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七人寄れば姦しい  作者: 二番
8/15

開催

 青い空、白い雲、太陽光を吸収する広大な大地、大会の開催に対する鬨の声、意気消沈の面持ちの僕………。


 時が経つのは早いもので既に僕は高校生活最終日を迎えていた。


 球技大会の幕開けである。



 開会式も終わり、その際に学園長から来賓紹介を受けていた大量の礼服を着た年齢層高めの行列がC棟へ消えていく。一般公開もされているらしく辺りには人がごちゃごちゃと蠢いていた。



「………人が多い」

「マスター、しっかりしてください」


 僕の嘆声じみた台詞が口を突いて出ると奈瑞菜がそれに反応する。現在、僕らが立っているのはAグラウンド、対するのは風間颯太率いるCクラス一同だ。ちなみに出場しない生徒は備え付けられた観客席で一般の人や来賓と混じっての応援らしい。


「おーい、守備位置と打順を発表するから集まってくれ」


 少し離れたところに点在する体操服に着替えた14名もの生徒+赤鬼に呼び掛ける。すると彼等はすぐに僕の周りに集まり、此方を向いて話を聞く姿勢に移った。そしてその内容だが――――



 1番 ファースト  畦倉雅明

 2番 ショート   影丸茂樹

 3番 ピッチャー  珠洲

 4番 セカンド   芹

 5番 ライト    平子

 6番 レフト    田吾作

 7番 センター   信蔵

 8番 サード    吾平 

 9番 キャッチャー 岡武司

    ベンチ    奈瑞菜

           撫子

           菘

           御形

           杉田蜜柑(委員長)





「―――となる、試合は5イニング、延長有りだ。みんな心して臨んでくれ」



 僕の発破の声に彼等は静かに頷くとグラウンドにそびえ立つ時計の分針が試合開始時間を指していた。




***





「………さて、じゃあ行ってくるか」


 Cクラスは影丸の情報によると野球部レギュラーメンバーはキャプテン以外、翠感を使用することはない………というか他は皆『低木層』で野球に活かせるものではないらしい。


「畦倉くんトップバッター頼むよ」 「マスター、頑張ってください」 「応援してるよマスター」 「出塁しなかったら女装ね」


 等々、激励の言葉を背に浴びながらバッターボックスに向かっていく。主審の前に座る重装備のキャッチャーとバッテリーを組んでいるのは件のキャプテン、Cクラス男子代表の風間颯太だ。同じく代表の東雲真弓はセカンドを守備位置としている。彼女については情報が少ないため特にこの二人には注意が必要。


『プレイボール』

 


 主審の声がグラウンド内に響き渡りゲームが始まる。するとほぼ満員の観客席から歓声が轟いた。一回表は攻撃、僕はボックスに立ち、真っ直ぐピッチャーを見定める。それを確認した風間は僕に聞こえる程度の声量で『行くぞ…』と呟いた。

 そして彼の綺麗な投球フォームからボールが放たれる。



『ストライク!』


 風間の投げた豪速球はストライクゾーンど真ん中を通過していた。バスンとキャッチャーミットに埋まったボールがピッチャーに送球される。……翠感を使用しているのかそれとも彼の肉体的なポテンシャルなのか分からないが急速は140Km/hは軽く越えていると思われた。

 そんなプロ級の急速を誇るボールが再びストライクゾーンを通った。


『ストライク、ツー!』


 正直こんなボール、打てる気などしないのだがこの大会では翠感の使用が許されている。それゆえ上位打線で出塁が強く求められる1番バッターとして僕がここに立っているのだ。……知っているか? 公認球にはコルクの芯が使われていて、そのコルクを包むゴムなどの材質を変えることによって反発力を調整するらしい。


