、素晴らしいモノに見えて来る事があります。
隣の家って、気に成りますよね、偶に。
誰が、住んでいるのだろうとか、庭の手入れの仕方とか、あっちの方が、日当たりが良いのではとか、不思議な事に、比較してしまうのです。自分の家の方が、優れているとかもね。
「おとうちゃん、今、帰ってきたよ。」上がりぶちに腰かけて、手拭いを頭から取り外して、家の中をのぞく。
「今日は、何とれた?」と、おとうちゃん。
「おとこひとり、おんなのこどもひとり、こっちとあっぢのちゅうかんで、ひろてきた」
「おとこは、外で、あらってから、うちにいれろな、こどもは、ちいさいのけ?」
「まぁ、まだ、かあちゃんほどおおきくない。」
「かあちゃんほどおおきかったら、おとなだべ。」
「それもそうだ。」と、あたい。
「だいたい、12周期ぐらいだなぁ」
「12周期かぁ、まだそだてねど、だめだなぁ」と、おとうちゃん。
「んだね」と、あたい。
「おとこ、あらったよぉ」と、かあちゃんのこえ。
「んだらば、よくふいてから、こっちさいれろ」と、おとうちゃん。
「とうちゃん、なにさつかうのや、あたいのものにしてもいいのか。」と、あたい。
「まぁ、それでもいいげどよぉ、まんず、しなさだめしてがらったな。」
「かあちゃんも、よぐみろや」大判のタオルの真ん中に穴をあけて、頭を出して腰の所で紐で結ぶ。
「こっぢさこい、じぶんで、あるげっぺ」ちょっと、なまってきたおとうちゃん。
「おとうちゃん、なまってきたよ、わかりにくいよ、はなしかた。」
「あ、わりがった、なおす。」と、おとうちゃん、「おんめも、すっごすなまってるぞ」
「わがったなおす。」と、あたい。
「で、ひろって来てしまいましたけど、何で、あんな所で、ぼろぼろに為っていたのですか。」
『ここは、何所』焦点の合っていない眼をした、おとこの人。
「はなし、わがらねが。」「とうちゃん、また、なまってる。」「いいべした、このぐらい。」
「言葉判らないのかな」と、かあちゃん
「そんなはずないよ、「たすけて、たすけて…」って、いっでたもの」と、あたい。
『むすめは、どこだ』われに返って、あたりを見渡す。
「むすめっこは、そっちで、介抱中だぁ。」
「あのままでは、しんでしまうとおもったので、消毒して寝台に寝せているよ。」
『あっ、ありがとうございます。』涙をこぼしながら、頭を下げる。
「そいで、なして、あそごにたおれでいたのですか?」
「おとうちゃん、ことばすこしへん。」
「やっぱり、なまっていねど、わがんねな。」
「まぁ、それがおとうちゃんのいいところだもの。」と、おかあちゃん、ほほに手を当てにっこり。
『少々の訛りでしたら、私にも娘にも分かりますので、大丈夫です。』
「そりゃいがった、しばらぐこごさいっどいいべ。」と、おとうちゃん。
「そうですよ、むすめさんもおちついてきたようですし。」と、おかあちゃん。
「そのうち、きがつくでしょうけど、そのまえに、どうしてあそこに蹲って居たのですか」と、あたい。
「そうせかしても、なにがなんだかわからないでしょうから、おちついてから、おはなしききましょうね」と、おかあちゃん。
むすめのおやが、滔々(とうとう)と、話だす。
『すみません、此処って、何処なんですか?』
『私たちの居た時代でも無いようですし』
『まさか、詩語の世界とか』
『たしかに、詩は沢山作りましたが、ひとつも売れませんでした。』
『妻と娘と暮らしておりましたが、病気で妻に先立たれ』
『娘と二人で暮らしておりましたが、収入は無く、食べる物も無くなって、家は、人手に渡り。』
『御ヤマに入れば、何か食べる物が、有るのではないかと思い、入山致しました。』
「おやま?」と、あたいは、首をかしげる。
「どこだそれ?」と、おとうちゃん、胡坐をかきながら首をかしげる。
「ここは、とうげんきょう、ここは、ひとのすむばしょじゃないところですよ。」と、おかあちゃん
『えっ、それじゃ、異界の地、御ヤマに入った時、モヤッとした所を潜ったら、急に体がだるくなって、大きな猪の様なモノに突かれ、娘を守りながら、駆け巡っておりましたが、それが、精霊様のご寝所』
『申し訳ありません、大それた事をしてしまいました。』畳に潜り込む様な勢いで、頭を擦り付ける土下座。
