表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙戦艦白雪   作者: 烏葉星乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/28

第28話 白雪姫

 来月から高校生になる二人。

 夕日乃はスレンダーではあるが、ささやかではあるが、随分女性的な体形になってきた。アステロイドアタックで時の人となるも、地方住まいで、服装も地味で、早々身バレする事はない。

 白雪は言わずもがな。あまりにも美女過ぎて、出かける時は、さも芸能人のように変装する事も多くなった。


 とりあえず春だし、心機一転何かしようか~と、可愛らしい淡桃と白の壁紙に張り替えた、宇宙戦艦白雪の八畳程の小さな乗員室。

 実際には壁モジュールのグラフィック設定変更のみ。

 色を選んでポチッとな。はい完了。

 本物の壁紙を使ってるわけではないけど、質感も紙っぽく、ついでに熊や猫のカラフルなぬいぐるみも窓際に並べられ、とても宇宙戦艦の内部とは思えない、まるで自分の部屋の様に落ち着く空間だ。まぁそう感じるのは、主に夕日乃だけであるが。


 だが、窓の向こうの風景が非現実感を否応無しに醸し出していた。

 そこは衛星軌道上2500km。

 すぐそばに浮く、ほわんっと青く輝く地球にはオーストラリア大陸が見える。そして更に奥、地球の輪郭の向こうに宇宙へ向かってどこまでも伸びる軌道エレベーターシャフトが銀の糸の様に見える。そして宇宙に浮かぶ箱。

 そう、これが彼女達、白雪と夕日乃。二人の日常的な光景だ。


「雪ちゃん、床のこれ……扉、だよね?」


 二人いつものようにベッドの上で寝転がり、ぼ~っとしたり、イチャついたり、ラノベを読んだりしていたのだが、ふと夕日乃が床を指差し、何気なく白雪に質問してみた。


「夕日乃……それ、気付かなかった事にしませんか?」


 素っ気なく、流行りの異世界転生ラノベに視線を向けたまま答える白雪。


「そういう言い方だと、気になっちゃうでしょ。普通見たくなるよね?」

「そこは私のとても恥ずかしい部分なのです。夕日乃の要求は、私に股を開いて子宮口見せろって言ってるのと同義なんですよ?」

「なっ……何その露骨な例え……」


 流石の夕日乃もちょっぴり頬を赤らめる単語のようだ。

 そして、白雪には恥じらう欠片もない。


 宇宙戦艦白雪の艦内には扉が五つある。

 一つ目は、ほとんど使わない艦外に通じるエレベーターの扉。

 二つ目は、艦橋へ繋がっていおり、その通路に向かい合ってキッチンとバスとトイレ、三つの扉がある。今回、夕日乃が気付いたのは、六つ目となる訳だ。

 だがこれは他の扉と違い、直径1m程の六角形のスジが床に薄っすら刻まれているのみなので、じっくり見ないとまず気付かない扉であった。


「見たい、な~?」


 いつものジト目、ちょっぴりおねだりモード。


「そんなに見たいのですか?」

「うん!」


 頬を赤らめる白雪と、まるで踊り子さんにかぶりつく観客の如くベッド際から、じ~っと見つめる夕日乃。


「仕方がありませんねぇ……」


 そう言うと諦め顔で、おもむろにスカートをまくり上げ、女子力を全く感じさせない、全く恥じらいのないポーズで下着を脱ぎ始めた。

 そんな白雪にびっくりして、顔を赤らめながら止める夕日乃。


「何って、見たいのでしょう?」

「いや子宮口じゃなくて、こっちの扉の奥見たいの!」

「ですから、その扉の奥に入るには、まず全裸になるんですよ。はい、あなたも脱ぐ脱ぐ! 全裸プリーズ!」

「え――っ!?」


 何かと思えば、その扉の奥はクリーンルームなので、まずシャワーを浴び、殺菌するとの事だった。なんとも紛らわしいと思いつつ、白雪とバスルームに入る夕日乃。

 二人向かい合って、シャワーを浴び終わると乾燥開始。

 瞬時にボンと軽く爆発する感じで乾燥する。

 そして数種類の殺菌用の閃光をピカピカと浴び、準備完了。


「あ、だめですよ? 元の服を着たら殺菌した意味がありませんから」

「え? 全裸でそこ入るの?」


 白雪と違い夕日乃は、恋人の前でも全裸でずっといるのは抵抗があるようでモジモジしている。対する白雪は全裸でも仁王立ち……当然、恥じらい感はゼロだ。


「ではゆきますよ~」


 先程の夕日乃が指摘した、六角形の床に抱き合うように乗ると、ゆっくり下がってゆくと、奥へと進む通路が現れた。薄暗い中をペタペタと少しを進むと、薄っすらと青い明かりが見え、足元のパネルがエスカレーターの様に、二人を音もなく下へ下へと運んでゆく。思わず夕日乃が白雪の腕にしがみ付いた。