「ど真ん中だぞ、畦倉。速すぎて打てないか?」

「かもな。でも当てることくらいなら出来るぞ」


 風間の煽りに僕はバントの構えを取りながらそう答えると彼は腕をしならせ投球を行った。


 ―――ゴッ


 ボールの動きをなんとか目の端で捉えながらバットの先に当てる。ボールはホームベースとマウンドの間にごとりと落ちた。


「もらった!」


 それを見てピッチャーが直ぐ様ボールを拾おうと身を乗り出すが、僕はそれを歯牙にも掛けず一塁へと走る…………………アウトの宣告は聞こえない、グラウンド内は唖然としていた。どう考えても僕がアウトになる状況だったのにキャッチャーがファーストに送ったボールが届くことなく地に落ち、その間に僕が一塁を踏むことに成功したからだ。もちろん、エラーではない。

 ボールの材質を変えた――――翠感では硬葉樹林のポピュラーな特性のひとつにオリーブや月桂樹、そしてコルクガシを広い意味での加工が出来るというものがある。つまり僕はコルクを比重の重い金属……タングステンに変えたというわけだ。おそらく今、あのボールは4キログラムほどの重量を有している。普段通り投げていれば届かないのは当然だ。



『『おーっ!』』


 観客席に座るBクラス生徒の歓声が遅れて聞こえてくる。僕はベンチに視線を向けると次の打者である影丸がボックスに向かおうとしていた。

 ボックスに立った影丸を確認した風間はボールを投げる。影丸はその球筋をじっくりと見極めてそれを見逃した。


『ボール』



 ちなみに僕が加工したボールは審判が取り換えたため現在使っているのは普通の硬式球だ。それと気のせいか、そのボールが手元で速さを増したような………リードを取りながらその真偽を確かめる。牽制球を注意しながらピッチャーの動きに眼を凝らしていると手元から離れたボールはストライクゾーンを入る手前、やはり加速した。


『ストライク!』


 カゼクサ……『知風草』それが風間颯太の翠感だ。見る限りだとやはり風を操れるらしい。バッターの前でボールの回りだけ強風がボールを押したように見えたからだ。タイミングをずらされた影丸はボール一個分上部でバットを振っていた。三球目、キャッチャーからボールを受け取った風間は再びボールを放った。狙いはストライクゾーン上部ギリギリ、そしてまた加速する。眼ではとても追えない―――だからか、影丸は視線を下に向けてボールの影をじっと見てバットを振った。



 キンッ



 そのスイングはボールをしっかりと捉えていた。僕はそれと同時に二塁を目指して走り出す。甲高い音を立ててベクトルの向きを変えたボールは一度地に着いて三遊間を抜け―――――



『アウト!』



 球審の宣告が伝えられた。………風間はボールデッドを狙っていたらしい。三遊間に向かっていたはずのボールは小さく弧を描くように曲がり二塁へ向かう僕の足へと直撃したらしかった。“らしかった”と言うのは自分でもその事実に今の今まで気づかなかったためだ。そんな異常な光景に観客はどよめき騒ぎ立てる。僕は一塁に到達した風間と入れ換えという結果となった。



「マスターお疲れ様です」

「………惜しかった…」

「いや~いきなり曲がったね、あのボール」

「明らかに風使ってたよ、あれ。あ、マスターおつかれ」


 アウトになってしまった僕は小走りでベンチへ戻ると奈瑞菜達が迎えてくれた。それに適当に対応しながらネクストバッターサークルから珠洲が位置に着くのを横目にする。珠洲は数回バットを振ると深く握り構えをとった。


「厄介だね」


 隣で岡がそう呟く。確かにあのピッチャーは厄介だ、タイミングのずらされる魔球を打ったとしてゴロであれば風で操って走者を狙い撃ちにする。僕の際もボールは死角からやって来た、それゆえ走ることだけに集中しているとボールデッドとなってしまい、進塁は遅くなる。


「ああ……でも珠洲なら大丈夫だろ」


 別にそれは根拠のない希想的観測ではない、珠洲はそれを軽々とやっしまうだけの能力が有るからだ。


『ストライク!』


 一球目が投じられその宣告が言い渡される。


「やっぱり使ってますね、なまじストレートなだけに球威も衰えるどころか増してますし」


「どうしてもスピードの落ちる他の変化球とは違うね」


 奈瑞菜と撫子がピッチングを分析する。正面に回って初めて気付いたのだがボールが手を離れる瞬間、グローブが翡翠色に煌めいていた。調節が余程上手くなければできない芸当だ。


