第三話:下準備
依頼を受諾した4人は、本格的な討伐の前に土台作りを始めていく。
-ここは神楽町の隣の市、M県新太一市、市役所。
「…はい。その案件、どうかご理解とご協力をくださりますよう。」
応接室にて話しているのは、市長とその客人、世界裏事会の「姫野在華」と名乗る麗しい女性だった。
「うむ。承知した。
あそこの元町長とは旧来の仲だからな。
こちらとしても是非、協力させてもらおう。」
「よろしくお願いします。
では、私はこれで。」
「ああ。神楽町を宜しく頼む。」
在華と名乗る女性は礼儀正しく会釈をし、美しい所作で退室する。
市長は神楽町元町長の為、また在華氏に気に入られるため、すぐさま受け入れ態勢を整えるのだった。
……それから数秒後、誰もいなくなった所で彼女の周囲の空気が微妙に歪む。
次の瞬間その場所に立っていたのは、気怠そうに世界を睨む虚ろな男だった。
「はあ、面倒臭ぇ…
礼儀正しくしろとか、女装しろとか、あーだこーだ注文つけやがって全く…。」
虚也はがりがりと頭を掻く。
「姫野在華」という偽名は美華がはしゃぎながら付けたもので、
その容姿は虚也が自分の身体を能力で「麗しい女性で在る」ようにしたものだった。
虚也はスマートフォンを点ける。
すると、美華の方からグループLINEが入っていた。
「!(b^ー°)」
いらっとする。
どうやら向こうはうまく調査を終えたようだ。
現在虚也がいるのは新太一市。
天仙は神楽町のもう一つの隣町、暁町にて虚也と同じく町長と話している。
内容は、神楽町からの避難所確保の交渉だ。
向こうも異能者ということもあり規模の大きい戦闘が予想されるため、住人には秘密裏に避難していただくのだ。
龍我と美華は隠密性のある能力を持つため、神楽町にて現地調査を行っている。
「こっちもOKだ。天仙さんはどうですか?」と虚也はLINEを送る。
「可」。
シンプル・イズ・ベストだった。
οοοοοοοοοοοο
ところ変わって神楽町。
昼過ぎのビジネスホテルにて、4人は結果の報告と会議を行っていた。
「…成る程。報告書の通りにいくなら、動くのは11時頃からか。」
現地調査の報告書を読み、先に口を開いたのは虚也だった。
「そうだな。
町内の魔術師を集めた集会なんてものをわざわざ開いてくれるんだ、これほど好都合なことはない。」
「役所が戦場になれば、住民を避難させるにしても周辺の建造物に多大な被害が予想されるが…」
「裏事会の方から結界師や建物を修繕出来る魔術師が来るそうよ。
それもあって、ちゃんと住民には了解を得られたわ。」
「だが親族はどうする?
親や夫が殺されるのを看過するとは思えんが。」
「奴ら、全員子供は居ません。
政界入る際、味方増やす為に適当に見繕われたようなので、ヤッてもまだ産めていないんでしょう。
妻達も金目当てにくっついてるだけ。ちょろっと支援金ちらつかせたら直ぐに旦那棄てましたよ。」
「あーやだやだ。これだから金汚いじじばばは嫌いよ。
あたしは天仙さんみたいな素敵なおじさまがいいわ~。」
「それはよしとして、23時に行動を開始するならば、我々はそれまで何をするのだ。」
美華の言葉を華麗にスルーして天仙は問う。
「……気になります…?」
それに対し、美華はニヤリと笑みを浮かべる。
何か重要なことなどあったかと少し身を固めると、
「遊ぶーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
依頼が始まって以来のはしゃぎようだった。
今回は比較的ネタ要素強めでしたねf^_^;