3・動物万歳
「現実ですらねえええええ!!
どこのファンタジー世界だよこれえええええ!!?」
『現実ですわ、お母さま。
ふぁんたじいというのがどういう意味かは分かりませんけれど』
4つの光の玉のうち、赤みを帯びた光が言った。
いやうん、光が『言った』っておかしいでしょとかいう突っ込みはこの際なしね、うん。
「いやそこじゃない、そこじゃないよ。
わたし24才だし、まだ独身だから。
子供とか生んだ覚えないし、むしろ彼氏とかここ数年いないから。
言ってて虚しいけど」
『母上は素晴らしい女性です。
すぐに数多の男どもが母上の魅力に惹かれて愛を乞うようになるでしょう』
「かゆっ。かゆいよ、青君っ」
青みを帯びた光の玉の言い分にわたしは体中に痒みを覚えた。
悪いけどイケメンと歯の浮く台詞には痒みを覚えるタイプなのだ、私は。
『青君…とは、私のことでしょうか。
私をお呼びくださったのでしょうか』
青君(仮)がぷるぷると震えながらわたしにたずねてきた。
なんかご主人に向かって訴えかけているチワワっぽくないですか、あなた。
犬好きのわたしに対するなにかの挑戦ですか、これは。
『母ちゃん、おいらだって名前がほしいよ!』
真っしろな光の玉が言えば(?)
『わたしもほしいの!母様に名前をつけて呼んでほしいの!』
真っくろな光の玉も後に続く。
あなたたち、お姉ちゃんと呼んでというわたしの叫びは無視ですかい。
「……あなたたち、名前ないの?」
『お母さまが起こしてくださった今、わたしたちは生まれたようなものなのです…
だから名前はまだありませんわ』
赤味さん(仮)が寂しそうに言う。
あー、やばい。
本当にチワワに見えてきた。
この子達がチワワに見えてきたよ。
『わたしは青君という名前を頂いたぞ』
『ずるいぞ!』
『ずるいの!あなたばっかりずるいの!』
「いやいや青君って仮だからね。
色だから。名前じゃないから」
『えっ』
「えっ」
青君(仮)はびくっとわたしを振り向いたと思ったら(ように見えた。なぜ)しゅーんと小さくなってしまった。
本当に小さくなってしまった、一回りくらい。
ああっ、チワワがっチワワが豆しばの赤ちゃんになってしまった!?
「青なんてテキトーに見た目まんまの名前なんていやでしょ!?
名前はそう!ほら、もっとちゃんと付けなきゃ!」
『ではっでは母上が私にちゃんとした名前を付けてくださるのですか?』
ああっ!?
4色が期待に満ちたきらきらした目で(ないけど)こっちを見ている!!
きらきらしてるよおお~
「あーうー…
じゃあ…青、赤、白、黒っていったらなんかやっぱり…
青君が青竜だから東で『トウ』
赤味さんが朱雀で南だから『ナン』
白君が白虎で西だから『サイ』
黒ちゃんが玄武で北だから『ホク』
って感じ?
あー…なんかごめん、少しひねったつもりなんだけど…色とあまり変わらないね?
気に入らないなら辞退してくれていいから…」
ぺかぺかと点滅する4色の玉。
おおお?
と瞬きを繰り返すうちに、ぺかーっと一際強く点滅したかと思ったら。
「お……おおおお?」
青い竜と。
赤い鳥と。
白い虎と。
黒い蛇が。
目の前にならんでいた。
そしてみんな子犬位ちっちゃかった。
『母上、名前を頂いたおかげです』
『こうして姿も得ることができましたわ』
『たくさん助けられるぜ!』
『ずっといっしょなのー!』
「アニマルきたああああああ!!」
もふもふと爬虫類大好きですがなにかあああああ!!