室見 豊代子(むろみ とよこ)
架空の人物を書いてみたくなったので
現代短歌の先駆け的存在の女流歌人。
1916年生まれ鹿児島県桜島出身。幼い頃から歌人の父室見 寿男の影響を受け、歌を詠み始める。
高校卒業後は事務員として勤めながら新聞の短歌欄に投稿を続ける。投稿欄に度々載る短歌が科文学社の目にとまり、1942年に処女作『金魚鉢』を出版。
出版当時「これは短歌ではない」等の批判が殺到したが、当時の編集長である科 達生は「代り映えしない日常を新たな視点で切り取り、そこに面白さを見出す彼女の歌は今後の歌壇に大きな影響を与える」とし、出版を続けた。
出版の継続に恩義を感じた彼女は科文学社と専属契約をする。
その後、時代の変化に寄り添うように詠む彼女の作風が次第に評価されると続編を期待する声が増え、1949年に続編となる『空っぽのゴミ箱』が出版される。
ベストセラーとなることはなかったもののロングセラーとなり昨年の10月に50万部を達成した。
彼女が生涯にかけて主題としたのは「何の変哲もない日常」であり、1994年の『季刊 近代短歌』春号でのインタビューでは「私達は何か特別なことに目が行きがちですが、注意深く日常を観察することにより、日常というものの重要性を再確認することを大切にして参りました」と語っている。
特に肺ガンを患った1967年からは『そこにあるありがたさ』が句に顕著に現れている。
昨年3月にこの世を去る。98歳の大往生であった。
歌人としては珍しく辞世の句は詠まなかった。
「歌人として生きたが、死ぬ時はただの室見豊代子として終わりを迎えたい」
彼女は最期に一人の女性に戻った。
需要はありそうにないのは知ってる