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 約束をしたわけではないが、履修登録に行くと天水に会った。二人で相談しながら登録をした。後で修正できるので、必修と資格に必要な科目以外はあまり考えないで選んだ。天水は何度も確認して、やっと安心したようだった。

 正午前に終わって、自転車置き場に向かう途中で天水は昨日と同じことを聞いた。

「うん。予定なし」

 と古泉は答えた。

「よし、じゃあ町を案内しよう」

「どこに行く?」

「とりあえずお昼にしようか。古泉は自転車?」

「うん」

「あっちの方って、行ったことある?」

 天水は古泉の家と逆方向を指さして言った。

「昔行ったけど、あまり覚えてない」

 学校の正門を出て左に進むとゆるい上り坂になる。すぐに信号があり、そこにも大学の入り口がある。日本家屋の門のようで、屋根には二つのしゃちほこが乗っている。とても学校の門には見えない。この先に寺があったほうがしっくりくるだろう。

「そういえば一人暮らしって言ってたよね。家はどこ? 下宿?」

 信号待ちの時に天水が尋ねた。

「いや、アパート」

 古泉は町名を言った。信号が変わり、自転車を縦に並べて走る。ここから下り坂だ。

「おお、(うち)の近くだ。番地は?」

 道路を跨ぐように設置された大きな鳥居の下を通って坂道を下る。風を切って走りながら話しているので声が大きくなった。古泉は番地を言った。

(うち)は県道の反対側。今度遊びにおいでよ。猫いるから」

「行く。絶対」

 今までより大きい声で即答した。

 この道は両側に石灯籠が並び、歩道が赤煉瓦でできている。それらは何キロも続いていて、有名な神社へと至る。二人は神社までは行かずに、小さな堀を渡って横道に入った。

 長屋のような建物の壁に沿って自転車が並べられていた。そこに自転車を停めて歩きはじめた。

「神社でも門前町って言うっけ?」

 と古泉が聞いた。

「確かそうだったと思うよ。門無いのにね」

「神仏分離以前はあるところもあったんじゃない?」

「なるほど」

 神社の近くには観光地にふさわしい、木造の建物が並ぶ通りがあった。多くは店になっていて、お土産や食事処や射的など種類は様々だった。平日なのに多くの人で賑わっていた。

「食べ歩くのとお店に入るの、どっちがいい?」

「一通り見よう」

「おっけー。じゃあ、境内の方に行こうか」

 古泉は頷いて、通りにカメラを向けた。天水の首からはカメラはさがっていなかった。

 石畳の道が終わるところに土産物屋が何軒かあった。牛串は高かったので、隣で売っていた冷やしキュウリというものを買った。

 来た道を戻りながら、古泉は町並みや葉桜を撮った。天水はそれを見ていただけだった。二人は川の見える喫茶店に入った。この神社には手水舎はなく、代わりにこの川の水で洗う。そのため、川の水は澄んでいて美しい。

 天水は紅茶を、古泉はコーヒーを注文した。

「古泉は、いつもカメラを持ち歩いているの?」

「雨じゃなければ」

 飲み物が運ばれてきた。古泉はそのままコーヒーを飲んだ。

「何も入れないの?」

「いや、一口飲んでから決める」

 砂糖を少量入れて、もう一口飲んだ。入れすぎたかな、と古泉は思った。

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