「………見切ってる…」



 ボソリと菘が呟いた。


 そして投じられる二球目、先程と同じく翡翠色に一瞬染まったボールは珠洲の手前でギアを上げ――――


「せいっ!」

 

 キンッ


 キャッチャーミットに埋まることはなく小気味いい金属音を響かせて眩しい空へとぐんぐん延びていった。先を見るまでもなくホームランだ。風で押し戻されるかと思ったがどうやら珠洲の力が勝ったらしい。



【Bクラス    VS    Cクラス】

  2              0



『『うおっしゃぁぁぁぁ!!』』


 Bクラス男子の雄叫びが響くグラウンドの中、影丸と珠洲がホームへと還ってきた。取り合えずこれで2得点。



「影丸に珠洲さん二人ともナイスバッティングだったよ」

「はい! 凄かったです!」


 岡と委員長がそんな賞賛の声を掛けていると珠洲がちらりと此方を一瞥したので手でグッドサインを作る。


「えへへ、楽勝だったよ」

「だろうな」


 それを確認した珠洲は嬉しそうに頭をポリポリと掻いた。可愛い猿みたい。


「次もホームランでお願いしますわ」


 三鬼に囲まれた平子が言う。ちなみに吾平、田吾作、信蔵のトリオはリクルートスーツではなく虎模様の鬼パンツに野球帽といったふざけた格好だが何故か威風堂々としていた。平子いわく相手へのプレッシャーのためらしい。



「いや、それは無理だね」

「そうだな」



 平子の言葉に反応した岡に僕が同調する。次からは珠洲に打順が回ってくる度、風間は敬遠球を投げるだろう。だからこの一回は手堅く点数を取って置きたかった。影丸が出塁してたおかげで点は増えたがあの場面でアウトになったのが痛い。


「次から珠洲は間違いなく敬遠されるからな」

「敬遠?」


 そう伝えると野球のルールに詳しくないと思われる平子が頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。説明については鬼がしてくれだろう。そう思った直後、大柄な信蔵が牙が剥き出しになっている大きな口を開いた。



『平子様、敬遠とは故意四球とも言って意図的に4回アウトコースにボールを投げることで攻撃を最小限に抑えることです。その場合フォアボールになり一塁に進むことができます』


 綺麗な標準語でペラペラと話す巌のような赤鬼に言い知れぬ違和感を感じながら次の打者である4番の芹がピッチャーと対面するのを見守る。歓声は黄色い声で埋め尽くされていて芹の人気がうかがえた。しかし、応援の甲斐なくそのバッティングは三度とも空を切る。その後三鬼を出場させるために仕方なく加えた平子も三振を取られ二点先取で一回表は終えた。


「攻守交代だ、そろそろ行くぞ」

 

 そう呼び掛け守備位置のファーストに僕、ピッチャーの珠洲やキャッチャーの岡、それぞれ布陣を置いたところで相手のバッターがボックスに立つ。

 マウンド上の珠洲の手からボールが離れた。今日一番の急速を叩き出したであろうそのボールは相手に捉えられる事なく深々とミットに突き刺さる。


『ストライク!』



 それから二球目、相手バッターが外角のボールに手を出して高く上がったフライを捕球しアウト。次に出てきたのは野球部キャプテン風間颯太だ。彼が打席に立つと同時に観客が沸き上がった。年期の入った中年男性中心で、


『打てよーっ! 風間ぁ!』

『そんな華奢な娘に負けんなぁ!』


 とガヤが此方にまで届いている。ちなみに野球部は期待の眼差しで風間を見つめているのみだ。『ピッチャーびびってるヘイヘイヘイ』とかってしないのな、少年野球でたまに見るけど………小学生に煽りかたを教える教育は本当に謎。ヘイヘイヘイってなんだよ。


