藁人形
「…っ!」
一目入った光景に思わず息を呑む。
教会の周りを囲む村には人の気配など無い。
その代わりなのか、藁で出来た人間の形をした人形が木の棒一本を支えに立っている。
(なんだ…これ。)
「お、お〜い!美夜子〜!大地〜、宗介〜!!!」
(何で誰もいないんだ…。)
孤独感と不気味感に苛まれ、時期に吐き気が零二を襲う。
「誰、か…誰かいないのか〜!」
「ピーーーーーーーーーッ…」
山奥から聞こえる指笛に一瞬身じろぐ。
「ピーーーーーーーーーッ…」
(誰かが呼んでるのか…?確か指笛が得意なのは宗介だったハズ…。)
足を踏み出すと、右後方からカサカサ、と音がした。
「…?」
振り返ると一体の藁人形が右手を上げていた。
(…最初からあんなだったか?)
首を傾げて前を向くと
「うわぁっ!」
無かったはずの藁人形が両腕を上げて零二の前に立っていた。
カサカサ…。
今度は左後方を見るとさっきより藁人形が近づいたように見える。
「き、気味悪ぃ…!」
そう言って両手で藁人形を押し倒すと山奥に向かって走り出した。
そうして一体の藁人形がユラユラと左右に揺れる。
そして伝染したかのように左右の2体が…その周りの4体が…。
振り返らずに走っていた零二にはわからなかっただろうが…。