「まぁ、そうゆうことであれば、しょうがないか」と、あたいは、頭をかきながら戸口に手をかける。
「おとうちゃん、しばらく、ここで静養していただきましょう」と、おかあちゃん。
「んだな、めったにひどこねものな、かあちゃんのきょかもでだし、しばらぐいろや。」と、おとうちゃん。
『ありがとう、ございます。』土下座のままこたえる、むすめのおや
「おぼこは、こっぢで、あづかっでもいいぞ」と、おとうちゃん。
「こどもの気は、あたいたちのえいようになるしね。」と、あたい。
『しばらくの間、あづかって頂けるのであれば、その間、狩りのお手伝いさせて頂きます。』
「かりっいうか、とちみだな。」あたいが言って、おとこに装備品を与える為に納屋に連れて行く。
「ひとのおどご、つづっでって、だいじょぶがぁ」と、おとうちゃん。
おとこを置いて、急いで戻ってくる、あたし。
「むすめのおっかあいねど、こまっぺ、いまのうちに、おしえでおいて、ここで、ものにしねど。」
「むがさりのはなしがぁ、どっちにしろ、ここさいっど、精霊化してしまうからね。」
「かあちゃん、はなしわかっごど、むすめっこさ、お母さんほしいからね。」
「なに、あのおどこさ、きめだのが」おとうちゃん、胡坐組み直して
「ひろってきたとき、おとうちゃんもおかあちゃんも、そんなこといってたべ。」
膝に肘を載せて、手に顎を載せた状態で、
「んだってもよ、こげなどこでよ」
「そうですよ、おとうちゃん、ここで、きめないと、カスミ様のいいなりになってしまいますからね。」
「んだってもよ、そっちのほうがいいぐねえがぁ」
「カスミ様は、いやなの、人のおとこがいいの、今回は、偶然みつけたから」話をしているうちに、容姿が変わっていく、段々、色が着いてくる。
「山神【大猪様】さまから貰って来たんだし、おとこの人が良いの」と、私。
「あれっ、おま、いろが、つきはじめたぞ」訝しむ、おとうちゃん。
「色?」だいぶ、普通の人のように、色が着いているまるで、水墨画から人が抜き出たように
「いろがつきはじめると、ひと化するんですよ。」
「人化?すると、人と子供が作れるよね。」と、私、少し顔を赤らめながら。
「んだがら、ひとになっでも、おとこのほうが、せいれいになったらできねべ」と、おとうちゃん。
「ああ”っ」、「んだね、まずいは、これ、どないしよ、おとうちゃん、おかあちゃん」
「カスミ様のどごさ、いがねど、なおんねのたな。」
「もとのもくあみってが」がぁ~ん、と云う顔をしている。
「おとこのひともいっしょにつれていけば、いいでないの」
「さすが、かあちゃん、年の功だね。」と、私。
「ほめらっだんだが、けなさっだんだが、わがらねな。」
「すなおにほめました。」にっこりほほえむ、私。
そこに、くだんのおとこのひとが、はいってきました。
『シタクできました。」色がうすれて、精霊化が、はげしい。
『ドコにいきますか?」あしもとは藁で編んだ深靴脛には、脚絆足を守ります。
腰には、〆縄の束と榊数本
肩から腰まで覆う蓑を羽織肩から肘まで、うす布で、覆い、肘から手首まで、長めの甲当【今はまだ藁色】を両腕に装備
「いやぁ、とち見に行くつもりだったんだけどね』と、私。
「そのまえに、カスミ様にご挨拶に行かなきゃならなくなっちゃったんだ、てへっ』罰悪そうに、左手で、軽くグーを握って、自分の頭をこつんとたたく、私。
『カスミ様?」
「このとちのおまもりさまで、しゆうどうたいなのですが、これ(私)さ、とついでこいって、いってきているのよ。」と、おかあちゃん、私のあたまを抱えて、指差す。
「りょうえんですか、おめでとうございます。」と、むすめのおや
「で、なくて、私は、とつぎたくないの」頭をかあちゃんの腕から外して、むすめのおやにむきあう
「そうなんですか、ほかによいえんでもあるのですか?」と、むすめのおや
「りょうえんて、いうか、あんたをみつけたとき、ホッて、むねのおくが、あたたかくなったの、だから、あんたが、いいの」もじもじしながら、上目づかいで、むすめのおやを見つめる。
「わたしは、まだ、妻の事が、忘れられません、それでも良いのですか。」体全体に色が着き始める、何か心に思いを出して、吐き出すと、色が着くようだ。