 一球目、



『ボール』



 球はアウトコースから少し外れる、風間は振らない。しかし微かに手元が光った。バッティングでも風を使ってベストな位置に持ってくるのかと思ったがおそらく自分の触れた物の周りだけがその範囲なのだろう。

 つまり、もしバット越しにボールを触ったとしたら向き、速度等が調節可能なうえ際限なく飛んでいくわけで―――― 



 キィンッ


 快音を響かせて飛んでいくボールはすぐに目に見えなくなった。紛れもなくホームランだ、野球部キャプテンの意地といったところか。大歓声のグラウンドを足早に一周しホームへと還ってきた風間をCクラスのメンバーが温かく迎えていた。アイツが振ったバットに当たったら全部ホームランになりそうだな、次からは敬遠して欲しいのだが………珠洲の目は闘志に燃えているためそれは望めなさそうだ。

 続く相手の3番、4番打者も出塁したが、5番、6番打者から三振でアウトを奪って攻守交替。


『ストライク、バッターアウト! チェンジ!』


 上位打線の野球部員でも珠洲の豪速球には苦戦するらしくなんとかヒットといった様子だ。4番の女子代表、東雲はバットを振る度、豪っと雄々しい音を際出せていてかなりのパワーヒッターだと思われた。


 現在、一点返されてスコアは、


【Bクラス    VS    Cクラス】

  2             1


 となった。


 次打者は六番、田吾作だ。前時代どころか江戸時代の百姓のような名の鬼は背丈こそ平均ながらも筋骨隆々の豪腕をぐるぐると回す。当たればホームランは手堅い、ただし当てるのは至難の技だ。


「大旦那様」



 ボックスに向かう途中、田吾作が僕の方をじっと見る。それが僕を指す言葉でないことを祈りたい。


「呼ばれてますわよ、マスター」

「お前あいつらに何覚えさせてんだよ」

「敬称もきちんと使えないようでは紳士とは言えませんので」

「虎パンツに野球帽を被る紳士なんて居ないと思うけどな……」

「そんなことより何か言いたげですよ。聞いてあげてください、大壇那さま」



 アクセントに違和感の感じられるそれは漢字が一文字違ったためだ。僕はお布施なんて少ししか出さないぞ。大体あれ相場高過ぎるんだよ………それはさておき田吾作に向き直る。



「どうした、田吾作」


 そう話し掛けたところ、彼は甚く感激したらしかった。



「わたくしめの名前などをご記憶に留めて置いていただき真に恐縮でございます!」


 その怖いまでに畏まった感謝の台詞を受け取ると他のふたりが此方をちらちらと見ているのが分かる。


「覚えてるよ。お前が信蔵で、こっちが吾平だ」


「「恐縮です」」



 伝えると嬉々とした表情で上半身を45度前方に傾倒、最敬礼を行った。………ああ、ここまでされると何かこの虎パンツ姿のよく似合う三人(鬼)が可愛らしく思えてくる。


「ところで、さっきは何だったんだ? 田吾作」


 本題を思い出し田吾作に問う。


「自分、スポーツは初めてでして昨夜書物で三人、研究したのですが“盗塁”なるものがあまり理解できなくて……」


 さっき信蔵が平子に敬遠の説明を行っていたが、野球のルールについて大まかに理解しているのみで彼についても盗塁がよく分かっていないらしい。


「野球における攻撃側走者の進塁方法の一つで、凄く簡単に言うとピッチャーがボールを投げている間に進塁することだな」

「ボールを投げている間にですか、了承しました」


 その言葉を最後にして田吾作は足早にバッターボックスに向かっていった。打撃力については申し分無いが初心者ということで不安がのし掛かる。文字通り鬼気とした表情でボックスに立つとCクラスが気圧されているのが感じ取れた。


