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第五話:揺らぎ

魔術師による迫害から女性を助けた虚也。

それはなんでもないことのはずだった。

しかしその後見せられた女性の笑みは、虚也の空虚な心にさざ波を立てるのだった。

虚也に向かって笑った彼女は、舞園千尋(まいそのちひろ)と名乗った。


先程逮捕した魔術師は、虚也達のターゲットである上層部と懇意にしているそうで、役所で働いている千尋がそれらの伝書鳩として使われているようだ。


「なるほど。

で、お前が使いに出された理由ってのが、今夜の会合の件か。」


「はい、よくご存じで。

流石世界裏事会ですね。」


「こちらも討伐に向けて事前調査はしていますから。」


「その会合ってので何するかは…知らないか。」


「いえ、役所の一般職員が毎回2人程警護に回されるので、その方達から多少は聞いていますよ。」


「ほう、ならさっさと説明してく

「あの!

それって教えていただくことってできます?」


虚也の言葉を遮り美華が千尋に問う。


(んだよ。何か文句あんのか?)


(うっちゃんは毎回言葉がキツいのよ!

あたしが質問するから黙ってて!)


(へいへい。面倒臭ぇなぁ…。)


「あの…よろしいですか?」


2人が目線で会話していると、少し不安そうな笑みで千尋が話しかけてくる。


「え?あ、ああ、すみません、お願いします。」


「はい。では…。」



千尋の説明によると、会合は魔術師が役所に集まり、今後の支配方針を決めるものらしい。


魔術師と一般人では当然利潤や行動概念は違う。だから魔術師の政策に反対する一般人も相応に多く、その処理方針は魔術師毎に意見が別れることがあるようだ。


「で、その方針を決定するのがその会合、と。」


「ええ。…そうなります。」


彼女は俯き、悲し気に微笑む。


意味が分からなかった。


「酷いですね…。

自分達で勝手に支配しておいて、反対勢力を自分達の勝手で抑えつけようとするなんて…」


「そらぁそうだ、力があるんだからな。


俺達だってより強い力を以て奴らを抑えつけようってんだ、何ら違いはないさ。」


美華の発言に対し虚也はそう言う。


それは虚也にとっては当然のことだった。


町からの依頼とはいえ、自分達が行う所行は虐殺以外の何物でもないし、自分達の都合で抑えつける面は魔術師達と何ら変わるようなことではないと思っている。


だがその発言を聞いた瞬間、


「そんなことはありません!

皆さんのお仕事は私達弱い人達にとって救いの手です!

ただ支配して満足しているだけのあいつらとは絶対、絶対に違いますから!!」


弾かれたように顔を上げ、千尋は必死の形相で虚也の意見を否定した。


いきなりのそんな主張に2人は一瞬ほけっとする。


その様子に我に返ったのか、


「で、ですからその…

み、皆さんのお仕事は、そんなに卑下することではなくて…む、寧ろ尊敬されるべき、誇れることであって、ですね…。

…と、とにかく凄いと思います!私は皆さんのこと、尊敬します!凄いです!!」


段々と語彙力が下がっている気がしないでもないが、自らの仕事をそこまで誉められたことなどない虚也はついたじろいでしまう。


一方の美華はその言葉によって自信を持ったのだろう、


「ふふ。…そう言っていただけると嬉しいです!!

精一杯頑張りますね!」


などと張り切っている。


「…おい美華、俺達の仕事がそんな奇麗事じゃないことくらい、解ってるだろ。」


「…うん、解ってる。

けどこうやって誉めてもらえるのって、やっぱり嬉しいじゃない…!」


「……ったく。

つくづくこの世界が似合わねえな、お前は。」

虚也の呆れに、美華はにひっと笑う。


それにつられたのか、千尋もふふっと笑った。


「…それでは私はもうお役所に戻らなければいけないので。


…またいつか、お会いできると良いですね。」


「そうですね。

それでは道中、気をつけてくださいね!」


美華と千尋が手を振り合う。



――その光景に、虚也は酷く疎外感を覚えていた。



自分が大層場違いなように見えていた。



自分と全く別の世界に生きる千尋。



本来なら、自分達と彼女達は交わることはあり得ない。



―それなのに、千尋と親しげに話している美華。




…虚也には少しだけ、その姿が羨ましかった。


「…虚也さん。」


意識が戻る。


見ると、千尋が彼に向かって手を振っていた。


「………。」


何もしてはいけないような気がした。


交わっては、いけないような気がしていた。


―それをすれば、何かが、決定的に、変わってしまうような気がしていた。


「……うっちゃん。」



美華の声。


大丈夫。変わってもいい。


そんな声だった。


そんな目をしていた。


「………。」


だから虚也は、


「……一つだけ、聞かせろ。舞園千尋。」


「はい。何でしょう。」


一つだけ、質問をした。


「…お前は、何故今、



笑っているんだ。」


それだけ訊いた。


一気に変わるのは不安だったから、それだけ訊いた。


すると千尋は、だって…と呟き、笑った。


「笑っていれば、いつか幸せが訪れるって、信じてますから!」


今回は虚也の心境の変化を重点的に表現してみました。上手く出来ているかな?よくわかんない(´・ω・`)

一応向上心はある方なので、コメントでアドバイスお願いします~(露骨なコメ稼ぎ)

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