5・どうやらチート?
荷物は一回で全て城塞の中に運搬完了。
すごいよ4匹とも、あなたたちマジすごい。
幸い、ボロいけど渇いている木の棚があったので、そこに本を優先に荷物を収納する。
再びちまっこくなった4匹が手伝ってくれて瞬く間に終わった。
便利だよあなたたち、マジ便利。
そして暗くなる前に扉前の部屋の中にテントを設営。
普段はヘッドランプにカバーをつけてランタンにして使うのだが、やめた。
「電池、節約しなくちゃだしね」
『電池とはなんですの、お母さま』
「道具を使うための源力、なんだけど。
このヘッドランプは灯りを取るための道具で。
しくみは……って、あれ?」
なんということでしょう。
事ここに至ってようやく気が付いた。
「わたしたち、どうやって会話してんの?」
『会話はしてないのー』
「いやわけわからんぞ、ホクちゃん」
『音を発生しているわけではないんですわ。
ナンたちは思念を向けていて、それをお母さまが理解してくださっているのです。
念話というものですわ』
「いや、うん。
分かったけどますます分からなくなった」
『お母さまったら面白いですわねえ』
「あははは」
『おほほほほ。
それはそうと、お母さまは灯りが欲しいのですか?
その道具を使わずにいたいのでしたら、火を使うのはどうですか?』
「マッチとライターも念のために装備に入ってるんだけど…こっちも節約したいんだよ」
『薪を用意して頂ければ、火はナンがつけてさしあげられますわ』
「!!?」
ナンさんが小さな口をぱくっと開いたと思ったら、ぽっとその前の空間に火が飛び出した。
「ふおおおおおお!?
魔法ですかついにきたもうなんでもありかああああああ!」
『魔法ではありませんわ』
「え?………………ちがうの?」
『違いますわ。
これはナンにとって、人が出す声、つば、汗のようなものですわ』
「え?はい?」
『世界を形作る4大元素のひとつひとつが顕現したのがナンたちですわ。
ナンたちは四大精霊ですから、4大元素そのものなのです。
4大元素は魔法ではありませんわ』
「…………」
「…………」
「…………」
「4・大・精・霊」
『トウは水、ナンは火、サイは風、ホクは地ですわ。
お母さまが言ってくだされば、ナンたちの力をお貸ししますわ』
「チートきたあああああああああ!!」
『ちーと?』
「いやこれチートだよ、山の中に妙に生々しいサバイバル状態でほっぽり出されたから、どうしても実感できなかったけど…
これってド定番すぎる!ザ・ファンタジーだよ!
ここは異世界なんだっそうでしょ、ナンさん!」
『異世界????』
「…………」
「え?ちがうの???」
『すみません……異世界???と言うのがよく…分かりませんわ』
あれ???異世界じゃないの????