「それでも、いいの、あたしもあんたの事を忘れらんねぐなったから。」髪の毛が、黒くなってきた。
「まぁまぁ、それぐらいにして、カスミ様さ、とりあえずほうこくにいってきな。」
「んだなぁ、はやぐいがねど、こっちゃくっかもしんねぞ。」と、おとうちゃん。
「わがった、いまいってくる、あんたもいっしょにきてけろ。」おとこの手を取り、走り出す。
「もうすこし、ゆっくりはしって、くださいませんか。」息が切れ切れしている。
「もう一寸だから、辛抱して。」手を掴んだまま、走り続ける。
「とりあえず、此処まで来た、この階段登った処に、御社があるのよ。」大きな鳥居の下まで来て、小休止。
「此の階段、駆け上がるから、用意して」え”って、顔をしている、おとこのひと、「この急な登り梯子の様な石畳をかけあがるぅ~」上を見て、色が点いたり消えたり、ふらふらしている。
「なんでもなかったべ」ケロッとして、御社の前に居る。
「でしたね、なんだったのでしょう。」一段目を上がったら、ふわっとしたあの感覚、気づいたら、登り切っていた。
「ここが、カスミ様のお社」「へぇーっ、時代を感じさせる、立派なものですね。」
『人から、褒められるのも、悪くはないな』
「カスミ様、おひさしぶりです。」
『色まで、付いて、おとこづれ、今までの返事の事ではないね。』
「はい、申し訳ありません」平伏する。
「私が、来てしまった事による、罰則は、私が受けますので、どうか、むすめと精霊様には手を上げないで下さいませんか。」
『別に、責めたりは、しないよ、娘さんもいるのか、此処には居ない様だが、どうした。』
「はい、娘は、まだ一人では、立つ事も出来ない状態ですので、精霊様のご寝所に寝かして来ました。」
『それは、真か』じろっと、見る「あたしは、べつに何もしていませんよ。」オドオドし始める。
『人に、精霊の寝所は毒』「えっ、如何言う事です。」「あたいたちは、別に悪い事はしていないよ、少し、生気を分けて貰うだけだから、大丈夫未だ、生気は取れないから、消耗が激しすぎて、取ってしまったら、本当に死んでしまうから、今は、未だ、介抱中のはずよ。」『よほど、可愛い子だったのかな。』「それは、もう、一度会ったら、忘れられない、珍しく精霊にすごく近い子だよ。」『はて、精霊に近い?』
『ふむ、ふむ、もしかして、母親は、既に死去しているとか、申すのではないか。』「「はい」」
「娘が、10に成った時いきなり、体から力や気力が抜けて、死に至る難病になりました。」
「それって、もしかして、こちら側の女」「えっ、妻が、精霊様だったと言いたいのですか。」
『で、在れば、娘ごをあづかっても、何も問題はない、養生して、回復ののち、顔を見せるがよい。』
「カスミ様、それで、あたいとこっちの男の人は、くっついても、問題はないですか。」「私の話聞いていましたかぁ~。」『くっつきたいの、こども作って、こっちで育てて、ふむ・・・、まあ、ゆるそう』
「ゆるされたぁ」「わたしのはなしぃ」『子供は、あっちで無いと作れないからね、このものの奥方と同じ事に成る様な気は、するが、大丈夫か?』「えっ、こっちじゃ産めないの」『当たり前だ、実体がないと作れないぞ、あっちで、作って、連れてくるのだな。』「むりじゃん、こっちへの帰り方わからない、おとこの人と娘さんが、通った方法は、一回こっきりしか使えないって、おかあちゃん、言ってたもの」
『そうそう、奥方の話だったな、あれは、精霊ではなく、ワシ等神側じゃ』「・・・・・・えっ」まっしろになった。『こっち側に戻ってきておるぞ、転生したから幼女じゃが、会っていくか?』「ええええええええっ、幼女、妻が、幼女、幼じぅ、よ・う・じょ」、ニマッて、笑った、「チョット気色悪い。」と、あたし。ときめきが無くなると、色が無くなる、精霊は、精霊ね。
恋しい心も、一瞬で覚める、人の変容。
見方が、違うだけで、ほとんど変わらない、事実に気づく人は、少ない。
気づく事が出来れば、その先に進むことが、出来ます。
ちょっと、難しいですが、切り替えの時期である事には、気づくはず。
【あとは、あなたがた、ひとのこころづもりで、かんがえ、こうどうしてください。】