 しかし、それを意に介さないキャプテンは涼しい視線を田吾作にぶつけ――

 ズバンッとボールがマットに吸い込まれて、その後にバットが空を切る。ストライクの宣告がされて迎える二球目。再びストライク、しかし狙いはしだいにシャープになっているようで今度はボール一個分遅れていた。



 カキンッ


『ファール』


 打ったボールはすぐ後ろにそれて飛んでいく。ポテンシャルはかなりのものを持っているからな、バットの軸で捉えることは出来なかったものの確実に当てられるようになってきている。しかし心なしか気のないバッティングに感じられた。

 続く四球目、相変わらずの魔球っぷりを有するストレートはアウトコースに向かっていた。警戒からの判断だろう。


『ボール』


 田吾作はそれに手をつけずボールのカウントが取られた。



「マスター、これって……」

「ああ、フォアボール狙いだな」



『ボール』


 話してる間にまたカウントされ、2-2となる。


「フォアボールというのは、さっき話してた敬遠のことでしょうか?」


 それを聞いていた平子がその疑問を口にした。


「少し違うな、敬遠は意図的にフォアボールをすることだけど、この場合は田吾作が相手のミスを誘ってフォアボールに誘導してるんだ」


 そこで側にいた芹がハッとしたように僕と目を合わせる。


「あっ、なるほど。フォアボールで進塁すれば風は関係ないですしね」


「そういうことだ。ただ………」


 大きな問題が有る。ファールボールを操作して内野ゴロにもっていく等々。それに気付いていたのか岡がその続きを代わりに話してくれた。


「問題なのはフライとかゴロでアウトに出来そうなファールボールを一塁線や三塁線の内側に移動させることができること………でいいかな?」


 僕は黙って頷く。


『ボール。フォアボール!』



 それから幾度となくボールが投げられ、集中力が切れてきたのかコントロールが乱れて八球目でようやくフォアボールが宣告される。ファールを打つ度にヒヤヒヤしたが無事出塁した。


 次打者である下位打線最初のバッターは信蔵だ、それから吾平、岡の順となっている。


「それでは行って参ります」



 信蔵は僕に軽く頭を下げてバッターボックスまで足早に駆けていった。そしてボックスで構え、迎える初級。投げたボールは寸分狂わずキャッチャーミットが位置していた場所に叩き込まれストライクと主審が判断するがそんなピッチングよりもグラウンドの注目は田吾作に向けられていた。

 ―――盗塁だ。スタートは遅かったものの足の速さは陸上の強化選手並であるためキャッチャーから放たれたボールが二塁に届くまでに到達するのは簡単に見えた。


 ………………あ、思い出した。



「「「「え?」」」」


 思わず声に出してしまっていたらしく僕に注目が集まる。


「あのセカンドの守備についてる女生徒の翠感、ヒイラギなんだよ……」



 そう言って女生徒代表、東雲真弓に目を向けた。翠感測定の時の事が今になって思い出される。能力自体はたいしたものじゃない、確かからだの至るところから小さな棘を出すことが出来るとかだ。…………ヒイラギ(柊)とはモクセイ科モクセイ属の常緑小高木であり、葉は革質で形は楕円形から卵状長楕円形をしていて縁に有る鋭い刺が特徴だ。そんなヒイラギは古くから邪鬼の侵入を防ぐと信じられ、庭木に使われてきたり門守として柊鰯と呼ばれる焼いた鰯の頭を柊に刺して玄関に置いておくというおまじないが存在する……。


「……でしたらあの子達は二塁には到達できませんわ………」



 しっかりとあちらも対策を練ってきているらしい。


『アウト!』



 田吾作がタッチアウトとなり高らかに響く累審の声、右拳をあげてアウトのシグナルをとる姿を僕らはただ眺めていた。残った信蔵と吾平もセカンドに行くことが難しい事が分かりバッターボックスに立つ信蔵の顔が苦いものとなる。結局、その後点数を稼ぐことは無く信蔵に続き吾平の代打として出た撫子までも凡退、岡に出番が回る事なく二回裏が始まってしまった。


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