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 翌週の火曜日から部活に参加した。少ない新入部員はいつの間にか来なくなった。理由は聞かなかったので古泉にはわからない。瑳内いわく「毎年こんなもんだよ」ということらしい。

 部員が少ないのはかまわなかった。出かけるときなど、大人数だと動きづらくなるし、何より古泉は人が多いのは苦手だった。

 同学年の部員がいないので肩身が狭いと感じることがあるが、耐えられないほどのことではない。先輩達はそんな古泉を気遣ってか、気さくに話しかけてくれる。

 先輩達との部活は楽しい。でも、何回か参加するうちに、どこかものたりないと感じはじめた。

 五月の中旬、午前中に講義が終わり、古泉は天水を誘って自転車で東に向かった。古泉が行く場所を言うと、行ったことがあると言うので天水に先導してもらった。

 国道を横切った先の道は、古泉が初めて通る道だった。新鮮な気分で景色を眺めながら走ると、町の東側を流れる川が見えた。片側二車線の橋を渡り、川沿いの道を下流へと進んだ。

 左に川を見て細い道を自転車で走った。右方向への大きなカーブを過ぎると、河口が見えた。その先は海が広がっている。

 小さな防波堤の向こうは砂浜で、海にはなにかの養殖をしているらしき設備がいくつもあった。川の色と海の色は確かに違うが、境目はどこかよくわからなかった。

 二人は防波堤の近くで自転車を降りた。晴れていたが水平線の近く、空の低いところに雲が出ていて対岸は見えない。

「ときどき、富士山が見えることもあるよ」

 そう言われて古泉は富士山の位置を思い描いてみたが、どのくらい離れているかは見当がつかなかった。

 防波堤のすぐそばにまっすぐに伸びる小道があって、自転車を押してそこを歩いた。海岸は緩やかな曲線を描いて、その端には白い鳥居が見えた。あまり大きくはなさそうだ。

「写真、撮らないの?」

 と、天水が尋ねた。古泉は天水に対して遠慮するような気持ちがあった。

「天水は?」

 そう聞くと、天水は鞄を開けて、

「じゃーん」

 と言いながら、コンパクトデジタルカメラを出した。古泉がはじめて見るカメラだった。

 天水は自転車のスタンドをおろし、止めた。振り向くと歩き始めたところが小さく、遠くに見えた。

 風の音に混ざって、シャッター音が聞こえた。

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