 なんだか吸い込まれそうな感じがして少し怖い。

 やがて青白く照らされた空間へ到着する。


「うわぁっ、何この部屋……」


 そこは球状の空間だった。上半分はまるでプラネタリウムのような星空が広がり、下半分は、水底まで澄み渡った液体で満たされていた。液体は、美しくゆらゆらと碧く幻想的な光を湛えている。

 現在二人が立つのは、水面に十字に掛かるクリスタル製の通路。

 部屋の中心に位置する通路中央に直径2m程の白い球体が見える。


「はい、ここが宇宙戦艦白雪の制御中枢であり、私の本体がある場所ですよ」

「本体……」

「ええ、ここで私の頭とこの戦艦という体が繋げられているんです」


 碧くゆらゆらとした光の中、白雪はどことなく寂しげに見える。

 本当は気軽に入ってはいけない場所なのだと、夕日乃は自分の軽率さを恥じた。


「ごめん……雪ちゃん」

「はい? 余計な事は考えなくていいんですよ。いずれお見せするつもりでしたから、きちんと見学してくださいな。ここには……ほら、大人白雪の体を使ってない時に沈めておく場所なのですよ~」

 水中に棺のような物体が沈んでおり、他にもいくつか並んでいる。

 よく見ると、水中には小さな宝石のような魚が群れを成して泳いでいた。


 中央の球体を白雪がコンコンと軽く叩く。その球体は白磁のように艶やかで、丁度下半分が液体に浸かっている状態で浮かんでいる。


「この中に私の人間だった時の頭が入ってます。ほらこの窓から見れますよ」


 正直、かなり動揺したが、意を決し窓を覗く夕日乃。


「きれい……」


 それは本当に綺麗だった……

 薄藤色に淡く発光する液体に満たされ、ゆらゆらと舞う花びらの中、眠る少女。

 まるで白雪姫のようだ……

 そこには童話のワンシーンのように、夕日乃の一番大切な少女が眠っていた。

 今の白雪よりずっと幼い姿。


「夕日乃……何を泣いてるのです?」

「わかんないけど、なんか涙が出てくる」


 うしろからそっと抱きしめ、抱きしめられ、お互いの体温を感じ合う。


「大丈夫、私はとても幸せなんですよ」


 静寂の中。白い球体に二人寄り添いように座った。自然と指と指がからみあう。

 どのくらい時間が過ぎただろう。

 ふと夕日乃が気付く……水底にある大きな扉に。


「夕日乃……ほんと目敏いですねぇ」

「……その雪ちゃんの言い様だと、私、知らない方がいい気がする」

「はい……そうですね。知らない方がいいでしょうね」

「…………」

「………………」

「やっぱり聞く、教えて」

「あとで後悔……しちゃダメですよ?」


 横から夕日乃の顔を覗き込むように、嫌な笑顔で念を押す白雪。


「うんっ大丈夫!」


 いつもの白雪っぽさを感じ、安堵する夕日乃。

 水底にある丸いそれは、蓋のようにも見える。


「あれはこの艦の自沈弁ですよ」

「じちん……なに?」

「それは、博士の親心なのだと思います」

「親心? どういう事?」

「もしも私が、宇宙戦艦である事をやめたいって思った時に開く弁なのですよ」

「宇宙戦艦をやめる時に開く……開くとどうなるの?」

「はい、この部屋の底に穴が空いて」

「うん、空いて?」

「この部屋の中身が全部宇宙にばら撒かれるのですよ」

「え……外に雪ちゃんが出て……人間に戻るって事かな……」


 ぷるぷる震えだす夕日乃。


「いいえ、言ったままですよ。そして四基のハイペリオンドライブが臨界点を突破し、この艦もこの宇宙から綺麗に消滅しま――んんん~っ!?」


 怖い事を話す白雪の唇を塞ぎ、そのまま押し倒し、舌をねじ込み、白雪の舌を吸い上げ、思いっきりディープなキスをする夕日乃。


「ぷはぁっ! ハァハァ……ちょっ、ゆうひ――んんっ!」


 それは、夕日乃にしては珍しい、とても荒々しく、いつもよりずっと長いキスだった。


続きは未定ですが、何か書きたいですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